第119話 雷の幻獣や妖精は?

「そう言えば白龍さま、雷とか電子を餌にしたり自由に扱える幻獣とか妖精っていないのでしょうか?」

ふと思いついてサラダのお皿に手を伸ばしながら碧の後でセロリを齧っていた白龍さまに尋ねる。


白龍さまは必ずしも家にいても顕現化していないが、何故かセロリが好きでセロリスティックを出した日には必ず摘み食いしに現れる。


『ふむ。

雷を操る幻獣はいるが、それこそ近くに来るだけでお主らの大切している『すまほ』や『たぶれっと』を壊してしまう存在ぞ?

破壊の手伝いが必要ならば声を掛けるのは可能じゃが、壊さずに使いたいのならば幻獣は向いておらぬな』

1本セロリを齧り終え、次のセロリに手を伸ばしながら白龍さまが答えた。


確かに幻獣は基本的に強烈なエネルギーを内包した存在だ。

雷を使う幻獣なんて、ある意味常に周りに落雷を絶えず落とし続けている状態がデフォルトだと聞いた気がする。


成獣になってしっかり己の力をコントロール出来るようになったら側に行っても感電死しない程度まで穏やかになる事もあるものの、それでも触れたらバチっとくるらしいからデリケートな情報端末なんて近寄るだけで中の情報が消されてしまいそうだ。


「じゃあ、妖精か妖怪は?」

碧が聞く。


妖精だったら助けてくれそうだけど、妖怪だったらなんかそれこそウィルスを広めそうな語感だなぁ。

まあ、ヨーロッパでは妖精も大多数は妖怪と同じで悪戯や悪さをする存在らしいが。

日本だって座敷童子は妖怪だがあれは一応良い事の方が多い存在な筈。

妖精も妖怪も地方的な言葉の違いだけで、実質本質は似たり寄ったりなんだろうな。


と言うか、今住んでいるこの地球をはそれこそ人類が各地で文明を築いた時代で既に魔素はかなり抜けてスカスカ状態だったらしいので、幻獣界との境界に近く以外では妖怪の様な存在がそうそう物理的な害を成す事は出来なかった筈なのに、妖怪や妖精の伝説って人間を酷い目に合わせる話がやたらと多い。


あれって結局人間の殺人鬼や追い剥ぎとかの行動が妖精や妖怪のせいにされているだけで、実質殆どは冤罪なんだろうなぁ。


まあ、現実に白龍さまの様な強力な存在も居るのだから悪さを実際にする鬼や妖怪もゼロでは無かったんだろうけど。


『妖怪も妖精も力場に余剰エネルギーが有れば生まれてくる可能性が高くなる存在じゃ。

最近はお主らの言う『でんき』とやらのエネルギーが増えたから、そろそろ『でんき』から妖精なり妖怪なりが生まれておっても不思議はないと思うぞ?』

ぶっといセロリをまるでポッキーの様にあっさりポリポリ噛み切りながら白龍さまが答えた。


「へぇぇ、そうなんだ。

生まれてもおかしくないなら、高圧電線とか発電所とか変電所の側で探してみたらどう?」

照り焼きにした鳥のモモ肉をナイフで切りながら碧が提案した。


「う〜ん。

そうだね。

取り敢えず今週末にでも、紅葉を見に行くついでに水力発電所にでも行ってみるか。

碧も来ない?」

ダムの近辺はそれなりに辺鄙なところだから車がある方が便利だ。


「行ってみたいんだけど、源之助を置いていけないから無理〜。

来年もう一度探しに行くなら付き合うよ」


あっけなく断られてしまった。

まあ、そうなるとは思っていたけどね。

ちなみに、流石に居るかどうかも分からない存在を探しに毎年発電所へ行くつもりはないぞ。

とは言え、お花見や紅葉狩りのついでだったら少し高圧電線や発電所を見て回ってもいいけど。


何か丁度いい発電所見学ツアーでも無いか、探してみるか。

電子の妖怪みたいのがいて、使い魔に出来たらネット検索とかウィルス退治とかを仕込めるかも知れない。


今世では普通の生き物が死んだ際に残った霊しか使い魔にした事は無いが、前世では下位の精霊未満な精霊モドキを躯体に憑かせて使い魔にした事はある。

それなりに魔力を与えないと芸を仕込むどころか意思の疎通すら難しいのであまり効率は良くないのだが、その代わり精霊モドキはその属性の事象に対してはかなりの能力を発揮した。


もしも電子の精霊モドキが生じていたら、ネットや電子機器をかなり上手に操れる使い魔になるかも知れないんだよね〜。


意思の疎通さえ出来る様になったら。






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