第148話 お守りの中身
「ちなみに、お守りの中は普通に符の紋様を描いておいても良いのかな?
それともお守りっぽい文字を書く必要がある?」
お守りに使う魔法陣に関して考えながら、碧に尋ねる。
文字が必要なら水に魔力を込めて魔法陣を描きその上に偽装の文字を書けば良いが、流石に偽装の文字とは言っても適当に印刷する訳には行かないだろうから筆でそれっぽい文字を書くとなると面倒だ。
軌道に乗ったら習字の上手い人をバイトにでも雇って書いて貰っても良いだろうが、最初はコスト節約の為に自分でする必要がある。
だったら魔法陣をそれっぽい紋様に偽装するだけで済む方が手間が減るんだけどなぁ。
「東洋っぽい紋様ならそれで良いんじゃ無い?
あんまり露骨に魔法陣っぽいのは微妙だけど」
碧が答えた。
確かにねぇ。
アニメに出てくる様な魔法陣が神社で売っているお守りの中に入っているのはちょっと場違いだろう。
偽造の部分と併せて、魔法陣を東洋の紋様っぽく偽造するスタンプでも作ってみようかな。
印刷するよりは手書き感が出るけど時間は節約になる筈。
ゴム版のスタンプ程度だったら比較的簡単に出来るだろう。
まあ、まずはいくつか試作品を作って誰かに効果を試してもらわないとだけど。
「適当に作ってみるから、後で意見を聞かせて。
そう言えば、誰か安眠のお守りを試してくれる不眠気味な知り合いっている?」
現代社会では肩凝りに困っていない人の方が少ないくらいだろうが、寝付けなくて困っている人ってどの位いるんだろう?
ある意味、社会人になったらストレスで中々寝付けなくなる人も沢山出てくるだろうけど、今はまだ気軽な大学生だからねぇ。
大学の友人との付き合いでは不眠症に悩んでいるなんて話題は出てきた試しがない。
「う〜ん。
考えてみたら微妙だね。
ちなみに、安眠の符って寝る時にベッド元に置いておかなきゃいけないの?」
碧が僅かに首を傾げて聞いてきた。
「暗くなった部屋で半径1メートル以内に寝転がっている人が居たら起動する魔法陣にしようと思うから、ベッドのそばに鞄を置くなら鞄につけていても良いけど、安眠祈願のお守りだったら持ち歩くんじゃなくってベッド元に置かない??」
前世で魔術学院の友人の為に魔法陣を刻んでちょっとした安眠用の魔道具を作った事がある。
卒業してからも偶に作成を命じられた事もあったし。
大抵の王族は深酒と性交で眠りにつくのが多かったが、元々酒は不眠症の対応としてはあまり適していない。
寝付いてもまた暫くしたら目が覚めてしまうのだ。
その点、安眠の魔法陣だと部屋が暗いうちは効果が続くので意識不明になるまで飲むのを好まないタイプは魔道具を使っていた。
王族ではそう言うのは少数派だったけどね。
毎晩意識不明になるまで呑んで二日酔いや肝臓の疾患を白魔術師に癒させるなんて無駄の極みだが、そういう無駄も連中は当然の特権だと思っていたから。
それはさておき。
魔石を使う代わりに雑草と言うのが何とも微妙だが、問答無用で条件を満たしたら眠らせる魔道具ではなく、『眠りやすくなった・・・かも?』程度で良いとなったら雑草程度で丁度いいんだろう。
分解して雑草部分を取り去られなければ。
まあ、糊でしっかり紙を貼り付けて、符を破かなければ雑草が取れない様にしたら良いかな?
魔法陣を破いたらどちらにせよ効果が消えるから、雑草が有ろうが無かろうが関係なくなる。
「お守りって持った事が無かったから考えてなかったけど、確かに安眠のお守りを持ち歩いて授業中とか会議中の寝ちゃったら困るよね」
碧が笑いながら言った。
「考えてみたら大学の知り合いにお守りの効果の検証に協力してくれなんて持ちかけるのも微妙だし、それこそ青木氏が不眠症だとでも言うんじゃ無い限り、実家の方の知り合いで誰か居ないか調べて貰ってあっちで雑草をゲットした際にテストもするしかないね」
いつのまにか碧の太腿に顎を乗せて寝ていた源之助の背中をそっと撫でながら碧が言った。
「確かに。
でも、青木氏とか、彼の知り合いの不動産屋で誰か居るかも?
現実でお祓いの必要性を実感している人たちだったら効き目のあるお守りの存在も信じてくれるだろうし、長期的な購入先になってくれるたら一石二鳥だね」
社会人なのだ。
それなりにストレスが溜まって不眠な人もいても良さそう。
とは言え、青木氏本人はまだしも、部下がどの程度祟りとか怨霊とかを信じているかは不明だが。
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