看板娘

作者 黄間友香

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★★★ Excellent!!!

アルバイトを始めるときよりも辞めるときのほうが難しい……かもしれない。

本作で描かれるのはバイトを辞めようとする女子大生と彼女を引き留めようとする店長の一幕。

特に大きな事件が起きるわけでもなければ、バイトを辞めることに特別な理由があるわけでもない。どこにでもあるようなバイトと店長のやりとりである。それなのにこれが非常に読ませるのである。

会話の内容や何気ない描写のひとつひとつ、主人公が語る他の登場人物の質感、そのどれにもリアリティがあり、登場人物のそれぞれの言動が脳内でしっかり再生されるのだ。

最初は主人公がバイトを辞めたいということしかわからないのだが、彼女と店長二人のやりとりを聞いているとバイトの内容がどうも変なのである。明らかに異常というほどではないが、普通は成立しないだろうという絶妙なラインを突いているバイトの内容で、これがまたリアリティを生んでいるのだ。

設定が派手なわけでもなければ、ストーリーに意外な仕掛けがあるわけでもない。しかし、本作を読めば、そのようなものがなくても面白い小説が成立することがわかるだろう。


(「色んなアルバイト」4選/文=柿崎 憲)