ホラー映画は割と途中でジャンル変わる(偏見)
「映画館のCMって地元の特色出るよなぁ」
「あー、やたら自動車教習所のCM出る所とか?」
「そうそう。後スクリーンを使ったキャンペーンっての見た事ある」
「え、何それ?」
「スクリーンを使ってメッセージ送るってやつなんだけど……っと、そろそろ始まるか」
流れる映像を観ながらダベっていると、劇場が暗くなり始めた。そろそろ時間になったようだ。ちなみに席はちらほらと人が居る程度。カップルシートは何組かいた。男同士っていうのが三組いたのは驚いたが、まぁ料金の事を考えるとわかる。
しかしこの客入りを考えると、こういうキャンペーンでもやらないと人が来ないってのがあるんだろうなぁ。いやならホラー特集ってのもどうかと思うけど。客層あってるんだろうか?
「そういや何でこのホラー映画観ようと思ったの?」
ふと疑問に思った事を御崎さんに聞いてみる。
「んーと、動画サイトでたまたま観た予告が面白そうだったんだよね。別にホラー好きってわけじゃないんだけどさ。偶に妙に惹かれる、普段観ないようなジャンルの映画って無い?」
「わかる」
そんな事を話している内に、本編が始まるので口を閉じる。
――まず一本目。
とある若者達がドライブ中、何者かに狙撃されるという恐怖を描いた内容だった。
遮蔽物も無い炎天下の中、何処からかずっと狙われ続けるというもの。んで撃たれた描写なんかが結構グロい。人体の大穴が開いた部分とか、普通に映してくる。
「んで、これホラーってジャンルでいいのかね?」
「いいんじゃないの? 怖いは怖かったし」
「まぁ、確かに怖いよな」
どっかから狙撃されるんじゃないかって狙われ続けるのは怖い、うん。後アクションで慣れてたけど、撃たれた死体ってグロいんだよね普通は。
「後最後のアレってバッドエンドでいいのかな?」
「バッドエンド……じゃないか? 最後あんなんだし」
「でもなんていうか、笑っちゃったよ。あの最後」
「わかる。俺も『銃あんな風に使ったらそりゃそうなるよなぁ』って思った」
よく銃身長い銃とか振り回して鈍器代わりにしてる映画あるけど、暴発もするよね普通。
「さーて、二本目二本目。次は何味にする?」
目を輝かせて売店へと向かう御崎さん。まだ食う気か。
「次はバター醤油味で」
俺もまだ食う気である。だって折角サービスでついてくるんだもの。
勿論映画開始直前には半分を切っていた。
――二本目は
何かこう、設定的に色々各所から苦情が来そうな実験場だった場所を根城にしている人食い殺人鬼たちに、偶々通りかかった一家が襲われる、というもの。
「しかしこう、アレだね。こういうモンスター系ホラーって最後の方ってアクション映画張りにアクション入ってこない?」
「それはちょっと偏見入ってないかね御崎さんや。いやまぁ解るよ? 海外系のモンスターってとりあえず銃使って退散できるからね?」
「最後いきなりアクション映画になったかと思ったよ。私『あれ、ジャンル間違えたっけ?』って」
「ただその後脳漿ぶちまけたシーンで『あ、そうだこれスプラッタだったっけ』って思い出した」
「わかる」
さて、次は三本目。途中で休憩が挟める程度に間隔が空いていたり、観ている作品が割と短めなのでそこまで疲労感は無い。ただ流石に短時間連続ポップコーンは結構クる物がある。
「あ、すいませーん。バター醤油とキャラメルのハーフで」
既にポップコーン頼まれている件について。あ、飲み物は炭酸系でお願いします。
――三本目だが、今度はグロ系ホラーであった。
若者達が事故で森の奥深くに不時着し、そこに住む部族たちに捕らえられる。そしてその部族たちというのが食人の風習があってさぁ大変、という内容。
んで今、スクリーンでは若者の一人が生きたまま解体されております。
目抉りだされて食われて、舌切り取られて食われて……血やら悲鳴やらが飛び交っておりますです。
気分が悪くなる、という程ではないが思わず顔を顰めてしまう。俺は特別ホラーが苦手、というわけではないが好き好んで観るわけではない。
先程の二本はそこまで直接的なシーンが無かった――いやまぁ臓物とかあったけど何て言うかアクションの延長みたいなもんに感じられたから平気だった。だがこれは一方的に蹂躙される展開で、悲惨さもあってちょっとキツいな。こう痛さが違うというか。刃物で斬られるシーンってのは生々しくて苦手だったりする。
……そういや御崎さんはどうなんだろう? ふと横を見てみる。
「おぉ……」
あ、平気だわこれ。何かワクワクした目になってる。気分悪くなっているとかそういうのは皆無っぽい。
――しかし、よくわからん話だ。いや、映画じゃなくて、この状況が。
そんな事を考えていると、御崎さんの表情がまた変わっていた。
「ほわぁ……」
物欲しげというか、え、何その表情? さっきポップコーン眺めてた時のような顔してるんだけど?
一体何のシーンが? とスクリーンに目を向ける。
――そこに映っていたのは、部族の食事シーンだった。肉の塊を切り分け、貪り食っている。
肉の塊は、さっきの被害者だろう。解体され、こんがり焼かれて料理されてしまい、見る影もない。
――そう、しっかりと料理されているのだ。さっきは族長っぽいのが切り取った体の部位をそのまま食っていたのだが、今は料理されている物を部族が食べているのだ。
――その料理が、やたらと美味そうに見えてしまったのだ。
◆ ◆ ◆
――映画が終わり、俺達は無言で劇場を出た。時刻はもうそろそろ夕方になりそうな時間である。三本も観ればそうなるか。
「川西さんや」
芝居がかった口調で御崎さんが言う。
「何だい御崎さんや」
俺もそれに乗る。
「今日、この後時間はあるかね?」
「幸運な事に、フリーでございやす」
「そうかい。私はこれからバイト先にお財布を取りに行くんだが、その後食事でもどうだい?」
「断る理由がございませぬ……時に御崎さんや、何処の店に行くか決めておりますかい?」
「それが決まってはいないのですがね、食べたい物があるんですよ」
御崎さんのバイト先は先程聞いた。ここからは電車を利用しないとならない、ちょっと離れた場所だ。
「御崎さんや」
「何だい川西さんや」
「実はですね、御崎さんのバイト先の駅で――シュラスコ食べ放題の店を知っているのですが」
「よくやった。褒めて遣わす」
今夜の晩飯、決定。
※一応観てる映画の元ネタはあるんですが、うろ覚えで書いている所もあったりします。
二人で観る銀幕は 高久高久 @takaku13
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