第108話 体育祭・昼休み編

 どうにかクラスメートとの昼食を断り、皆と合流しました。ミルフィとアルディン様も一緒です。




「何、この優雅な空間は…」




 校庭が、もはやサロンになっている。床に絨毯が敷かれ、テーブルにはテーブルクロス。席にはどこかで見たことがある大人達。




「お父様、お母様…」




 思い出した。ミルフィの両親、ローレル公爵夫妻だ。ミルフィのハニーブロンドはお母様譲りなんだね。お母様はふくよかだけど、部分的にミルフィに似てる。お父様は優しそうで柔らかな茶髪。




「ミルフィ、頑張っていたね」




「可愛いミルフィ、お話を聞かせてちょうだい」




 ご両親はニコニコとミルフィに話しかけたが、ミルフィは真っ赤になって落ち着かない様子。私をチラチラと見ているので、ディルクを目線で促し下ろしてもらった。するとミルフィは私の手をとり引っ張った。




「わ、わわわ私のとも、友達のロザリンド嬢でしゅわ」




 どもった。そして盛大に噛んだ。しかし、ミルフィはそれどころではない模様。




「お久しぶりです。ミルフィ…ミルフィリア様には大変よくしていただいております」




 礼をとろうとしたら、ローレル公爵夫人に両手をつかまれた。




「へ?」




「ミルフィのお友達なの?」




「はい。私は以前よりミルフィリア様と仲良くしたくてよく話しかけたりしておりましたが、最近はお友達と言ってくれるまでになりました」




「まああああ!よかったわね、ミルフィ!貴女、ロザリンド様と仲良くなりたいってよく言っていたものね!」




「お母様!?」




「この子ったら、悪気は無いけど言葉が強くてよく他の子を泣かせてしまいますの。ロザリンド様は嫌なことを言われてもニコニコなさって、仲良くなりたいのに上手くできないと家で泣いてましたのよ。最近とても楽しそうだと思ったら…よかったわね、よかったわね…ミルフィ…」




 ローレル公爵夫人はミルフィを抱きしめ泣き出した。




「お、お母様…」




 困惑するミルフィ。つまり、ミルフィはずっと前から私と仲良くしたかったのだろうか。おうふ、ツンデレ万歳。




「ローレル公爵夫人、私はミルフィが大好きですわ。優しくて、正義感の強い素敵なレディです。末永く仲良くさせていただきます。よろしくね、ミルフィ」




「あ、あう…わ、わた…私もロザリィが大好きでしてよ!わ、私もずっと貴女の友達ですわ!」




「えへへ、ぎゅー」




 ミルフィをぎゅーっとしました。最近はデレ期な彼女は嫌がりません。




「娘をよろしく頼む」




 ローレル公爵も涙目でした。ローレル公爵の後ろから父が来ました。




「…友達か?」




「はい!父様、私の大事なお友達のミルフィリア様です」




「そうか。ロザリンドはお転婆だが、よろしく頼む」




「は、はい!」




「あらあら、よかったわねぇ。ロザリンドちゃんもミルフィリア様と仲良くなるってよく話していたものね」




「はい!仲良くなれて嬉しいです」




 ところで母はいつから話を聞いていたのかな?ま、まぁいいか。




「ミルフィリア様、ロザリンドをよろしくお願いします」




「はい!」




 仲良く手を握る。結局王族、ローゼンベルク・ローレル公爵家、認めたくないが私の応援団は固まっており一緒に昼食となった。




 特に私の応援団はもはやカオスと化していた。




「誰ですか、お酒持ち込みしたの!」




 目を逸らしたエルフの長様。そして、エルフ達。




「すまない…止めたんだが…」




 うなだれるロスワイデ侯爵子息。




「いえ、ロスワイデ侯爵子息はとても頑張ってくださいました。ありがとうございます。ところで私の応援に来るなんて暇なんですか?」




「……」




「……」




「……君があのメンツでは確実に困るだろうと参加したが、不要だったようだな。帰る」




「すいません、すいません、冗談です!ジョークです!調子に乗りました!ありがとうございます!感謝してます!」




 帰ろうとするロスワイデ侯爵子息を必死に引き止める私。




「フィズとロザリンド、仲いいのにロザリンドはいつフィズって呼ぶんだ?長いし言いにくくね?」




 そして、唐突に現れるKYK(空気読めるけど気にしない)男、カーティス。




「んー、確かに呼びにくいけど…」




「好きに呼べ」




「ではフィズさんで」




「俺らは呼び捨てなのに?」




「カーティスはカーティスでカーティスだから仕方ない」




「なにそれー。じゃ、アデイルとヒューは?」




「…確かにアデイルやヒューもいつの間にか呼び捨てだな」




「色々ありましたから」




 本当に色々色々あったから、いまさら敬称つける気にならない。




「…つまり、私は呼びたくないと。確かに私は最低な行為を「フィズ!フィズって呼びます!私達は仲良しです!」




「…そうか」




 何やらホッとした様子のロス…じゃなかった、フィズ。実は気にしてたのかな。後でディルクが、実はロザリンドがずっと他人行儀だって気にしてたんだよ、と教えてくれました。きっかけが無いからじゃないのとは言ったんだけどね、と苦笑しながら。




 さて、楽しいランチタイムです。私はミルフィと兄の隣、ディルクの膝に居ます。




「ミルフィ、これ自信作だよ!」




 自家製つくねをミルフィに食べさせる。




「美味しい!ロザリィは本当に料理上手ですのね!」




「ロザリンド、俺も食いたい」




「私も」




 アルディン様と真っ黒様が来ました。




「王族なんだから我が家よりご飯、豪華でしょ?わざわざうちのを食べなくても…コックさんが泣きますよ?」




「…ロザリンドの弁当の方がいい。だめか?」




 私は友人に甘い。自覚があります。子犬のようなアルディン様に負けました。




「…どうぞ」




「私もいいかな?」




「好きにしてください」




 しばらく食べると、兄が話しかけました。




「しかし、ロザリンドは規格外だね。玉入れとか、普通あんな魔法使わないよ。あれは反則にならないわけ?」




「あれですか。植物で包んで固定しないと、風魔法だけだとバラけて大変なんですよ。魔法自体は低級ですが、コントロールが難しいんで、5回に4回は何個かこぼしてました。あんなに練習して反則とか言われたら腹立つんで、あらかじめ許可とルール確認はバッチリしましたよ」




「綱引きは強化魔法をロザリンドがクラスメートにかけたのかい?」




 真っ黒様が私に聞くが、アルディン様が答えた。




「いや、クラスメートの自己魔力強化と、練習による団結の結果だと思います。だよな?ロザリンド」




「はい。私は魔法を使ってませんね。魔力で自己強化は多少しましたけど。まさかの結果でしたね」




「まさか人が飛ぶとはな…」




「ねぇ…」




「あの…練習相手のハクさん、十数人の生徒より力持ちなんですよね?」




「すいません、そこは私が練習相手のチョイスを間違えました。ハクがあそこまで力持ちだと思ってなくて…」




 ミルフィに謝罪する私。だってまさか、ハクに勝てるレベル=対戦相手が飛ぶレベルとか思わない。




「「やっぱりロザリンドのせいか」」




「やっぱりって何ですか!?今回私は悪くないですよ、多分!!」




 真っ黒様がため息をつきつつ教えてくれた。




「ロザリンド嬢、普通魔力による強化は難しいんだよ。クラスメート全員に習得させて、なおかつ実用レベルまで引き上げたのは誰?」




「う」




「確かに練習の成果もある。しかし非常識な練習相手を連れてきたのは誰?」




「うう…」




「あまり私の友達を虐めないでくださいます?虐めるのでしたら、お弁当を没収いたしますわよ。ね、ロザリィ?」




「ミルフィ、ありがとう!そうですよ、おやつあげませんよ!」




「…悪かった」




 私はいつの間にか真っ黒様の胃袋を掴んでしまった模様。まさか謝るとは思わなかった。




「午後が楽しみだな!」




「騎馬戦とリレーが1番練習しましたからねぇ…」




「私は午後借り物競争だけですが、お2人を応援しますわ!」




「ありがとう、ミルフィ」




「俺も応援してるからね」




「頑張ります!ディルク、うまくできたらご褒美ください!」




「うん?何がいい?」




「ミス・バタフライのお店でデート」




「……女装以外なら…いいけど」




「やった!本気を出しますよ、アルディン様!」




「動機が不純だが、まあいい。勝つぞ!」




「「おー!」」 




 アルディン様の掛け声に、私達も応えた。




「騎馬戦は私達も出るからね。そう上手くいくかな?」




「う、が、頑張ります…」




「アルディン様、急に弱気にならない。私も兄様とは戦いたくないなぁ…」




「ロザリンド、むしろ手を抜いたらお説教だから」




「全力でお相手させていただきます!!」




「よし」




「よしなんだ」




 呆れたようなディルク。いや、うん。頑張りますよ。












 そろそろ集合しなきゃな、というところで闇様が来ました。仲間外れは拗ねるかなとあらかじめ教えたところ、大喜びで行く!と言ってました。




「ロザリンド、頑張っていたな。我も誇らしいぞ。さすがは我が主」




「まだ主ではないですけど。ちょうどよかった。はい」




 私は闇様にビーズ入りのミサンガを渡した。黒と紫の糸で編み、アクセントにパールビーズを編みこんだもの。闇様のイメージでつくったもの。




「これは?」




「ミサンガという、リンの世界のアクセサリーですかね。願いをして腕なんかにつけると、切れた時に願いが叶うという品です。闇様にはいつも助けてもらってますし、せめてものお礼にと作りました。拙いものだけ…闇様!?」




「あうううう…ひっく、えっく…」




 闇様が泣いている。え?気に入らない?




「気に入らないです?」




 闇様は首を左右に振った。なら何故泣く。闇様はミサンガを大切そうに抱えた。




「我はこんな、心のこもった贈り物は初めてだ。大事にする。宝物にする」




「よかった。これ、私の精霊さんと、聖獣様ともお揃いなんですよ。色は違うけど」




「…そうか。我も早く汝の精霊になりたいな」




「なかなか魔力安定しなくてすいません」




「いや…汝のおかげで我は毎日が楽しい。我は焦らぬ。安定するまで待とう」




 しかし、なんで安定しないんだろう。そんな事を考えていたら時間になったので、クラスに戻りました。さあ、後半戦のスタートです!

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