33話目 エピローグ 幼馴染を百合にしたい

 土曜日。


 約束していたお好み焼きを作っていると、愛がキッチンにきて聞いてきた。


「こうちゃん! こうちゃん!」

「どうしたの、らぶちゃん?」

「こうちゃんはらぶとじゅんちゃん以外の女子の子の同士が……キスしても嬉しいの?」


 妹にエロ本の場所を聞かれている兄のような気持ちで答え辛い。


「どうしてそんなことが気になるの?」


 無条件で答えてあげたいけど、性癖を話すのは恥ずかしい。


「聞いたら駄目?」


 大きな瞳で可愛く見つめてきた。


 答えることにした。


 今まで気にしたことがなかったから考えてみる。


 百合画像、百合漫画を検索して見たことはある。


 それに対して興奮はしていたのか自分も分からない。


 漫画にあるシチュエーションを愛と純に脳内で変換して興奮はしていたけど。


 このまま愛に話すのは抵抗したから、愛と純だけのキスだけを見たいと答えた。


「こうちゃんはカップリングは1つだけなんだね」

「何か言った?」


 愛の声が小さくて聞こえなかったので聞き返すと「何でもないよ!」と答えた。


 お好み焼きが完成して、僕の隣には愛、僕の対面には純が座って昼食を食べ始める。


 男のことを想像せずに、愛と純と3人で食べるご飯は美味しい。


「こうちゃんは私達にしてほしいこととかある?」

「特にないかな。じゅんちゃんとらぶちゃんが一緒にいてくれるだけで嬉しいよ」

「……」


 そう答えると、純は黙って僕のことを凝視する。


 愛も食べながら、ずっと僕のことを見てくる。


「こうちゃんは私とらぶちゃんのキス以外だったら……どんな……エッチなことが見たい?」

「……」


 予想もしなかったことを純に聞かれて、驚いてフリーズしつつも妄想する。


 そりゃ、キス以上のエッチなことなんていくらでもある。


 例えば、純が愛の成長途中の胸をさわ……。


「……じゅんちゃんとらぶちゃんのキスを見られただけで満足だよ」

「……」

「……嘘を吐きました。じゅんがらぶの胸を触るというか、当たるというか、偶然当たってしまったみたいなものが見たいです」


 純の無言の圧力に本音を漏らす。


「こうちゃん! それはエッチだよ! エッチ過ぎるよ‼」


 茶碗と箸を持ったまま愛が立ち上がる。


「うん。分かってるよ。僕はエッチだね。ごめんね。もうエッチなことを言わないし、考えないから……考えないようにするから嫌わないでね」


 幼馴染にエッチだと大声で言われ、メンタルは粉々になる。


 愛は何も言わずに席に着く。


 純も何も喋らない。


 部屋に響くのは時計の針の音だけ。


 殺せよ。今すぐ殺せよと頭の中でパニックになっていると。


「少し……なら……いいよ」


 愛は椅子から下りて純の所に行く。


「じゅんちゃん……優しく……触って……」


 グハッ! 愛の言葉だけで天国行ける‼


「……いいの?」


 グバッ! 立ち上がっている愛の方が座っている純より少しだけ高い。


 必然的に愛を見る純が上目遣いになっている。


 これこそ、愛が攻めで純が受け、愛×純。


 夢までに見た光景が目の前にある。


 あれ、僕、死んじゃうのかな。


 それとも、もう死んでいるのかな。


 ここが天国なんじゃないのかな。


「……うん」

「……らぶちゃん、触るよ」


 純は壊れ物を触るようにそれはそれは優しく、愛の胸を触った。


 母さん、父さん目の前が眩しくて何も見えない。


 あまりにもの神々しさに、その場で倒れそうになりながら我慢する。


 愛と純に心配を掛けたくない。


 必死な思いでソファに飛び込む。


 百合な妄想を口にしても、愛と純はそばにいてくれる。


 それに、百合なことするのを大好きな幼馴染達は嫌ではなさそう。


 愛と純が付き合うこともありえるかも、僕の初恋が叶うかも。


 そんな希望をまだ純に胸を揉まれている愛と、愛の胸を揉んでいる純を見ながら抱くのだった。

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