第96話 チーム公爵家の話し合い

 がっつり叱られてから騎士団通常業務を終了し、ディルク・カーティス・アデイル・ヒューを連れて我が家に帰りました。




「ただいまー。父様は帰宅してる?」




 私達をラビーシャちゃんが出迎えた。




「おかえりなさいませ。はい、ご帰宅されております」




「じゃあ、父様・母様・兄様・アーク・マーサを応接間に連れてきてくれる?」




「かしこまりました」




 ラビーシャちゃんは優雅に礼をすると素早く駆け出した。




「「「はやっ!?」」」




 ディルクと私以外ラビーシャちゃんの速さにびっくりしている。うちの忍者…じゃなかった、メイドは日々成長しています。






 応接間に全員集まったところで、父が告げた。




「で、話はなんだ」




 私はこれまでの経過を報告した。




 父は無表情(多分考え中)母は…ニコニコしていて読めない。兄は…すいませんすいません、怒りますよね!そうですよね!マーサとアークは神妙な表情だ。




「ロザリンドはそれを話してどうする。何が望みだ」




「アルディン様とアルフィージ様だけならともかく、今回は陛下に賛成していただかねばなりません。特に父様とアークは陛下と幼なじみだそうですし、知恵を借りたいと思いました」




 父が俯いた。眉間にシワが…父?どうした?戸惑う私にアークが肩を叩いた。




「お嬢様に頼られた喜びを噛み締めてるだけだから」




 え?マジで?私面倒かけて申し訳ないなーと思ってたのに。俯いた父はゆっくりと立ち上がり、顔を上げた。




「…任せろ。陛下の1人や2人、私が捩じ伏せてやる!」




「父様ぁぁ!?捩じ伏せないよ!説得するんだよ!?母様ぁぁ!止めてぇぇ!!」




「ロザリンド、父ちゃんも面白いのな」




 楽しそうなカーティスに双子が同意した。




「この親にして、あの娘あり、か」




「ふは、だな」




 聞こえてるよ!全員後でしばくからね!父は母の助けもあって、なんとか落ち着きました。




「捩じ伏せる以外の意見はありませんか?」




「んー、脅迫?」




「……アーク」




「おうよ」




「なんで第一選択が捩じ伏せるで次が脅迫になるの!?今回はお願いする立場です!」




「ネタならイロイロ…」




「問題はネタじゃないから!!」




「お嬢様のためならこのマーサ、国王であろうとも仕留めてご覧にいれます」




「仕留めたらだめぇぇ!!話し合って!!」




 涙目で訴える私に、母が可愛く挙手した。




「はーい」




「なんですか、母様」




「洗脳は?」




「却下!!母様までぇぇ!!」




 母はクスクスと笑った。




「あらあら、冗談よ。洗脳は最終手段だから」




「そもそも手段に入れたらダメぇぇ!!」




「…はい」




 黙っていた兄が挙手した。




「兄様?」




「サボテンの心で、城を攻める」




「…ああ、サボテンモンスター軍団が城を襲撃…待って!国が、国が滅ぶから!罪を消すために国を消す必要はないから!!もうやだ!うわぁん!ディルクぅ!!」




 兄までとんでもないことを言い出して、ディルクに泣きついた。兄は、兄だけは我が家の常識人枠だと信じていたのに!!




「よしよし…公爵様、睨むのやめてください。席が近いからですよ。そしてロザリンドはさりげなく耳をモフらない」




 私を撫でる手は止めないが、父の冷凍ビームに地味にビビるディルク。はぅ…いい匂い…




「冗談だよ。妥当なのは交換条件かな。技術提供とかさ。僕の品種改良野菜だしてもいいよ。それで他の領地も潤えば、僕としても嬉しいし」




「兄様…」




 やっと…やっとまともな意見です!なら私考案魔具のレシピでもいいかな。




「なんつーか…」




「ロザリンドちゃんはなるべくしてああなったんだな…」




 呆れたように呟く双子。どういう意味だ。




「…今現在貴方達は非常に危うい立場です。私は貴方達の命のためなら土下座も辞さない覚悟でいるのですが」




「「すいませんでした!」」




 さすが双子。息ピッタリで頭を下げた。




「とりあえず、明日城で陛下と両殿下に謁見の手配をお願いできますか?」




「うむ。任せろ」




「ありがとう、父様。頼りにしています。皆も(内容はさておき)ありがとう」




 こうして解散になりましたが、今日は宣言通り情報収集のため徹夜でした。


 いや、予想外にヤバいネタも飛び出すし、ウルファネアの内情も確認できてなかなか有意義でした。しかし私は獣化したディルクにいつのまにか寝かしつけられ、気がつくとベッドで寝ていました。覚醒した私はディルクに苦情をいいました。




「モフモフさせて寝かしつけるなんて、ディルクの卑怯者!めちゃくちゃ幸せな感触でよく寝ちゃいましたよ!でも次からは起きるまで添い寝してください!寂しかった!」




「あー、うん」




 呆れる徹夜した元諜報員騎士達と、困惑したディルク。あえて空気を読まず、ディルクを抱きしめます。




「うん。充電完了。今日は頑張りましょう!」




 お城で殴りこみ…ではなく、交渉です!

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