第1000話 ダメージも色々あり
「京都ってマジでドロドロで怖い世界だったんだね。
家族や奥さん同士での争いに呪詛を使うってヤバすぎ」
とても美味しいオムレツとケーキを頂き、満足して帰路に着きながら新幹線の中で思わず碧に呟いた。
まだ午後の早い時間帯なせいか、車内も比較的空いていて周囲に人が殆どいないから大声を出さなければ何を話しても大丈夫だろう。
呪詛だなんだかんだって話してるのを聞かれたところでイタイ二人組と思われるだけだろうし。
流石に顔の画像付きで録画されて勝手にどこぞの掲示板に暴露されるなんて事はないはず。
・・・一応緩い認識阻害の結界を周囲に張っておこうかな。
うっかり話に気を取られてて近くに座った人に気付かなかったなんてことになったら面倒だ。
別に退魔師とか呪詛の話を聞かれて掲示板にアップされてもそれ程痛くはないし、炎上しすぎたら退魔協会か国の方で対処してくれるだろうが、私らの顔を勝手にアップされたら困る。
携帯で気が向いた時にいつでも写真を撮れる様になったのってカメラを持ち歩かなくて済むから便利なんだけど、誰でも下世話な週刊誌の記者モドキになれる危険性もあるから面倒だ。
アップされた後に白龍さまの天罰が降っても、ネットに一度晒された情報っていうのは完全に消去するのが至難の業だって言う話だからね。
安全対策は常に前もって講じておく方が無難だ。
「武力が無かった連中だからねぇ。
血と過去からの知識の蓄積で戦うしか無かったって言うのもあるんでしょ。
まあ、京都はあちこちに結界がありまくるせいで呪詛も効きにくいけどね。
ある意味、地方の大名家に嫁いだらみみっちい呪詛でも意外と効果があって大喜びだったのかも」
乗る直前に買ったアイスをガシガシとスプーンで削りながら碧が返した。
あ〜。
確かに結界があると色んな術が効きにくくなるね。
呪詛もそれに当て嵌まるか。
「蟻はまだしも、Gや鼠を送り込めたら昔なら感染症や食中毒で相手を殺せそうな気もするけどね」
殺す様な呪詛は対価が大きいし返されたら危険だが、虫や小動物を送り込むだけなら対価は小さい。
結果的に死んでも呪詛の直接的な効果じゃないから、過去の医療とか衛生管理のしっかりしていなかった時代には有効な暗殺手段だったかも。
かなり気の長い、確率の低めな方法ではあるが。
「他にも雨漏りが起きやすくなる呪詛とか、嵐で屋根が吹き飛びやすくなる呪詛とか、歩いていると鼻緒が切れて躓きやすくなる呪詛とか、色々あったらしいよ?
外での催し物の際に鳥の糞が落ちてくる呪詛って言うのが物凄く人気があったって古い資料に書いてあったな」
碧が笑いながら教えてくれた。
うわぁ。
公家ってかなり貧乏だったって話だから、雨漏りとか屋根が飛ぶとか、地味に痛かっただろうなぁ。
それとも、戦国時代が終わって江戸時代になったらもう少し公家達の経済状況も改善したのかね?
とは言え、帝とか他の公家の前で和歌や俳句を披露する様な催し物の際に良い(悪い?)タイミングで鳥から空爆を受けたら色んな準備が台無しで、朝廷内での昇進とかにも地味に響きそうだ。笑っちゃう様な呪詛だけど、重要性は高かったのかも。
「でもまあ、戸建ての住民を追い出して地上げしたい場合なんかには凄く役に立ちそうな呪詛だったよね。
普通の蟻じゃなくてシロアリが湧く様にしたら更に追い出しに向きそうだし。
とは言え、大元の総領である母親に掛けるところがアホすぎるけど」
ちなみに私らがお暇する直前に依頼主の所に電話(通話?)が掛かってきて、娘さんの物凄い悲鳴が聞こえてきた。
『返すなんて酷い!!!』と言う悲鳴に、良い年した中年女が何を言ってんの??と思わず呆れた。
素敵そうなご婦人だったのに、残念ながら子育てでは失敗したようだね。
総領として忙しすぎて時間が足りなかったのか、子供の性格が生まれつき悪すぎたのか。
金があると却ってちゃんと苦労して育たないせいで、変に権利意識が膨らんだバカになりやすいのかな?
子供があれ一人じゃ無いことを祈っておこう。
子育てってある意味ギャンブルだねぇ。
取り敢えず。
娘さんには依頼主があっさり『クルーズ船にでも乗って世界一周旅行にでも行けば良いんじゃない?もしくはホテルの高層階に引き篭もるか』と言っていた。
ホテルに数ヶ月滞在って高くつくだろうから、タワマンの高層部の部屋でも借りたらどうかね?
出歩くのは諦めた方が良いかもだけど。
最初に聞いた時はどんだけホラーなんだとギョッとしたが、意外と平和な呪詛返しで良かった〜。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ちょっと短いけどここでこの章は終わりにします。
明日はお休みですが、明後日からまた楽しんで下さい!
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