第31話 ドラゴン精霊とお誘い

 さて、楽しいピクニック…?も終わり、また日常が戻ってきました。今日も午前中はお仕事です。近いうちに新しい秘書官さんが来るそうな。




 聖獣様がいつも通り私を迎えに来ました。




『迎えに来たぞ…その頭はなんだ』




「コウです」




『ふむ、これはレイデ火山の精霊の子だな』




「わかるんですか?」




『匂いでな』




「おじちゃん、だあれ?」




『おじ…』




 聖獣様、地味にダメージ受けてる。すいません、うちの子が…




「コウ、聖獣様って呼んでね。えらーい精霊様なんだよ」




「はーい」




 うむうむ、コウは素直なよいこです。道中昨日のピクニック…もどきについて話しました。聖獣様も行きたかったとのこと。私は勝手に聖獣様って城から出られないと思ってましたがたまに散歩に出たりするそうです。




『汝は本当に異端ばかり集めるな。わざとか』




「いや、たまたまです」




『ふむ、もう少し魔力が安定したら我の加護もやろう』




「え?ありがとうございます」




『汝は面白い。その行く末に興味がある』




「では末永くよろしくお願いします」




 そんなことを話していると、いつもの待ち合わせ場所に…ルドルフさんもいた。




「よ、嬢ちゃん」




「こんにちは、ルドルフさん。何かありました?」




「悪いな、逢い引きの邪魔して。手短にするんで許してくれ」




 視界の端に、逢い引きというワードに悶えるディルク様がいて撫で回したいが我慢する、空気が読める私。




「嬢ちゃんがそのドラゴンから引っこ抜いた短剣、呪いがかかってた。タチ悪いことに、狂化の呪いだ。どうりであの暴れようだ。嬢ちゃんは触って大丈夫だったか?」




「ふふ、ロザリンドはマグチェリアの魔力がついてるかラ、あの程度の呪いは触れても無効だヨ」




 スイ、いつのまにか私の肩にいました。マグチェリアは世話する人に魔力を与える効果もあるそうで、私は非常に呪いが効きにくいそうです。素晴らしいプレゼントありがとう。今日は私のおやつもスイにあげます。




 狂化は呪いの一種で、かけられた者は自我を失い、暴れるだけの獣となる。痛いだけでなく、コウが暴れていたのは呪いのせいもあったようだ。




「はー、本当に規格外だな。嬢ちゃん」




「正確には私の周りだと思いますが。特にマグチェリア持ってきたスイとか」




『しかし、コウを討たずに済んだのは幸運だったな』




「はい、こんな可愛い子が死ななくてよかったです」




『違う。コウが死ねばレイデ火山の精霊とつがいのドラゴンが暴れて大惨事になったであろうな』




「うええ…あ、危ない所だったんですね」




 そういやレイデの町ってゲーム終盤にイベントがあったゴーストタウン…まさか今回の件で滅んだってこと!?


 ひいいぃ…よ、よかった!本当に情けは人のためならずだね!




『うむ。しかし、短剣を刺した者は何者であろうか。コウは覚えておらぬか』




「んー、わんわんの匂いがしたよ?」




『犬か?』




「ちがうよ、おおかみのじゅうじんかな。ぼくねてたしいたみでビックリしておきたから、かおはわかんない」




 私は聖獣様とコウの話をルドルフさんに伝えた。調査を続ける、とルドルフさんは去っていった。




 お昼ご飯を並べつつ、ディルク様に話しかける。




「忙しそうだね」




「うん。犯人がわかってないから」




「今、忙しいよねー」




「ん?うん。普段よりは」




「そっかぁ」




「何かあるの?」




 落ち込む私を心配するディルク様。でも、言っちゃえば確実に無理してでも願いを叶えちゃうだろうしなぁ。




『ロザリンドは汝を逢い引きに誘いたいと言っていた。しかし忙しいと聞いて諦めるかどうするかで悩んでおるのだ』




「せ、聖獣様、そこまで解っててばらします!?」




『汝には我の加護を与える予定だ。我の加護持ちは幸せになる義務があるのだ。それにディルクも誘われれば悪い気はしまい。汝を好いているからな』




「あー、うん。ロザリンド、誘って…ううん、ロザリンド嬢、俺とデートしてくれませんか?」




 はにかんだ表情に胸を打ち抜かれる。いつもよりちょっとかしこまって、騎士の礼をとりながらとか、かっこよすぎる!!




「地の底まででも喜んで!!」




 返事はもはや反射の域だった。こんな素敵なお誘いをされて断れる人間がいるだろうか。いや、いない。




「じゃあ、次の俺の非番の日でいいかな?」




「うん!」




 遠慮しないで言えばよかったかな?聖獣様に感謝をこめて明日のおやつは好きなものを作ってあげることにした。


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