第18話 『私』と向き合ってみよう
結局、プレゼントタイムが終了して加護祝い&誕生日パーティーは終了となりました。
私は気になることがあり、父に尋ねてみました。
「とうたま、ロザリアはどうなってるの?」
「うん?魔力に変化はない。まだ魂は融合してないようだが」
つまり、ロザリアの魂はまだこの身体に存在しているわけだ。
「おはなち、できない?」
「…私は怯えられていたからな」
父、父、落ち込まない。まさかの地雷でしたか。あああ、しゃがみ込んじゃった。仕方なく丸まった父の背中をナデナデする。
「…今までのロザリアからの予想だけど、人見知りしてるんじゃない?」
「そうね、ロザリアちゃんは人見知りだもの」
兄と母から意見いただきました。
ロザリアさんに、まさかの人見知りされている疑惑。なんだか記憶を探るかぎり、それが正解な気がしてきましたよ。
「ロザリンド…リンならなんとか出来るんじゃない?」
兄の柔らかな微笑みに後押しされ、私は笑って返事をしました。
「なんとかしてみます」
さて場所を移しまして、私の自室に来ています。ベッドの上にはスイとハル。
あ、闇様にはお引き取り願いました。今日大事な用事があるんで、邪魔したら一生無視しますって真顔で言ったら泣きながら出て行きました。
経験上明日にはケロッとしてるんで、明日謝罪します。あと、魔力安定するまで加護不要も伝える予定です。こういうのはゆっくり話せる時にすべきです。
さて、本題に入りましょうか。私はハルに話しかけました。
「きょうせいじゅうたまがつかってたゆめにはいるまほう、ハルならつかえる?」
「ん?今日魔法使ったのも俺だよ。聖獣に頼まれて使ってやったの」
「さりげなーく、自分の手柄っぽくしてたけド、聖獣は闇魔法苦手だから夢に関する魔法は使えないんだヨ」
「え、そうでちたか。ありがとう、ハル」
「おー。んで、夢に入ってロザリア探すんでいいか?リンの夢に繋がってるから、リンの夢から行けるはずだぜ」
「おねがいちます」
いつも通り布団に3人で入ると、私は疲れていたのかあっという間に夢の中でした。
「よ」
ハルの声で目を醒ます。
「寝たのにすぐ起きて変な感じです」
私はまたリンの姿になっています。私の手を引くハルとスイ。スイは大きい方の姿になっている。
「多分こっち」
ハルに導かれ、穏やかな森を抜けて視界が広がると…
…魔王の城がありました。
「なにこれ!」
「城?かな」
首を傾げつつ返答するハル。だめだ、ハルも結構天然だ!
「明らかに拒絶されてませんかね、私」
茨に覆われた魔王城…って魔王は多分居ない。居るのはロザリアのはず。果てしなく拒否を感じるんですが。雷鳴轟いてますが。空気も澱んでいるみたい。
「リンの夢はこの森だから、ロザリアの夢はあの城だ」
「明らかに暗いね。リンの夢と比べて」
スイの言葉の直後に雷が落ちました。
「…聞こえてるんじゃないかな」
「空気も澱んでいるし、ジメジメしてて根暗な性格がよく出てるよね」
雷が落ちました。3連打です。確実に聞こえてる模様です。
「聞こえてるみたい」
「お前、恐ろしい確認の仕方すんなよ」
まったくだ!私のチキンハートが早鐘を打ちましたよ!
スイはニヤッと笑ってみせた。結構いい性格だよね、スイ。
「手っ取り早いし、害意がないって解ってるから危なくはないよ。ロザリアに他人を傷つける意志はないよ」
私をちょいちょい手招きするスイ。茨に私を触れさせようとしながら、わざとらしく大声を出した。
「リンは今魂の姿だから、傷ついたら魂が傷つくかもー!」
茨が一斉に避けた。私が茨にさらに触れようとすれば、更に茨は逃げる。
嫌われては、いないのかな?
「だとすると、何かが怖くて自分を守ってるとかかな?」
でもこんな暗くてジメジメしてたら、余計気分悪くなるし落ちこむ気がするんだよね。
「多分だけど、私の夢が森なのは、スイとハルと私が加護で繋がってるからだよね?」
スイとハルが頷く。
「じゃあ、ここにも届く?スイとハルが加護を与えたのは、リンじゃなくて『ロザリンド』にだよね」
「「ロザリンドが望むなら」」
「お願いします」
「俺の魔法をベースにする。リンはどうしたいかイメージしろ」
「魔力のコントロールは僕がするから、ハルは魔法に集中ね。リン、君の望むままに」
3人で円になるよう手を繋ぐ。右手から魔力が吸い取られ、左から魔力の解放を感じた。イメージしやすいよう目を閉じた。
まず、あの暗雲を風で吹き飛ばす。青空と、雲を分解して虹にする。空にはお日様。
茨は編んでアーチにして、花を咲かせる。どうせなら、城の周りを花畑にしたい。うちの庭園みたいに。
黒いお城は白く、美しい城に。シンデレラの童話に出てくるようなのがいいな
「リン、出来たぞ」
目をあけると、イメージ通りのメルヘンな光景が広がっていた。光と優しい風と緑の匂いに充ちている。
「さっきと全然違うな」
お城は明るい光に照らされ、魔王城的なイメージは一切なくなっていた。
「さて、行こうか」
先程この夢に干渉したせいか、ロザリアがどこに居るのかはっきりと解っていた。
ロザリアは城の搭、最上階にいた。一応マナーかなとノックしてから入室すると、そこには豊満な肉体を持ち、高貴さと妖艶さを持ち合わせた美少女、16歳のロザリアがいた。
チラリと自分の貧相な胸を見た。
「羨ましい」
「いやいや、そこ?最初に言うのそこ??」
いや、ビックリし過ぎるとたまにリアクションが薄くなる私です。ハルは硬直してます。スイも予想外だったのか、ツッコミにキレがありません。
「ロザリア、久しぶり…かな?」
「何しに来ましたの」
「しいて言うならお話しに来ました」
「私に話すことなどありませんわ。私は役立たずですもの。貴女みたいに変えることは出来ない。身体は貴女に差し上げますわ。私は消えていきますから、貴女の好きになさって」
ちっともこっちを見てくれないロザリア。私はそっと彼女の頬に触れた。
「助けてくれてありがとう」
「…は?」
ああ、やっとこっちを見てくれたね。彼女の…最初は違和感しかなかったけど、この1ヶ月で見慣れた紫水晶の瞳と目を合わせたまま、言葉を続けた。
「あのまま、後悔しかないまま死ぬはずの私を、助けてくれてありがとう」
「それ、は」
ロザリアの姿が本来あるべき姿に戻っていく。
「ずっとお礼を言いたかった。私に居場所をくれてありがとう。貴女の家族に受け入れてもらえて、私は貴女からたくさんたくさん幸せを貰ったよ」
「私、貴女を助けたの?」
「そうだよ。だから今度は私の番」
「え?」
「ロザリア、貴女を助けたい。私はずっと貴女の味方。貴女の願いはなあに?」
「私、私は…誰かを助けられる人になりたい」
小さなロザリアの瞳から涙がこぼれた。
「私もだよ。私も誰かを助けられる人になりたい。あと数年しか生きられないと知って、大事なものはつくらないと決めた。でも、最期に後悔した。なんて無意味な人生だったんだろうって。誰かのために、せめて何かしたかったなって。そんな時、貴女が私を呼んでくれた」
「…リン」
ぽろぽろ涙をこぼすロザリア。
「消えちゃうなんて言わないで、一緒に私達の願いを叶えようよ。ねぇ『ロザリンド』になってくれないかな?私はロザリアと一緒に居たい」
「うん!私、私も!私もリンと居る!ロザリンドになる!!」
ぎゅうっと私に抱きつくロザリア。うん、可愛い。超可愛い。
「顔、顔」
「残念なことになってるよ、リン」
仕方ありません。ロザリアが超可愛いからデレデレとしてしまうのは仕方ないんですよ。
そして私達は今この瞬間に、本当の意味で『ロザリンド』になれたのです。
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