第106話 騎士とエルフと応援団

 授業の後、お昼はミルフィと食べようとしたらアルディン様が乱入しました。ミルフィは私のお弁当が気に入ったらしく、今度から彼女の分も作ることに。




「ロザリンド、体育祭の練習をしたいんだ。今日からなるべく参加してほしい」




 私に嫌がられても昼食に乱入したのはこれが理由でしたか。




「できるだけ参加します」




 私はアルディン様に約束してから騎士団に行った。




















「ドーベルさん、お疲れ様です」




 毛艶が良くなったドーベルさん。もふりたい…




「ああ、ロザリンドさん。今日もよろしくお願いします」




 私のよこしまな視線には気がつかず、にこやかに挨拶するドーベルさん。




「先日のご飯、すごく好評でしたよ」




「そうですか」




「まぁ、ロザリンドさんは貴重な戦力ですから、もう貸し出ししませんけどね」




「光栄です。ドーベルさん、私の学校で今度体育祭がありまして、参加する関係で練習があるんで早めに上がらせていただきたいのです。もちろん仕事は同じ量をこなします」




「わかりました。でも、無理はしないでくださいね。体育祭は応援に行きますよ」




「ありがとうございます」






 私はしばらく早めに上がり体育祭の練習をしました。皆やる気に満ちています。これなら1年であろうとも優勝できるかもしれません。












 それから数日。ルドルフさんが来ました。




「水臭いぜ、嬢ちゃん!」




「はい?」




「なんですか、薮から棒に。ロザリンドさんは貸しませんよ」




「違うって!嬢ちゃん、今度体育祭なんだろ?うちの嬢ちゃんが出るってんで応援団まで出来ちまってな!」




「………………は?」




 ドーベルさんを慌てて見る私。目を逸らすドーベルさん。




「すいません、口が滑りました…」




 おうふ、耳がぺしゃんこ…いや、怒ってはないですけどね。




「騎士で参加出来る奴は全員嬢ちゃんの応援に行くからな!もちろんディルクは休ませて連れていくぜ!いやぁ楽しみだ!」




「ちょっと!待って!」




 無情にも扉は閉められた。




「すいません、やめるよう何回も何回も言ったんですが…」




「…悪意が無いから…仕方ないのかなぁ…体育祭出たくない」




 しかし出ないわけにもいかず、しばらく微妙な気持ちで過ごすのでした。






















 帰宅したら、シュガーさんが土下座していました。え?




 扉を閉めて、開ける。残念な事に、私の見間違いではなくシュガーさんは土下座しています。何があった。




「すいません!口が滑りました!!」




「…………………は?」




 数日前に、私は似たやり取りをしました。あれか。デジャヴュって奴か。




「何を、ですか?」




 嫌な予感しかしないが、一応確認した。




「ロザリンドさんの体育祭があるので応援に行くとエルフの長様に話したら…村全員が応援に行くって張り切ってしまって…!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃ!」




 シュガーさんが泣きだした。私も泣きたい。




「お嬢様、私も応援しておりますわ!」




「…あー、まぁ、人生色々だよな」




 マーサとアークによくわからない慰めを受け、体育祭急病にならないかな、むしろ呪いを自分にかけてしまおうかと真剣に悩む私でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る