第17話 ルーラとかインベントリは?

「そう言えば、陰陽師やかんなぎや西洋魔術系の術師って、ゲームみたいなルーラとかバイギルドとかファイアボールとかスリプルとかヒールとか、どの程度出来るの?

私はこないだみたいに吐き気を催させるような精神的な影響をちょっと与えるのと、悪霊を追い払ったり友好的な動物霊に協力してもらって使い魔を作る程度しか出来ないんだけど、誰かにちゃんと教わったらもっと出来る事が増えると思う?」

かなり出展のゲームがバラけるが、思いついた魔術を適当に挙げていく。


適性の制約がこちらでもあるのか、非常に興味があるところだ。

もしも訓練さえすれば出来る事が増えるなら、今後(来世も含めた!)の為に例え後から煩く口出しされるにしても陰陽師系のところだろうと弟子入りする価値があるかも知れない。


勿論可能ならば後から干渉してこない相手から教わりたいが。


もっとも、ルーラは現実的には難しい気がする。

転移に関しては必要な魔力量が桁違いなのだ。

魔素が豊富だった最初の前世でも、自力だけで出先から転移で帰宅なんて出来る時空魔術適性持ちは少なかった。

ただし、時空魔術の魔道具を作れば魔石等から魔力を補充できたので、使用料は馬鹿高かったものの主要都市間では転移網が整備されていた。


寒村時代は辺鄙過ぎてそんな魔道具は話題にも上らなかったが、あの魔素の薄さでは例え魔物が実在したとしても必要な魔石を集めるのは至難の業だったのでは無いだろうか?


魔素が薄く、魔石持ちの魔物も見当たらない現代日本では言うまでも無い。


それとも氏神さまみたいな超越した存在が手伝ってくれたら転移で仕事先から帰るのも可能だったり?


そんな事を考えながら尋ねたら、碧が微妙な顔をした。

「あ〜。

ルーラは無理だけど、雷とか炎で攻撃する符を使えば、色々と可能ではあるよ。

ただしちゃんと効果がある符はめっちゃ高いけど。

しかも何か壊したら符の使用者が損害賠償責任を負うから、攻撃系の符を使わなくても悪霊を追い払えるならそのままが良いんじゃないかな?」


・・・損害賠償責任。

なんて夢がない。

「ちなみに、習えば符を作れる様になるの?

自作できれば費用の問題は無くなるよね?」


「符を使うのは霊力をコントロール出来る人間なら基本的に誰でも大丈夫だけど、符を作るのは特定の才能が無いと出来ないの。

ちなみに、それなりに高い素材を使わないとちゃんと力が乗らないから、買うよりは安いけど自作できてもそれなりに費用は掛かるよ」

碧が首を横に振りながら答えた。


どうやら符は前世の魔道具と似たような物なのかな?

魔力を放出できれば誰でも使えるけど、作れるのは適性持ちの魔術師か魔導師だけ。


ちっ。

符を作る適性検査があるのか聞きたいところだが、下手に時空魔術の適性がバレたら面倒かも知れない。


「ヒールみたいな回復術は?」


「人によっては癒しの術が使えるし、病気は無理だけど怪我ならある程度は治せる符もあるよ。

ただし、医療関係の利権が絡むから医師免許を持っていない限り退魔関係で怪我した人しか治療しちゃいけない事になっているし、回復用の符にしても売買の時は身分の証明とか、前回買った符を転売せずに使ったかの証明とかを求められるからかなり面倒」

顔を顰めながら碧が答える。


医療利権団体め〜。

日本の医療団体って、患者の事よりも利権保護を重視しているのが透けて見えてめっちゃ気分が悪い。


医者個人はそれなりに誠実そうでなくも無い人もいるのに。

まあ、『誠実な人間』は利益の大きな業種の業界団体上層部になんて登りつめられないか。


前世の白魔導師はそこら辺があっさりしていた。

自分の魔力だけでほぼ確実に食うのに困らなかったし、魔術適性持ちの教育は国がかなりの部分を補助したから学生ローンも基本的になかったし、高額な設備とかもいらなかった。

一人前になるのに必要な費用が少なかったから大らかにやっていけたのかね?


とは言え、日本の医者だって金持ち職業の代表みたいなものなんだ。

ああも利権に執着する必要なんて無いだろうに。


カルマ値が下がっても知らないぞ〜。

カルマなんて有るのかどうか、知らないが。


「・・・一応の為に回復用の符を1枚ゲットしておいて、出来るだけ怪我をしないように頑張るよ。

ちなみに悪霊退治の話をしていたけど、妖怪とかっていないの?

小説とか伝記では陰陽師って悪霊だけでなく妖怪とも戦うよね?」


まあ、これだけ魔素が薄いと魔法的存在が生きるのは厳しい気もするが。

でも、魔術師や陰陽師や氏神(!)が実在するのだ。


同じく伝説に出てくる妖怪や化物だっていてもおかしくない。


『昔はおったんじゃがのう。

世の中から力が薄れるにつれていつの間にか姿を消したな。

今では悪霊が動物に取り憑いたのが精々じゃな』

白龍が残念そうに口を挟んだ。


ある意味、妖怪も神様の仲間・・・とまでは行かなくても、知り合いではあったのかな?

何で妖怪は消えたのに氏神さまが残ったのか仕組みを聞きたいところだが、本神に直接聞くのは気が引ける。

いつか碧だけのところを見かけたら聞いてみよう。

大元のエネルギーが大きかったとか、氏子の信仰とかだろうと思うが・・・どうなんだろ?


「じゃあ、ラノベでお馴染みの鑑定、収納インベントリにスキル強奪は?」

まあ、鑑定は普通に携帯で写真撮ってネットで映像検索すれば足りそうな気もするが。


「スキル強奪と鑑定は無いね。

収納インベントリは使える人が各国に何人かいるし、符で代用も可能っちゃあ可能なんだけど・・・一度の出し入れで使い捨てだから、大抵の場合は宅急便で送る方が安いよ」

碧が苦笑しながら答えた。


「一度の出し入れで使い捨ては痛いね・・・。

陰陽師なら式神に持たせたりは出来ないの?

なんか陰陽師の式神って呼び出されていない間は異世界か亜空間に待機してそうな感じだよね?」


それを言うなら氏神さまも出来そうな気がするが・・・神様を便利使いしちゃいけないんだろうな、きっと。


「特殊な式神だったら可能らしいけど、普通に作った式神じゃあ無理。

ちなみに、美味しい酒だったら白龍さまが協力してくれるんで、私も限定的に収納スキルが使える」

笑いながら碧が言った。


「酒限定!?」


「それ以外に使おうとすると賄賂に高くて美味しい酒が必要だから、宅急便の方が安くなるのよ」

碧が溜息をついた。


うむ。

まあ、宅急便とかタクシーといった便利な文明の利器がある時代なのだ。

収納が出来なくても構わないだろう。


とは言え。

符と言う便利な形に収納能力を具現化できるんだったら、自分の収納能力を公開しても良いかな?

高額だろうが退魔協会経由で普通に買えるらしき符で収納が出来るんだったら、密輸とかの問題は既に国なり退魔協会なりが対処済みなのだろう。


碧だって酒で払えば収納能力があるんだし。


「私もがっつり魔力を込めたらリュックサック一つ分ぐらいは収納が出来るんだけど、教科書の持ち運びとかお米を買った時の持ち帰り程度にしか使えないんだよねぇ。

その程度でも符の作り方を習ったら儲かると思う?」













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