第155話 祝賀会
「お、高木君もランクアップしたんだね、おめでとう!」
機嫌の悪い碧と一緒に来たランクアップ祝賀会の会場に入ってすぐ、知り合いの姿が目に入った。
高木 蓮である。
まだ高校生の筈だから合コンという協会の裏の目的には若すぎる気がするが、流石にそれを表に出す訳にはいかないから差別する事なく招かれたのかな?
まあ、もしかしたら若い女の子も居るかも知れないし。
「あ、こんにちは、長谷川さん。
受付のオネエさんやオバサンに媚びを売りまくってじゃんじゃん仕事を回して貰いましたからね。
やっとランクアップしたので、これで学業に差し支えない程度に仕事を抑えても食っていけそうです」
蓮少年がにこやかに何とも世知辛い事を教えてくれた。
お母さんと弟と妹がいるんだよね?
お母さんも何か仕事を見つけたんだろうけど、元専業主婦で子供の面倒も見る必要がある母親が出来る仕事はそれなりに限られているだろうから、蓮少年が一家の大黒柱にならざるを得ないのだろう。
「そっかぁ。
まあ、成績が急落してお母さんが呼び出されたたり、周りの子に『お父さんを亡くして大変なんだね』って同情されないよう、程々に頑張ってね」
まだ若いのだ。
退魔師として頑張りすぎて学生としての時間を短く切り上げるのは勿体無い。
はっきり言って、今までの貯金を切り崩して節約気味な生活になるとしても、最低でも高校時代は学生を本分として生きていく方が人生が豊かになると思う。
赤の他人で、一家に助けの手を差し出すつもりも無い私が口出しするような事じゃあないけどね。
蓮少年と少し雑談をした後、指定されていた席へ向かう。
丸いテーブルに各自ネームカードが置いてあった。
しかも自分が座る席を見つけられるだけでなく、テーブルの他の人も分かるように両面に名前が書いてある。
流石に各自の家の情報とかは無かったが・・・碧は『要りますか?』とそれとなく協会の職員に同テーブルの参席者の事前情報が欲しいか聞かれたらしい。
ぽっと出の私は相手の家柄なんて気にしないだろうと思われたのか、情報提供のオファーは無かったが。
つうか、同席者が真面目に結婚相手を探しているなら私の情報(ぽっと出だけど藤山家の愛し子と組んで働いている)が協会から流れているんだろうなぁ。
ダイレクトメールとか詐欺集団に個人情報を売られるのは問題外だが、頼んでもいないのにお見合いオバサンみたいな事を勝手にやっている退魔協会に私の情報がばら撒かれるのってかなり不快なのだが・・・まあ、家柄を気にするような相手にナンパされて後から『君では僕の家には合わないね』と上から目線に切られるよりはマシか。
自分にはそんな事を言うような男をちゃんと見極めて避けられるだけの洞察力があると思いたいが、何かの間違いで一目惚れしちゃったら目が曇る可能性はあるからね。
一応変な魅了の術を掛けられない様に精神防衛の術は私と碧の両方に掛けてきたが、術に関係なく異性のロクデナシに引っ掛かる人間は男女問わずどの世界にでもいる。
自分が惚れっぽい人間だとは思わないが、恋って言うのはコントロール出来ないモノらしいし。
開会の挨拶前に早い目にテーブルに行く様、入り口のそばの広間っぽいスペースから押し出されたのだが、お陰で声を潜める必要なく同席者とお互いに自己紹介が出来た。
「賀茂家分家の次女、綾川 怜子です」
「綾小路 実です」
「小笠原 結菜です」
「土御門家分家の三男、倉橋 隆明です」
「長谷川 凛です」
「斑鳩家長男の玖珂 颯人です」
何番目の子かってそんなに重要なの??
多分、わざわざ自分が次女なり長男なりって言っている人たちは旧家の人で、家柄にそれなりに拘りがある人たちなんだろうなぁ。
ぽっと出の私と同席にする様な、家柄的な意味では二番手であろう出席者の半分が家柄拘り派だとは・・・ちょっと先が思いやられるかも。
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