第212話

 木の上の弓兵は厄介だから、先ずはあいつらから始末しないとな。


「ストーンネイル!」


 俺は土魔法で作り出した釘を撃ち出した。奴らは木の陰に隠れたりカモフラージュしてたりで、何処に居るのか良く分らん。仕方が無いのでマシンガンの如く怪しい所にばら撒いてやった。俺を甘く見るなよ。このくらいの木なら余裕で貫通するからな。


「うわ!」

「うぐぅ!」


 何人もの弓兵が木から落ちて来た。その代わり木はボロボロだ。環境破壊も甚だしい。だけどこっちは命が掛かってるんだ。この際そんな事には構っていられない。暫く撃ちまくると樹上からの矢は沈黙した。先ずは樹上の敵は一掃出来た様だ。


 だが弓兵は地上にも居たらしい。テレーズ殿下の馬車に火矢が突き立っている。ああ、馬車燃えちゃうよ。地上ではベクレル兵と敵兵が切り結んでいる最中で、弓兵はその後ろから射掛けて来ている。さっきみたいにストーンネイル乱れ打ちしたら、味方も死んじまうな。


 とその時、テレーズ殿下が馬車の扉を開けて外へ出て来た。


「殿下、外へ出ては危険です。馬車の中へ。」

「どうせ馬車の中に居ても焼け死ぬだけよ。」

「ならば私の後ろへ。離れないでください。」


 アンちゃんがテレーズ姫の盾となって、近づく敵兵と切り結んでいる。敵兵は鉄製のなかなか良い防具を身に着けているが、どうしても関節部分は防御が弱い。そこを的確に突き貫いて行くアンちゃん。天然理心流かな。いやレイウス流だよね?三段突きとか普通に出来そうだけど。


「水球!」

 

 一方のテレーズ姫は水球をぶつけて馬車の火を消そうとするが上手く行っていない。鏃の所に油を染み込ませたものが付いているので、ちょっと水を掛けたくらいじゃ消えないみたいだ。俺は風魔法で射掛けられる火矢を逸らしながら馬車へ戻った。


「殿下、水球を飛ばすのではなく火矢の炎を水で包み込む様にして下さい。」


 要するに消火の三原則だ。燃える物を取り除く事、温度を下げる事、空気を遮断する事だよ。水で包み込めば、2番目と3番目の効果で火が消えるって言う寸法だ。俺も姫様と一緒になって消火活動に励んだ結果、外側がちょっと焦げたくらいで鎮火した。まる焼けにならずに一安心だ。


「未だ火矢を射掛けて来る奴がいるな、鬱陶しい。」

「ジロー、どうするんだ?さっきの釘みたいなやつは味方に当たるから使えないぞ?」

「任せて下さい。こっちも弓なりに撃てば良いんですよ。」


 矢が飛んで来るところを見れば、弓兵がどのあたりに居るのかは丸分かりだ。俺はその辺りを目掛けて魔法を撃ち出した。


「放水!」


 山なりに飛んで行く水流。もちろん水ではなく熱湯である。鉄の鎧も何のその。これは効くよ。程なく地上の弓兵隊も沈黙した。これで焼け死ぬ事はなさそうだ。後は残敵掃討だな。

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