第57話
「貴公がジロー殿か。何でも凄い魔法を使うと聞いている。よろしく頼むぞ。」
なんでこんな事になってしまったのだろう。それはウェーバー帝国との戦争で死にたくなかったから仕方が無いとはいえ、大勢の人に魔法を見せてしまったからだ。はい、俺の責任ですね。
俺とアンちゃんはビーム辺境伯とは別行動をとり、ミュエーに乗って辺境伯領の周りのお貴族様の所を回っている。何故かと言えば、国王陛下のご依頼だから。
応援に来てくれた王国軍はもちろん国王直参の兵もいるけれど、周りの貴族からも集めた言わば諸侯連合軍だ。そして王国の兵は徴兵された農民が殆どだ。つまり、働き手が減って、作物の刈り入れが遅れているのだ。
折角帝国との戦争に勝っても、その後飢饉になったのでは意味がない。そこで登場するのが俺の
「みんな喜んでいたね。」
アンちゃんが笑顔で声をかけて来る。まあ、感謝されるのは悪い気はしないから良いけどね。
と言う訳で、俺とアンちゃんは村々を回って刈り取りをしている。でもなー、ただ刈り取りするだけじゃ無いから面倒くさいんだよなー。
まずその土地の領主様の所へ行ってご挨拶をして、案内人(お役人?)と一緒に村へ行って村長に挨拶して、刈り取りして漸く1か所終了。これを延々と繰り返している。
何処へ行ってもみなさんご接待してくれようとするのだけど、実際そんな暇ないのよ。丁度ご飯時ならご相伴にあずかるのだが、ご飯を掻き込んで次に行かなきゃならない。
「あの料理美味しそうだったのに。たべたかったなー。」
隣の子はもっと食べたそうな顔をしているけど、今回は御免なさいだ。ビーム辺境伯が王都に着くまでに追いつかなきゃならないんだから。ミュエーの足が速くて助かったよ。
頑張った甲斐があって、王都まであと7日くらいの所でビーム辺境伯の馬車に追いつけた。やれやれこれでやっと楽できるかな。後は後ろにくっ付いて行けば良いだけだし。
ビーム辺境伯からは一緒に馬車に乗らないかとお誘いを受けたが、丁重にお断りした。だって俺、堅苦しい所嫌いだもん。だいいちお貴族様と何お話すれば良いの?俺そんなに話題豊富じゃないよ。
とは言え、宿泊地では夕食を共にする機会もありました。美味しかった、美味しかったですけど、会話が続かない食事会は苦痛ですらある。その中でもりもり食べてお代わりまでするアンちゃんは大物だ。おっさんにはとても真似できん。
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