第27話 断罪の舞台裏と手料理
あれから2週間が経ちました。私の目論み通りディルク様に嫌がらせをする輩はいなくなりました。
必死にロスワイデ候爵子息や該当者を庇う姿に感銘を覚えたのか、好意的な者もいるようです(騎士3人とマーサ情報)
やっぱり、された側視点で見せたのもよかったかな?謝罪する人もいたようです(ディルク様情報)
いや、本当は別のやり方もあったかもしれないんですけどね。やっぱり基本、本人がどうにかしないといけないわけだし。調べてもらったら、遠征に行った時魔物の群れの中に置き去りとか、命に関わりかねないものまで出てきてさすがに放置できなかった。いや、まあ私情もめっちゃ入ってたけどね。
いや、あの後大変でしたよ。王様にはやり過ぎだって叱られるし。ディルク様にも叱られるし。
王様には、父様とアークがなんか取引してくれたので今回のことが実現しました。2人共ありがとうございました。
根底にある獣人差別をどうにかしなきゃいけないんだけど、これがなかなか難しい。
この世界では獣人やハルのようないわゆる混ざったものは『異端』とされる。厳密には私や聖獣様もそのカテゴリーな気がするんだけどね。『異端』は忌避される。
ロザリアと何度も話し合ったんだけど、このクリスティア王国に攻めてくるのは獣人の国ウルファネアである可能性が高い。ロザリアの夢で見た兵士の鎧に刻まれた紋章が一致した。
実は、ゲームではヒロインも贈り人である。私と違うのはヒロインは生身で来ていること。ウルファネアの王様が彼女を召喚し、ヒロインは王様の勧めでクリスティアの王立魔法学園に留学する。
つまり悪役令嬢ロザリアは、ヒロインがスパイではないかと疑い、円満に追い出すために嫌がらせをしていたとも考えられる。
そして返り討ちに…って、ロザリアが可哀相すぎるよ…真面目過ぎたんだろうなぁ。今思うと婚約者がいるのにデートするとか非常識だし、注意されても仕方ないよね。
多分、ヒロインは無自覚にスパイなんじゃないかなと思います。毎晩王様に報告したりしてたしな。
話が逸れたけど、ウルファネアが攻めてくるとして、考えられるのは獣人差別のこと。なのでできるだけなんとかしたい。
ディルク様は穏やかな気質だし、狂暴とされている獣人のイメージを払拭するには最適だ。しかも私という幼児と仲良くしていれば、イメージも良くなるだろう。こればかりは今後、地道にコツコツとやるつもりである。
手はきちんと動かしつつそんなことを考えていたら、目の前で手をヒラヒラされた。
「ロザリンド?」
ここは宰相の執務室である。ディルク様がいるはずはない。しかし、目の前にはどう見てもディルク様。
「会いた過ぎて幻覚まで見えるなんて、末期?」
「幻覚じゃないから!団長に言われて書類持ってきたの!いつも美味しいご飯作ってもらってるし、たまには俺から迎えにこようと思って…」
「ロザリンド?」
あや?兄から冷気が漂っておりますよ??え?私何かした?
「作って…だと?」
父?何がショックなの?
「お嬢様、料理出来んの?」
アークに問われて素直に返す。
「まぁ、そこそこ。こないだ好評だった肉巻きおにぎりは私のレシピです。ダンが作った奴のが美味しかったけど」
「ロザリンドのご飯はいつも美味しいよ?」
首を傾げるディルク様。今日も安定の天使っぷりですな。
「ディルクの好みに合わせてるつもりだし、愛が篭ってるからねー」
あ、照れた。可愛いんだから、もう。
「ずるい」
「え?」
「そうだな、ずるい」
「は?」
「僕だってロザリンドが作ったご飯食べたい」
「ええ?ダンのご飯のが美味しいよ?」
「私も娘の手料理が食べたい」
「お嬢様、諦めろ。こうなったら絶対意見変えないから」
「ロザリンド、僕らとディルクのどっちが大事なのさ!ディルクばっかりずるいじゃないか!こないだだって、僕頑張って協力したのにぃぃ」
あ、兄?悪かったよ、泣かないでくれよ。というか、なぜに私は恋人に浮気を責められる男的な感じになっているの?
「家族は家族で大事だし、ディルクはディルクで大事だし、好きの方向性が違うから選べないかな…兄様と父様のために今度何か作るよ。リクエストある?」
「ロザリンド、今度休みが取れる。誕生日の貰ってないプレゼントがあったろう」
「じゃあ、ピクニックでお弁当作りますね」
その後、私は拗ねまくる兄の機嫌を取るため大変でした。
あ、ランチには結局いつも通り行きました。聖獣様もいつも食べていると聞いて、父が聖獣様の口を限界まで伸ばしてました。羨ましいだろうとドヤ顔したのが逆鱗に触れた模様。必死に止めました。
後書き編集
実は、あのパフォーマンスにはこんな意味もあったのよ、という説明回でした。
ロザリンドは意識して今回悪役になり、ディルクが今後騎士団で上手くやれるよう配慮していました。
確実に加害者への悪意はありましたがね。ディルクが止めに入るまでが計画の範疇でした。
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