38話目 幼馴染達を激写

 愛の準備が整い、純の部屋にきている。


 うつ伏せで寝ている純の上に愛が乗って揺らすけど、純は起きずに愛も眠る。


 登校時間にはまだ余裕があるから、もう少し寝かせておこう。


 スマホをカメラモードにして2人に向ける。


 カメラに純と愛の顔が一緒に写らない。


 純を仰向けにしたいけど、動かしていたら2人が起きるかも。


 愛と純のイチャラブな写真を撮るためには。


 愛の手を純の胸の方に移動させたら愛が純の胸を揉んでいるように見える。


 ベッドの上でというのがいいな。


 これで最高の写真を撮ることができるって、こんなことをしている場合ではない。


 愛と純の過度なスキンシップは阻止すると決めたのに、僕からさせてどうすんだよと心の中で叫ぶ。


「こうちゃんおはよう」


 純の声が聞こえた瞬間、持っていたカメラをポケットの中に入れる。


 隠れていない右目を鋭くしている。


 怒っているのではなく、純が少しツリ目なだけ。


 いや、僕の不埒な考えが読まれ本当に怒っているのか分からないから、恐る恐る聞いてみる。


「……じゅんちゃん」

「何?」

「怒ってる?」

「私がこうちゃんに怒ることなんてない」


 信頼してくれるのは嬉しいけど、欲求を満たすために動いたので罪悪感の方が強い。


 心の中で謝りながら、純の上で寝ている愛を抱える。


 途中で起きた愛をゆっくりと床に下ろすと再び純に飛びのる。


「じゅんちゃん! おはよう! 服を着替えるよ!」

「……」


 そう言いながら、純が来ている夏用で生地が薄くて通気性の良い猫の着ぐるみパジャマを脱がし始めた。


 純は耳を赤くして愛の手を軽く掴んで無言で抵抗する。


 でも、強く出られずに首あたりにあるファスナーを下に引っ張られる。


 スマホを取り出して愛と純に向ける。


 高身長で格好良い純が、低身長で可愛い愛に服を脱がされている画。


 これを写真に撮らないなんて考えられない。


 愛は純のパジャマのファスナーを下腹部辺りまで下ろした。


 ここで1枚パシャリ。


「じゅんちゃん立って!」

「……」


 純は無言で首を少し左右に振る。


「このままじゃパジャマ脱がせれないから立って!」

「……こうちゃん」


 はっ! 僕は一体何をしていた……助けを乞うような純の声で正気に戻る。


 後ろから愛を抱きしめて純から離した。


「手伝ってくれてありがとう!」

「手伝ってくれてありがとう?」


 純を助けたつもりだったのに、なぜか愛にお礼を言われた。


 不思議に思って、愛の言葉を繰り返して口に出す。


 愛の手を見ると、さっきまで純が来ていたパジャマを手にしていた。


 下着姿の純と視線が合い、純は耳を真っ赤にしてから毛布を全身に被る。


「じゅんちゃんの制服あった!」


 勉強机に掛けられている制服を手にして純の所に行く愛。


「じゅんちゃん制服を着させるから毛布から出て!」

「……」

「じゅんちゃん! このままじゃ制服を着させることができないよ!」

「……」


 愛が毛布を必死に引くがびくともしない。


「じゅんちゃん! じゅんちゃ、うわっ!」


 体を後ろに傾け過ぎて、そのまま倒れそうな所を純が抱きしめた。


 制服姿の愛に下着姿で抱き着く純。



『じゅんちゃんを抱きしめたい!』

『着替えている途中だから待って』

『待てないよ! ギュッ~! じゅんちゃんもらぶもことを抱きしめて!』

『高校生になってもらぶちゃんは甘えん坊』

『らぶは甘えん坊じゃないよ! お姉さんは甘えないよ!』

『本当?』

『……少しだけじゅんちゃんに……甘えていい?』

『いっぱい抱きしめる。ギュッ~。ギュッ~』

『じゅんちゃんに抱きしめられると心がポカポカするよ! 毎日らぶを抱きしめてほしいよ!』

『らぶちゃんはたくさん甘えられて偉い』

『じゅんちゃんってママみたいだね……ママって呼んでいい?』

『……おう』

『……純ちゃんママ』



 こんな風にならないかな。


「らぶちゃん、大丈夫?」

「大丈夫だよ! じゅんちゃん助けてくれてありがとう! らぶがじゅんちゃんの誕生日にあげた猫のパンツ穿いてくれてるんだね! じゅんちゃんに似合ってて可愛いよ!」


 愛の言葉を聞いて純のパンツに目が行くと、確かにパンツの前側にデフォルトされた猫のイラストが描かれていた。


「はい! じゅんちゃんスカートを履こうね!」


 履きやすいようにスカートを純の前で広げる愛。


 今までに見たことないスピードで純は毛布を被りベッドの隅に移動した。


 毛布を被りガタガタと震えている純を見て可哀想になり、愛を抱えて外に出る。


「こうちゃん! まだじゅんちゃんを着替えさせてないよ!」


 廊下を出た所で愛がそう言う。


「じゅんちゃんは高校生だから1人で着替えられるよ」

「らぶはお姉さんだから、じゅんちゃんのお世話したいの!」

「お姉さんは妹の成長を喜ぶものだよ。着替えられたら褒めてあげて」

「分かった! じゅんちゃんが1人で着替えれるか隣で見守るからこうちゃん放して!」


 両手両足をバタバタと動かす。


「じゅんちゃんは下着姿を見られるのが恥ずかしいから、お姉さんだったらどうすればいいか分かるよね?」

「分かるよ! らぶはじゅんちゃんの下着姿を見ないよ!」

「うん。そうだね」


 片手を上げて愛が答えたので頷いた。


 愛と1階に行きリビングに入ると、純の父親こと小泉恭弥が味噌ラーメンを食べていた。


 恭弥さんは三白眼でガタイがいいけど怖くない。


「食うか?」


 涎を垂らしながら味噌ラーメンを見ている愛に恭弥さんが言う。


「食べる!」

「ちょっと待ってろ」


 立ち上がった恭弥さんはリビングに行き、数分後茶碗を持って戻ってくる。


 それを愛が座っている机の前に置く。


「食っていいぞ!」

「ありがとう!」


 すごい勢いでラーメンを食べ始める愛。


 リビングに恭弥さんがいる時は毎回食べさせてくれる。


「ニンニクが入っていてすごくおいしいよ!」

「七味唐辛子あるけどいるか?」

「うん! ほしい!」

「ほら」

「ありがとう!」


 仲良く麺をすすっている姿は親子のように見える。


 だから、


「準備できた。行こう」


 リビングに入ってきた純が父親こと恭弥さんに挨拶所か一瞥すらしないことに心配になる。


 純のことを妹のように思っていても僕と純は本当の兄妹じゃない。

 

 他人の家族の問題に口を出すのは余計なお世話だよな。


 なんていうのは建前で本当は余計なことをして純に嫌われたくないだけ。


 いつも純に注意する愛は食べることに集中していてしない。


「ごちそうさま! じゅんちゃんパパおいしかったよ!」


 完食した愛は恭弥さんに抱き着く。


 恭弥さんは照れくさそうに微笑んでいる。


 愛が部屋を出て行ったので、恭弥さんに「行ってきます」と言うと、「気をつけて行ってこい」と恭弥さんは呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る