第104話 エプロンとフェチとコスプレ
本日はディルクとデートです。先日の夕食騒動のお礼だと、ルドルフさんがディルクにお休みをくれました。やっふぅ!!というわけでデートですよ!
しかし、最近アルフィージ様といい、私にはとりあえずディルクを与えとけば喜ぶと思われている気がしてなりません。その通りだがな!私のご褒美にディルクと私の休日を合わせてくれるなんてありがとうございます!
そして、今日はディルクから私にプレゼントだそうで…また白のフリフリエプロンでした。しかも前回受け取り拒否した奴より可愛いし凝っている。とりあえず、ディルクを自室に連れ込んで確認することにしました。もはやおなじみの防音結界も忘れません。
「ディルク、これはディルクからですか?」
「うん。気に入らない?」
私はさっそくエプロンを身につける。うむ。ぴったり。裾はふんわりする仕様でとても可愛い。
「とても可愛いし、気に入りました。刺繍も愛らしく、動きの邪魔になりません」
「じゃあ、次もし厨房に呼ばれたらそれ使ってくれる?」
「備品はお蔵入りですか…税金の無駄ですね」
「う」
「ですが、私も他の男性からの頂き物は嫌だったんでこちらを使います」
「ロザリンド…」
嬉しそうなディルク。いや、気にしない人もいるだろうし、それを重いと考える人もいるだろうけど、私は気にするしディルクの独占欲が嬉しいのです。
「ところで、例のエプロンを買った人達になんて言ったんですか?理想としては『人の大事な婚約者に勝手に物を買い与えるとかしないでくれる?狭量かもしれないけど、他人が与えた物を彼女が身につけるなんて不愉快なんだ。彼女は俺だけのものだ。…警告はしたよ。次はないから』とかですが」
呆然として固まるディルク。私変なこと言った?
「……見てたの?」
「は?」
「全く、一言一句違わずに同じことを言いました」
なんというミラクル!マジか!えええ、すごく萌える!私は何故その場に居なかったんだ!いや、まだ方法はある!
「録画するんで再現して!」
「意味がわからない!」
「私、それ見たかった!とりあえず、再現してもらって、妄想で補完するから!ディルクのヤキモチとか、超嬉しい!私はディルクの、いいえ、ディルクだけのものですよ!」
ギュウッとディルクに抱きつく。ディルクもおずおずと抱き返してきた。
「…心が狭いと自分でも思う。カッコ悪いね」
「私的には無関心でよかったねとか言われた方が嫌ですが。ディルクが他の女性から貰った服を着てたら、女性が友人で他意がなくても嫌」
「…そっか」
ディルクは安心したらしく、更にちょっとだけ力をこめて私を抱きしめた。
「ところで、ディルクはこれを着た私に何をお求めで?新妻プレイですか?裸エプロン…ではないですよね?」
「ぷれ…違っ…はだかエプロンって何!?」
動揺して私から離れるディルク。うん。安定の可愛いさです。
「全裸にエプロンだけという…」
「ちょっと!それなんでそんな格好するわけ!?」
「…想像してみてください。恥じらう私。裸でエプロンだけ。たぎりませんか?」
「……やめて!想像させないで!!めちゃくちゃたぎるけど色んな意味で完全にアウトでしょ!」
「…んー、水着の上からなら…」
「誘惑しない!!」
「ちなみに、新妻プレイはですね…立ってください」
一緒にベッドに腰掛けてたディルクを立たせ、するりとディルクの腰に手を回した。
「は?え?」
「お帰りなさい、旦那様。ご飯になさる?お風呂になさる?それとも…わ・た・し?」
ディルクを見上げて首を傾げる。新婚家庭のお約束ですよね。更に人差し指で自分の唇に触れてからディルクの唇に触れました。間接キスですね。ディルクは真っ赤になり、崩れ落ちました。
「ディルク?」
「ロザリンドは殺す気!?可愛すぎて死ぬ!何それ何それ凶悪すぎる!お帰りなさいからの旦那様呼びだけでも充分ときめくのに…選択肢の最後の奴…あざと可愛い!狙ってやってるとわかってても頭がおかしくなるぐらい可愛い!連れて帰りたい!もう今すぐ結婚して本当にお嫁さんにしたい!」
思った以上にクリティカルだったようです。やったね!
「えへへ、ドキドキした?」
「心臓が壊れるんじゃないかってぐらいドキドキしてるよ」
そっとディルクの胸に耳を寄せる。鼓動が速い。
「本当だ。ドキドキしてる」
「こ、こら!お腹をさりげなく撫で回さない!」
「てへ」
ちゃっかり服の裾からお腹を撫で回してたのを注意されました。相変わらず素晴らしい腹筋ですよ。
「…ロザリンドは獣化してなくても俺に触るの好きだよね」
「うん。もふもふも好きだけど、ディルクはもっと好きだから。でなきゃもふもふ禁なんて受け入れない。あと、好みなんだよね」
「何が?」
「ディルクみたいな細身に無駄のない筋肉という体型が」
「……………え?」
「男性の脚フェチとか胸の大きさ的な好みと同じかと。ディルクの体型は私の好みにストライクなんです。というわけで、もう少しディルクの筋肉を堪能したいのですが」
「……うん?」
理解が追いつかない様子のディルクに、さりげなく腹筋をまた触る。固いなー。
「ちなみに、ディルクは脚フェチですよね」
「えふ!?」
「高確率で尻尾が脚…というか、太ももに来るから好きなのかなと」
「お願いします!その辺りを冷静に分析しないで!」
本気でお願いされました。しかし否定が来ないので、多分脚フェチなのでしょう。
「私の脚はどうです?」
ちらりとスカートを捲る。慌てて直された。
「き、綺麗です!心臓が破裂したら困るから、簡単に見せないの!」
「えへへ」
満足です。ディルクは脚フェチと覚えておきます。
今回はルドルフさんに俺はよくわからんが、最近あべっくに人気の店らしいぞ!ヒューが言ってたから、多分大丈夫だ!楽しんでこい!と微妙に不安な紹介でランチをとることに。わざわざ予約がいる店らしく、高価だと嫌だったので別にいらないとお断りしたが押しきられた。
「…ここ?よかった、とりあえずいかがわしい店ではなさそう」
お店は可愛らしい外装で、砂糖菓子を彷彿とさせた。女の子らしい女の子が好きなフリルとレース満載な感じ。
「ロザリンドはヒューをどういう目で見てるの?」
「…こういう目?」
思いきり顔をしかめた。いや、彼はわりと悪ふざけするからさ。
「…わりといい奴なんだよ?」
「女癖が悪いふりしなきゃ、ね」
「…そこは否定できない」
ディルクは苦笑して私をエスコートした。中には孔雀…みたいなおじさ…お姉さん?と呼ぶのか??がいた。外見はおじさんだが、化粧をして女物の服を着ている。
「いやぁん!可愛らしいお嬢様に素敵な紳士ね!いらっしゃいませぇ!夢の館へようこそ!!アタシは店長のミス・バタフライよ!当店は予約なんだけどぉ、予約券はお持ちかしら?」
お姉さんかな。ディルクがドン引きしているので、私が対応した。
「これでよろしいですか」
ルドルフさんからもらった券を渡す。
「確かに。当店は初めてかしら?」
「はい。ご説明いただけますか?ミス・バタフライ」
「いやぁん!お嬢様はいい子ね!いいわぁ、サービスしちゃうんだから!!」
ミス・バタフライはクネクネした。そこに見事な蹴りが入った。
「油売ってんじゃねーよジジイ。いらっしゃいませ。当店は恋人同士の店になります。お2人は恋人ですか?」
「「はい」」
吹っ飛んだミス・バタフライは気になるが、彼…彼女?を吹っ飛ばした燕尾服を着た狐獣人の少年は淡々と説明しだした。
「では、証拠を」
「は?」
「恋人である証拠を」
私はディルクを引っ張り、ちゅっと可愛らしいキスをした。
「は!?」
狼狽するディルクに内心ニヤニヤしつつ、私はにっこりと少年に笑った。
「これでいいかしら?」
「構いません。では説明…「ゴルァァァ!フーク!てめぇ!」
吹っ飛んだミス・バタフライが復活しました。額が割れて流血してます。大丈夫か?
「ジジイがさっさと説明しないからだろう。接客の邪魔だ。しかもそっちの肝が据わりまくった女の子はともかく、連れはドン引きしてたろーが」
「あはははは」
確かにディルクはドン引きでしたね。今もドン引きしてます。常識人だから仕方ないと思うの。不本意極まりないけど、私最近非常識に慣れてるから。英雄様とかカーティスとかオルドとか色々。暗殺者は本当に非常識だよ!毎日が色んな意味でスリリングです!
「とりあえず、治しますね?ミス・バタフライに説明をお願いします。貴方も私の連れにお気遣いくださり、ありがとうございます」
私はミス・バタフライの割れた額を癒し、少年に頭を下げた。やり方はさておき、彼なりの気遣いだったんだろう。多分。
「まああああ!ありがとう、お嬢様!さ、こちらにいらして!当店のシステムを説明するわ」
要はこのお店はコスプレ喫茶なのだ。客が好きな服を選び、それを着てお茶と軽食を楽しむ。全室個室だから予約制になっていて、服によっては店員もそのシチュエーションに合わせて対応する。
ちなみに恋人の証明は無理矢理ではないか、個室なので関係を見極めるためなんだとか。意外にちゃんとした理由でした。
せっかくなので楽しむことにしました。
「ディルク、これ着て!」
「なんでミニスカートのメイド服なの!?」
「見たいから!」
「あらん、お嬢様素敵!」
パチンとミス・バタフライが指を鳴らすと、ディルクがミニスカメイドに!ふおお!けしからん!
「うわぁぁぁ!?」
座り込むディルク。いや、なんと素晴らしい!
「素敵なサービスをありがとうございます!ご馳走さまでした!」
「いいえ、アタシもいいモン見させてもらったわ」
熱く握手を交わす私達。フーク君にディルクが慰められてました。いや、ごめんなさい。
「ディルク、これは?」
今度は真面目にチョイスしました。ウルファネアの騎士服だそうで、黒を基調にしたアオザイ風。刺繍は牡丹かな?綺麗です。
「…それならいいよ」
「やった!ならお揃いがいいな。ウルファネアの服、選んで」
「…これかな」
ディルクが選んだのは、清楚なアオザイ風ドレス。白を基調に桔梗の青い花が刺繍され、スカートはふんわりとして…
「脚が隠れちゃうけど、いいの?」
「げほっ!」
むせたディルクに畳みかける。
「個室ですよ、2人きりですよ、多分こんなチャンスそうそうないですよ?」
「…じ、じゃあこっち」
白が基調なのは一緒ですが、こちらはロング丈チャイナドレス風。菖蒲の花が刺繍され、上品なデザインながらなかなかスリットが際どい。そしてスリットの際どい部分にレースがついていて可愛い。
「承りました!」
「最近の女の子は積極的ねぇ…」
ミス・バタフライの呟きは聞かなかったことにしました。
そして私は衣装に合うようスタッフさんに化粧と髪を結い直されて部屋に通されました。
内装もウルファネア風らしく、中国っぽい感じ。そこにちょっと胸元をくつろげたマイダーリンが!!しかもつけ毛?ウルファネアでは毛並みが綺麗=モテるらしく、男性でも長髪が多いらしい。髪長くても引っ張られたりしないぐらい強いってアピールもあるのかな?
「ディルク、惚れ直しました!素敵です!カッコイイです!長髪も似合いますね!私はこんな素敵な婚約者がいて、今心から幸せです」
「お、俺も…こんな可愛い婚約者がいて、幸せ…です」
視線をさ迷わせながらポソリと呟くディルクに、私はもう胸キュンです!
「あらあら、お熱いわね。これ、店からサービスよ」
ディルクは素早く私を膝に抱き、さりげなく脚を隠した。いや、喜ぶのはディルクだけですよ、多分。
サンドイッチなんかは券についていた分らしいですが、スイーツは割れた額を治したお礼だそうです。苺のタルトに、アップルパイに、スコーン各種。なかなか豪華ですね。
「ごゆっくり~。店員はベルを鳴らせば来るからね」
ミス・バタフライは部屋からでていった。
「ディルク…」
ウットリと首筋を撫でる。かっこいい。本人は目線をさ迷わせてしまう。ん?
「よ、欲望に負けた自分が憎い…」
先程からチラチラと私を見て…確かにクリスティアにはこんなに大胆に脚を出した服はないもんね。
「見苦しい?」
「………………正直、大変素晴らしい眺めだと思います。そして、そんな自分が嫌です」
「つまり、私が魅力的だと?」
「いつも魅力的だけど、目のやり場に困るぐらい、普段以上の破壊力です」
しかもディルクがとっさに膝に乗っけた時はまぁよかったけど、今は半分脚が見えてます。そしてそれをチラチラと見るディルク。
「ふふ、ディルクあーん」
サンドイッチを手に取り、食べさせる。
「あ、あーん」
ここぞとばかりにイチャイチャしまくりました。ディルクも人目がなければ嫌がりません。むしろべたべたしたがります。大満足でした。
「ミス・バタフライ!素晴らしい体験でした!また来ます!!」
「うふふ、お嬢様なら大歓迎よぉ。これ、あ・げ・る」
「カード?」
「会員カードよん。普通何回か来たお客様にあげるんだけど、お嬢様は特別。アタシにやな顔も差別もしないなんて、久しぶりだもの。ぜひまた来てちょうだい」
「はい!絶対また来ます!」
「えっと、ありがとうございました」
こうして、今日のデートは大満足で終わりました。今回のお礼として、私はルドルフさんとヒューに特製弁当をあげました。とても喜ばれました。
いやぁ、いいお店見つけた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます