第64話 近況報告とユグドラシルさん
私の暗殺未遂事件から5日が経ちました。多少周囲は落ち着いてきたかな?という感じです。
とりあえず、近況報告を。現在騎士団は大忙し。大物から小物までの大捕物でしたからね。裏付け調査やら、ディルクも休み返上で走り回ってます。ルドルフさんに、頼むから、次からはもっと早くに教えてくれと言われました。次とかないと思いたい私ですが、とりあえずわかりましたと返事をしました。
馬鹿貴族が抜けたので、父も忙しいかとおもいきや、宰相執務室にはさほど影響なし。他の部署が大変な事になっているようです。更に私の草案を捩込まれた国王陛下も忙しいらしいです。がんばれー(他人事)
我が家は…兄とゲータはかなり相性がよいらしく、普通に仲良くなりました。
苗とか買いに行くと半額になるかオマケが大量についてくるらしく、買い物については頼もしいゲータさんです。ただ、私とマーサがこの3年でプレゼントしたモノが超高価だとばれてしまい、叱られたりしました。
ゲータは家庭菜園が趣味なわけではなく、食うに困って畑を作ったそうですが兄に付き合い植物を育てる楽しさに目覚めたらしく、よく畑仕事やら造園を手伝っています。やたら働き者なんで、アークにも可愛がられているようですね。
凶悪フェイスに似合わず世話好きなんで、子供達に絡まれる場面をよく見ます。子供達は全く遠慮も容赦もないので、よく怒らないな…という場面も多々あります。意外に温厚な男らしいです。
私付きメイド見習いのラビーシャちゃんは、立派な忍者になりそうな気配です。…なぜだ。いや、理由は理解しています。認めたくないだけで。
私付き=危険。私の足手まといにならない実力が最低限必要とのこと。確かにラビーシャちゃんが人質にとられたら困る。というわけで、彼女は側仕えとしては申し分ないので戦闘訓練を重点的に実施中です。
こないだ壁を走ってました。足音がしませんでした。彼女は忍者として着実に成長しています。
それから、ジェラルド公爵に雇われていた虫…じゃなかった暗殺者が居着いてしまいました。さすがに子供(10歳ぐらいらしい)を処刑はちょっと…と思いハルに頼んでコッソリ逃がしたら、
「しくじった暗殺者に居場所はない。殺すか使うか、拾ったなら選べ」
…と言われて今に至ります。彼はフクロウの獣人で翼が出し入れ自由です。便利ですね。名前がないので便宜上オルドと名をつけました。結構な美少年です。
そして、ルーミアさんはラビオリさんの預かってる子供達の面倒を見ています。貴族の残党がいても面倒だし、子供達は改装が済むまで我が家で保護の予定です。なかなかやんちゃなので、私もたまにシメ…世話を手伝っています。
さて、そんな日々を過ごす私です。ある朝、スイがいいました。
「ロザリンド、子供達が秘密基地つくりたいんだって」
「ん~?」
私は完全に寝ぼけていました。秘密基地?そういや昔作った話しをしてあげたなぁ…寝ぼける私をさっさと着替えさせ、スイは庭のひらけたスペースに私を連れて来ました。
「ここならいいと思わない?ロザリンドなら木を成長させてすごいの作れるよね?」
「ん~?」
ここで目が覚めればよかったのですが、私はまだ寝ぼけていました。
「ほら、この苗木に魔力注いで、秘密基地って考えて!」
「ん~」
私はこの時、シル○ニアファミリーの木のお家的なモノをイメージしてしまいました。1階はフカフカな草の絨毯と木のうろ的な空洞。2階はトランポリン。3階は小屋と滑り台。滑り台はストレートと螺旋の2種類。魔力をひたすら注ぎ目を開けると、そんな素敵な木のお家が目の前にありました。
「わー、ロザリンド、凄い!凄い秘密基地だね!」
「……」
残念すぎることに、私の頭はこの瞬間に完全覚醒を果たしました。そして脳内では「このー木なんの木…」という某CMの歌が流れています。見たことのある木でしたね、あの苗木。3年前の、誕生日で断ったユグドラシルが立派な木のお家になって再登場ですよ!!
「スイのばかたれぇぇ!!私のばかぁぁぁ!!」
覚醒した私はとりあえず元凶を罵りました。素早く捕獲しガクガク揺さぶります。同じく寝ぼけてたらしいロザリアも苦笑い。しかしロザリアもあのお家には興味津々なご様子。子供達は喜ぶだろうけど、どうすんだよ、このユグドラシル。
「あはは…まぁ、子供達も守れるし、ユグドラシル自体に目くらましの魔法かけて貰えばいいんじゃない?ユグドラシルに頼んで屋敷全体に結界はれば、ロザリンドも安心して外出出来るよね?」
「…うー」
「前回と違って、ジジイから渡すよう頼まれたんだよ。少しでもロザリンドの力になれるならってさ」
スイは的確に私の弱点をついてくる。子供達の護りと、善意のプレゼント。私は兄に土下座する覚悟を決めたのでした。
「わー」
半ば呆れる兄。すいません。寝ぼけてました。事情を話すとユグドラシルを確認しに来ましたが、意外にも叱られませんでした。
「まぁ、仕方ないよ。子供達は喜ぶだろうしいいんじゃない?」
とのことでした。念のため、屋敷の人間以外認識できない魔法をかけ、子供達を呼んできました。
「ふわー」
「すごーい」
「……(目がキラキラしている)」
ほとんどの子供達は親元に帰しましたが、3人は身寄りがないので我が家に滞在することになりました。
顔がわんこ(柴犬)の変わった獣人、ポッチ。ふわふわな毛並みの白猫獣人、マリー。無口な蛇の獣人、ネックス。
ジェンドとオルドも含む5人の目は木のお家に釘づけできらきらしています。うちの精霊さん達も参加ですよ。
「遊んでいいけど、危ないことはしないのよ」
私の注意事項を聞いて、5人+精霊さん達は一斉に走り出しました。
「…何故階段を使わない」
5人+精霊さん達は一斉にクライミングを開始しました。一部飛んでます。中に階段あるんだけど…ま、まぁ楽しんでるからいっか。
「お姉ちゃん、このふかふか、なあに?」
トランポリンですね。使い方を教える。
「わ、マリー凄い!」
さすがは猫!オリンピックに出れそうな宙返りです!
「お姉ちゃん、これは?」
滑り台ですね。使い方を教え…ふぎゃああああ!ストレートの滑り台超速い!怖い!!地面と顔面衝突か!?と覚悟を決めたら…ふかふか?
「ユグドラシルが頑張ったみたいだね」
気が利くユグドラシルは私が怪我をしないように根を伸ばし、一部をトランポリンにしたようです。木だけに気が利く…いやいやいやいや!
「頑張ってどうにかなるモンなの!?ユグドラシルもマグチェリアみたいに意志があるの!?」
「ん?ロザリンドの魔力の影響かな。まだ意識は幼いみたいだから精霊は出ないだろうけど」
「また私のせい!?」
無言でスイはにっこり笑いました。
「それに、このユグドラシルはエルフの森のユグドラシルと繋がってるから、ロザリンドが助けてくれた事を覚えてる。必ずロザリンドの助けになるよ。僕の力も増すし、ロザリンドの護りは多い方がいい。ロザリンドは大事なモノも多いしね」
そう言われてしまうと、私は何も言えません。
我が家に素敵なユグドラシルさんが増えました。ユグドラシルさんはお腹が空くと、実をつけて私の手の中に落としてくれるんですよ。懐かれ過ぎててどうしたらいいか解りません。だれか対処法を教えてください。とりあえず、私はユグドラシルさんが実をくれたらお礼に水をあげてます。
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