第32話 初めてのデート
はい!今日はデートの日です!超浮かれてます!
今日はロザリンド状態で成長した姿の高位幻術です。ロザリアみたいに姿をハッキリイメージできなくて、かなり練習しましたよ!年齢はディルク様と同じぐらいなので胸はささやかです。
現実の私と同じ白を基調に赤いリボンがアクセントの清楚系レースワンピースに母様プレゼントのリボンをつけて、ハルがくれた石のブローチを飾り、鏡の前でくるりと回ってみました。
「マーサ、マーニャ、おかしくない?」
「大変可愛らしいですわ」
「お嬢様、素敵ですよぅ。これなら誰でもイチコロですよー」
少しだけお化粧もして、いざ出陣!
「あら、いらしたようですわ」
マーサと玄関に行くと、ディルク様が待っていた。騎士服以外は初めて見るけど、清潔感のある白のシャツに紺色のズボンを合わせていた。飾り気はないが、シンプルでよく似合っている。
「ディルク、カッコイイ!」
「あ、ありがとう…ロザリンドもいつもと違うね。よく似合ってるよ」
「えへへ、胸はひかえめだけどね」
「もう、本当にそれは言わなくていいから!」
真っ赤で涙目なディルク様を宥め、気がつけば笑顔でどちらともなく手を取り、我が家を出た途端にディルク様が私を抱き上げ囁いた。
「護衛がいるね。撒くよ」
「うにゃああぁ!?」
囁くと同時に…は、速ああぁい!前に結界はりつつ飛行したのの比じゃない!
「叫ぶと舌噛むよ」
慌てて口を閉じ、あの辺り…と多分アークに魔法をかけた。ごめんよ、アーク。君の犠牲は忘れない。
「影縛り」
「お嬢様!覚えてろよ」
私の魔法でアークは自分の影に転ばされ、縛り上げられたアーク。すまん。私の幸せのためにマーサに叱られてくれ。
「そろそろいいかな」
ディルクがそっと私を下ろす。アークは完全に撒けたようだ。
「じゃあ、参りましょう、俺のお姫様」
差し出された手を取り、町に向かって歩きだした。
「わあぁ」
町は活気に溢れていた。今日は休息日だからもあるかな。クリスティアは日本と同じで5日働いて2日休み。暦も大体日本と一緒です。
「珍しい?」
「町に来たの初めてだからね」
「案内するよ。行こう」
女の子が好みそうな小物屋さん、花屋、お洒落なカフェ…
「ディルク」
「何?」
「いや、楽しいよ。楽しいけどさ、デート慣れてない?」
あ、吹いた。めっちゃむせた。背中をさする。
「いや、デートコースが完璧すぎて逆に違和感が…」
「デートなんか初めてだよ。初めてだから、ロザリンドが喜んでくれるようにしたくて考えたけどわかんなくて。頭下げて慣れてそうな奴に片っ端から聞いて回って…最終的に慣れてる奴らがデートコースを作ってくれました…」
涙目でぴるぴるしています。何、この可愛い生き物は!
私のために、今日のためだけに頭さげてまで?
「ディルクが好き過ぎて辛い…」
私まで悶えるはめになりました。後で2人きりになったらぎゅーとちゅーしてやる!
「情けなくてごめん」
「どの辺が?私のために頭さげてまでデートコースなんとかしようとしてくれて、すごく嬉しい。ありがとう、ディルク。それに、友達できたんだね。よかった」
「…うん。ロザリンドのおかげだよ」
「違うよ、ディルクが優しくていいやつだって騎士さん達も解ったんだよ。さて、次はディルクの行きたいとこに行こう?デートなら2人で楽しまなきゃね」
小物屋さんでは明らかに居心地悪そうだったしねー。
「うん」
そして行き先は武器屋さん。色気はないけどディルクらしい。
研ぎに出してた剣を受け取り、試し切りしてるとこを見たり、選び方を教えてもらったり。
親父さんにはこんなとこじゃなく嬢ちゃんの好きそうなとこ連れてってやれやと言われたけど、私がお願いしたんですと笑った。
冒険者ギルドに入って依頼をみてみたり、ディルクの冒険の話しをしてもらったり、とても楽しかった。
さて、今日は目的があってディルクを誘っていました。
「ディルク、行きたい所があるんだ」
「こんな場所があったんだ…」
ここは町から離れた花畑。見渡す限りの白い花。実はここ、ヒロインが攻略対象に告白する場所である。ゲンかつぎには丁度いい。
彼に向き合い、目を見据えて告げた。
「私は、ディルクが大好きです。私はディルクが居るだけで幸せになれる自信があるから、ディルクの好みに近づけるよう頑張るし、足りなければいくらでも努力します。一生かけて幸せにすると約束します。だから」
息をすった。声が、手が震える自分を自覚して、内心で苦笑した。
「ディルク=バートン候爵子息、私とこんや…むぐ」
塞がれました。
口を手で抑えられて言葉がでません。拒絶されるのかと、涙がぽろりとこぼれました。
「ロザリンドは凄いよ。俺を救ってくれた。初めて会った時、俺をかっこいいって言ってくれて…初めて家族以外で獣化した姿を笑顔で抱きしめてくれた人で…俺の騎士団での扱いを知って、悪者になってまで俺を守ろうとしてくれた。可愛くて、面白くて、ちょっと意地悪で、ずっとずっと見ていたくて…ロザリンドはそのままで充分過ぎるぐらい魅力的だよ」
ディルク様は私の口から手を離した。
真っ直ぐ私を見つめる琥珀の瞳に吸い込まれそうな気がした。
「ロザリンド=ローゼンベルク公爵令嬢、私と婚約して欲しい。いつか、私の妻になってください」
ふわり、となにかが額に、目尻に、優しく触れていく。それがディルクの唇だと…え?
私、今ディルクに涙舐めとられてますよ!ちょ、首は…いや耳もダメですよ!
「ディ、ルク…んっ」
「ロザリンド、返事を」
この状況でか!鬼畜ですね!しかし私は頑張りました。
「お、お受けします。末永くよろしくお願いしますっ」
解放されたのは10分後でした。恥ずか死ぬ。今なら羞恥心で死ねる気がするよ!!
「ディルク」
「何?」
「候爵様に許可をいただきましょう。アポイントは取ってあります」
「そう。わかった。でも、その前にこれを」
渡されたのは小さな小箱だった。中には深い青色の宝石が花びらになっている指輪だった。
「この指輪は魔法で持ち主にピッタリはまるらしいんだ。ロザリンドみたいに綺麗だったから…今までのお礼と…お誕生日おめでとう、ロザリンド」
「…知ってたの?」
「実は聖獣様が教えてくれた」
そう、今日でロザリア…つまりこの身体は4歳になる。
「そう、なんだ。ディルク、指輪を左の薬指にはめて」
私は上手く笑えているだろうか。嬉しすぎて泣くのを堪えるだけで精一杯だ。
「何か意味があるの?」
「リンの世界では婚約した時に指輪を贈るの。恋人からもらった指輪も、左の薬指にはめるものなの」
「わかった」
ディルク様は嬉しそうに左の薬指に指輪をはめた。指輪は私にピッタリになった。
「嬉しい、すごく嬉しいよ。大事にするね、ディルク」
「うん」
ディルク様は優しい手つきで私の涙を拭い、落ち着くのを待ってくれた。
「じゃあ、そろそろいこうか」
私達は手をつないで、バートン候爵邸に向かったのだった。
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