第41話 合宿だ〜!:クルミちゃんぱわーあっぷ?

今日は除虫菊を育てておいてくれたじーさまが前もって刈り取って乾燥させておいてくれた花から子房を集める作業を午前中にやった。

作業効率が分からなかったので、時間を区切って出来上がった分だけ作ろうと皆で決めてあったのだ。


午後は実際の蚊取り線香の製作作業。

本来は子房をゴリゴリ摩り下ろして除虫菊パウダーを作った上で糊の役割を果たすタブ粉とやらと混ぜるらしいのだが、『糊っぽければ良いはず!』という事で適当に実家暮らしの部員の家に残っていた古い餅米を水にさらした後に炊いて乾かし、ブレンダーで粉々にする形で準備しておいた粉を代用してみた。


タブ粉はタブの木の樹皮を粉にした物らしいのだが、ネットで探しても見つかったのは50センチ程度の苗(10本5000円弱)か、ひょろりと2メートルぐらいの高さで5万円近くする様な植木のみ。

日本の本州にも自生しているらしいが・・・見つける手段が無いし、見つかったところでどうやって木にダメージを与えずに樹皮を採取するのかも分からなかったので、取り敢えずメインは除虫菊の子房、タブ粉は単なる都合のいい糊なのだと割り切って代用品を使う事になったのだ。


ブレンダーで粉にしたのに水を足して練り練りしてみたら、それなりに糊っぽくなったし。


ゴリゴリして作った子房の粉と米糊っぽい粉を混ぜ、濡らして練り練りした後に適当にぐるぐる渦型にしたり、お香みたいな形にしたりと色々工作を皆で楽しんだが・・・ちゃんとあのぐるぐる渦が自立するかは明日分かるだろう。


そんなこんなで作業が終わり、連日の労働に疲れた私は近所の温泉で個室型露天風呂を借りて碧とゆったりしていたのだが・・・突然、白龍さまが思い掛けない提案をしてきた。

『そう言えば、滝の辺りで良さげな石なり木片なりを拾ってお主の使い魔のぱわーあっぷに使ってはどうじゃ?

特にあの分体は現時点の霊力ではあまり実用性がないじゃろう』


「この子ですか?」

クルミの本体が憑いているクマは防犯も兼ねて鞄にストラップの形で付けたままだが、分体は収納に入れてある。

それを取り出してひっくり返したタライの上に置いてみた。


『うにゃにゃ?!』

突然出されて驚いたクルミの分体がタライの上で跳んだ。

そのままお湯の中に落ちそうになるのを慌ててキャッチしてタライの上に戻す。


「白龍さま、碧、猫の霊に手を貸して貰っている使い魔クルミの分体です」

ついでに見守っている一人と一柱へクルミを紹介する。


クルミは鞄に付けっぱなしにしているストラップに宿っているので、実はどちらも見たことはあるのだが・・・何とはなしに紹介していなかったのでずっと沈黙を守っていた。

これからはちょっと賑やかになるかもなぁ。


『クルミちゃんなのにゃ!

よろしく!』


ひょいっとボタンの様なクルミの分体が飛び上がって一回転した。

お辞儀のつもりなのかな?

猫の霊の癖に、部屋で色々動画を見ているせいか妙に人間くさい動きをするようになってきた。


「あら、猫ちゃんなんだ?

こんにちは、クルミちゃん。

良いなぁ、私も使い魔って作れるかな?」

碧がクルミに挨拶した後、私に聞いてきた。


『儂の眷属をつけてやろうか?』

私が答える前に白龍さまが割り込んだ。


どうやらクルミの挨拶は白龍さまからは流されたっぽい。

まあ、霊のランクが文字通り神と野良猫レベルで違うからなぁ。


パワーアップを提案したのも、使い勝手を良くして碧の役に立てというのが本心だろうし。


「う〜ん、白龍さまの眷属に、犬の子いる?

猫でもまあいいけど・・・トカゲや蛇はちょっと嫌なんだよねぇ」

碧がズバッと答えた。


あ〜。

気持ちは分かる。

トカゲはまだしも、蛇の使い魔はない。

でも・・・それは白龍さまに言っても良い言葉なの??

ミニサイズの白龍さまって、小さな脚に気が付かなかったらモロに蛇だよね?

宙に浮いてるけど。


『犬猫の眷属は居らぬが・・・どうしてもそちらが良ければフェンリルか白虎の眷属を奪おうか?』

ちょっと困ったかのように頭を傾けて白龍さまが尋ねる。


「略奪愛は趣味じゃ無いんだよね〜。

鳥は?」


『空を飛ぶモノは儂の眷属じゃ』

白龍さまが胸を張って答える。


「じゃあ、ふくふくな可愛い子が良いかな。

まあ、カッコいい鷹っぽいのも否定しないけど。

やっぱり知り合いの眷属を奪うより、最初から白龍さまの子の方が良いと思う」

碧があっさり犬猫を諦めた。


まあ、変な事をリクエストして幻想界で神様レベルの存在同士の喧嘩なんぞを引き起こしてもヤバそうだしね。


『うむ。

では、風呂からあがったら境界へ行こう。

ついでに良さげな素材をそのクルミとやらの為に選べば良い』

白龍さまがこちらの方に向いて付け加えてくれた。


話が逸れて忘れられたかと思ったけど、ちゃんと覚えていてくれたか。


さて。

どんな素材が良いかねぇ。














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