第56話 おうちと兄と協力要請
レオニードさん達と綿密なる打ち合わせの後、私は残りの仕事を片付け父と共に帰宅しました。
「ただいま」
兄も帰宅したようです。ジェンドが家わんこのようだ。兄に尻尾をふってじゃれている。
「わ、こら。くすぐったいよ」
兄もまんざらでもない感じです。うん。私もー!いざ、突撃!!
「兄様、お帰りなさい!」
兄が倒れないギリギリを見定め、抱き着きます。
「うわぁ!?ロザリンド!?」
「兄様、兄様ー!」
ギュウッとジェンドごと抱きしめてスリスリします。
「もう、しかたないなぁ」
兄は優しく笑って私とジェンドをナデナデしてくれます。ジェンドもご機嫌です。尻尾をブンブン振ってますな。
兄は約束通りジェンドと遊ぶとのこと。私は仕事で父に用事があると別れました。
お部屋には、両親とアーク、マーサが居ます。人払いと防音結界はしてあります。とりあえず、約束したのできちんとエルフの森での事を報告。ユグドラシルの件は兄がいたのでわざと言わなかったんですよね。
そして、ユグドラシルに埋め込まれていた呪いの種を見せました。
「今回は賢者のじい様に分析してもらおうと思います。父様、急ぎではありませんが、3年前のコウの喉に刺さっていた短剣。あれも調べたいのですが」
「ロザリンドはあれと今回の種に関連があると考えているのか?」
「むしろ関連がない可能性が少ないかと」
「ふむ。手配しよう。魔法院も手を尽くしたが何も見つからなかったようだし、問題なかろう」
「ありがとうございます。それからマーサ、怒らないで聞いて欲しいの」
怒らないでを強調しつつ、今日のジェンドについてのお話をしました。
「結局ジェンドは王都にずっと居たみたいなのよ。獣人コミュニティの結束の固さとまさかの誤解にびっくり。私のミスだわ。マーサ、アーク…ごめんなさい」
実際マーサもアークも手が空いた時調べてくれていたのだ。写真がないこの世界で人探し…しかも会ったこともない人物を探すなんて不可能に近い。2人は無駄になることも想定して探してくれていたのだ。
深く感謝と謝罪の意味をこめ頭を下げる。そして、レオニードさん達に報復はやめてね!悪気なかったの!親切心だったの!お願いします!という祈りをこめた。
「…お嬢様が頭を下げる必要はありません。私も獣人について不勉強だったようです」
マーサは笑っていたが、目が…本気と書いてマジだった。
「次が無いように、きっちり躾を…「うわああああ!か、母様説得!マーサ、マーサ!悪気は無かったの!お願いだから許してあげてぇぇ!」
マーサを説得するのは大変でした。母の助力でなんとか…なんとか譲歩していただきました。
落ち着いたマーサは目を伏せてため息を吐きました。
「ジェンド坊ちゃま…ワルーゼの所で暮らしておられただなんて…どうりでとても洗濯も食器洗いもお上手なはずです」
「は?」
「早朝、お嬢様達がまだお休みの頃に起きていらして、洗濯をして軽く廊下の雑巾がけをなさり、ダンの所で洗い物を手伝い、芋の皮剥きをなさってまた眠られたとマーニャから報告が来ています」
「つまり、虐待だけではなく…」
「幼子を労働力としているのでしょう。手慣れたご様子だったとダンからも報告が来ています。特にマーニャはよーく、よおおく叱っておきました」
マーニャ…ま、まぁとりあえず、心配だがマーニャはさっき普通に働いてたから大丈夫だろう。
「今回集まっていただいたのは、ワルーゼについて皆様に情報収集と情報操作をお願いしたかったからです。お願いできますか?」
私は今回の作戦概要をお話しました。報告・連絡・相談は基本ですから。
「ふむ。ついでに貴族関連も洗うか。そろそろ掃除時だ」
「お母さん、頑張っちゃうわよー」
「任せとけ」
「お嬢様の御心のままに」
「皆様、ありがとうございます。よろしくお願いします」
私は感謝をこめて頭を下げた。父が私の頭を撫でる。
「決して独りで抱え込むな。今回のように、頼りなさい」
「…はい」
頼もしい父の言葉に、自然と笑顔になる。母も、マーサとアークも、笑ってくれていた。
私達、幸せだね。味方してくれる人達がいて、心強いね。ね、ロザリア。私は心の中の彼女に呼び掛ける。
そうだね。私、とても幸せだよ。瞼の裏にふわりと幸せそうに笑う私の相棒が見えた気がしました。
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