第12話 探偵だけど質問ある?
「じゃあ桂木君の連絡先教えてよ」
「……教えたらそれはそれで面倒そう」
「絶対に繋がりバレないようにするし、教えないとまたこうして引きずりこんででも二人きりになろうとするかもねえ。そっちのがイヤじゃない?」
やんわりした花咲の脅迫に、桂木は深くため息をついてスマホを取り出した。こうして引きずりこまれるくらいなら連絡をとって、こちらから指示できるようにしたほうがいい。
「よし、連絡先交換完了。で、本題なんだけどね」
「本題があったのか」
「例の愚痴吐き場、探偵の偽物が現れたの。だからなんとかして」
花咲の本題とは、ざっくりした要望だった。それでは桂木も何をすればいいかわからない。そもそも彼はなりゆきで事件を解決したものの、探偵を名乗った覚えはないし、偽物が現れたってなんとも思わない。
「あの愚痴吐き場はあれきり見てないから知らないよ」
「ほらこれ。この書き込み!」
桂木の言いそうな事をあらかじめ予想していたのだろう。花咲がスクリーンショット画面を桂木の顔に押し付けるようにして見せる。
そこには一言、
『こないだの探偵だけど質問ある?』
という文章があった。
それから本来受験の愚痴吐き場であったルームの話題は探偵一色に染まる。疑うもの、事件について詳しく質問してみるもの、正体について尋ねるものがいた。
画面中の探偵はそれらの質問に答える。事件は詳細まで語るし、正体はもったいづけながらも答えはしない。
多分田中だ、と文面から桂木は察した。
「この探偵が本物かもしれないだろ」
「本物は桂木君じゃん。それで桂木君は目立ちたくないからこんな事するはずない」
「偽物が現れたって、僕からしてみれば何の問題もないけどね。このまま彼に探偵になってもらえばいいじゃないか。彼の方がサービス精神旺盛のようだし」
「……ちょっと待って。どうして桂木君は偽物が『彼』って、『男子』だって知ってるの? このスクショだけでどうして判断したの?」
失言だった。どうやら花咲を前にすると桂木は気を抜いてしまうし、花咲も意外にそれを見逃さない。観念して桂木は田中とのやり取りを語る。
「田中が言ってたんだよ。よりにもよって僕に、『実は探偵は俺なんだ』って」
「…………待って、田中ってどっち?」
「ああ、うちのクラスに田中は二人いたっけ。僕がよく話している方の田中だよ。目があっただろ」
「桂木君しか見てないからおぼろげだけど、あの田中君か。元藤島君」
「藤島?」
「二年までは藤島君だったけど、親の離婚で名字が変わったの。だから同じクラスに田中が二人になっちゃったのね。ちなみにもう一人の田中君はイケメンで……まぁ、『チビの方の田中』とか『イケメンじゃない方の田中』って呼ばれてる」
「……それはひどいな」
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