第60話

 今俺たちは王城の謁見の間で国王陛下ご一同様をお待ちしている。もちろん土下座スタイルだ。平民が陛下の御尊顔を拝するなど勿体なくて出来ん。って言うか、俺の頭は胴体と分離して、どこかへ飛んでっちゃうよね。壁際に怖い顔した近衛騎士の人たちが沢山いるもん。


 ビーム辺境伯はずっと先、玉座に近い所で片膝をついて畏まっている。あれカッコイイよな。やっぱり謁見の時のテンプレって感じがする。今度地方のお貴族様の時にやってみようかな。


 奥の扉が開いて国王陛下ご一同様お偉いさん方がやって来た様だ。俺は頭を床に擦り付ける様にして身を固くする。どうか変な無茶振りされません様に。


「ジム、今回は良くやってくれた。さあ頭を上げよ。」

「はっ、勿体なきお言葉。」

 お偉いさん達でお話合いが始まった。俺はいつもの如く早く終わらないかなと思いながら、毛足の長い絨毯を見つめていた。お掃除大変じゃないのかな、これ。


「ところで、・・・」

 む、何やら嫌な予感が。


「向こうで控えているのが今回活躍したと言う魔法使い達か。」

おおせの通りにございます。」

「うむ。その方たちも面を上げよ。」


「はっ。ありがたき幸せ。」

 ここでガバッと顔を上げたりしちゃダメだ。足元辺りを見るんだ。何だったら辺境伯の尻でも良い。目なんか合わせたら本当にこの世とサヨウナラだ。


 ここからは宰相閣下にバトンタッチだ。きっと打合せ済みなのだろう。宰相閣下から根掘り葉掘り聞かれた。


「まず名前は、ジローとアンナで間違いないな。」

「「はい、その通りでございます。」」

 アンちゃんとハモったよ。執事の人から色々聞いて練習した成果がでたね。


「ではジロー。お前は何処の出身か?」

 ここで世界の向うから来ました、何て言ったら絶対にアタオカと思われるよね。いつも通り当たり障りなく答えておこう。

「私は山奥の名もない村の出身でございます。」

「その割には、言葉遣いといい、物凄い魔法といい、ただの農民とは思えぬが。」

「私は孤児でして、その村より更に奥に一人で住んでいた魔法使いの師匠に育てられました。その師匠から魔法その他を色々と学んだのです。」

「そうか。して、お前の魔法の流派は何という?」

「コーラス流でございます。」

 コーラス様から授かった力だから間違ってないよね。


「なんと、お前の流派はあの女神様のコーラス流であったか。であればあれ程の力も納得が行くと言うもの。お前の師匠もさぞや名のある導師グルであったのだろう?」

 もうこの話の流れに乗っかろう。


「私の導師もかなり高齢でして、私が出かけている間に村を襲った魔獣と戦い、最後は相打ちになって亡くなりました。」

「そうか。お前の妻子もその時に亡くなってしまったのだな・・・。」

 この話、何かリンキの城門の所でもした様な気が。ちょっと細部が違うけど、後でウラを取られても誤魔化せるレベルと信じたい。あの兵士のおっちゃん、元気にしてるかな。






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