第31話 符作成:実践!

あけましておめでとうございます!

今年も宜しくお願いします


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「あった!」

パラパラとラミネートした符の見本を捲っていた手が止まり、碧が満足げな声を上げた。


「何の符?」

何とも判読出来ない文字が書かれているが、紋様ではなく文言のようだ。


「スリプルの符!

ひいひいお祖父さんの弟さんがデバフ系の術しかできない人で、基本的に刀に霊力を込めて戦うタイプだったんだけど、ひいお祖父さんの妹さんの夜泣きがあんまりにも酷いんでどこぞの怪しげな山伏から安眠用の符を買い取って死ぬ気で解読したんだって」

符を捲って裏に貼られたメモを確認しながら碧が応じた。


夜泣き対策にスリプルかぁ。

確かに、考えてみたら寒村時代には私もどうしても疲れた時には息子や娘に使ってたわ。

強く効き過ぎると赤子には危険だと魔術学院では習っていたので、最小限の威力にして本当に疲れ果てた時だけにしたけど、あれは便利だった。


考えてみたら、出力を最小限に絞った魔道具を作れば良かったかも。

最低限の出力しか要らなかったんだから、あの時代のショボい素材で作るので丁度いいぐらいだったのに。


それはさておき。

実践だ!!

「で、符を作るにはこの和紙にこの墨を使ってこの文字をなぞれば良いの?

霊力も込めるんだよね?」


霊力(私の場合は魔力だが)は基本的に墨から補給でも可と言っていたが、ある程度は作成する人間が込める必要があるのでなければ誰でも符を作れるだろう。


「あ、墨は自分の霊力を込めながら磨らないとダメなんだ。

凛は私のを使えないから、この墨はこっちに避けとこう。

そんでもって文言は、なぞるんじゃなくって理解して書く必要があるの。その代わり、理解していれば普通の標準文字で大丈夫だよ」

碧が小さなガラスの容器を取り出して硯から墨を移し始めた。


「この草書体をなぞらなくて良いのは嬉しいけど、なんて書いてあるか分からないから文言を読み上げてくれる?」


「うっ」

碧の手が止まった。


「取り敢えず魔力を込めて墨を磨ってるから、解読よろしくね〜」

心得5箇条を読める様になったと自慢していたのだ。

大変だろうが何とかなると期待してまっせ。


墨を移し終えた硯を洗いに台所へ行き、戻ってきて碧のやっていた手順をなぞって新たに墨を磨り始める。


小学校の時に授業で墨を磨った事があったけど、この単調な動きって意外と魔力を込めやすい。

とは言え、水を入れすぎたせいでちょっと硯が溢れそうになってしまったが。


「あ、霊力さえ込もれば色は効果に関係ないから。

取り敢えず、試してみようか」

墨と悪戦苦闘していたら、どうやら解読が終わったらしき碧が声を掛けてきた。


「色が関係ない上に文言や紋様を隠す必要があるなら、色なしの水でやった方が良くない?」

魔力を込めた水で必要な紋様や文言を書き、それが乾いたらローラーで紙全体に同じ水を塗っちゃえば偽装工作もごく単純なので済むし手っ取り早いだろう。

何だったら偽装工作用の模様の版画でも作っておいて、プリントしてしまっても良いのでは無いだろうか?


「まあねぇ。

でも、純粋な水だと霊力を込めにくいから、ウチの近所で作った墨を使った方が有効期間が安定するんだよね。

符の紋様や文言の機密保持も、最近ではそこまで重要では無いから安定性の方が重視されてる感じ?」

ちょっと首を傾げながら碧が答えた。


確かにどうしても盗みたい場合、今なら盗聴器とか隠しカメラで色々と情報を抜けそうだ。

まあどちらにせよ、偽装方法を考える前にまずは符の作成に成功しなくては。


「じゃあ、挑戦してみよう。

文言はなんだったの?」


「『夜の帷に身を任せ、眠れ』だった。

・・・多分」

符の上を指で指しながら碧が答える。


「へぇ、意外と短いね」

まあ、考えてみたら符のサイズなんて高が知れているのだ。

短くて効果のある文言が重要になるのも当然か。


筆を構え、和紙に向かう。

習字なんて小学校以来だ。

まともに書けるかかなり不安がある。


そっと手から魔力を筆に通す様な気持ちで碧に教わった文言を書き始める。

「あ。

その『眠れ』の前に『読点』入れるの?」

文の流れとしてはあそこで一息入れる読点は必要だが、符には読点っぽいものは無かった気がする。


「あ、符に句読点は無いよ!」

と言う碧の返事に、そのまま文言を続けて符を書き終える。


『眠れ』と書き終えた時に、魔力が和紙に定着した微かな感覚があった。

魔道具に魔法陣を刻み込んだ時と同じような感覚だ。


「出来た!・・・気がする。

どうかな?」

符を手に取り、碧の方へ差し出した。


「うんうん、良いと思う。

・・だよね?」

碧は受け取った符を暫し見つめた後、今度は白龍さまの方へ差し出して確認した。


・・・最初から白龍さまに見せた方が早かったかも。

でもまあ、教えてくれているのは碧だ。彼女に差し出すのが筋だろう。


『うむ。

問題なく眠れるじゃろう』


良かった。

取り敢えず、日本式魔道具である符を作れる事は判明した。


「おっしゃあ!

じゃあ、次は他の元素系や回復系の符を試してみよう!!」














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