第34話
何とか食糧集めも間に合ったし、水源も確保出来ている。けどなあ、冬の間中籠城するって言うのも難しいと思う。燃料が足りないし。それに籠城は救援が来るのが前提だからね。
さらに帝国兵は職業軍人だが、こちらは農民兵。練度も武装も段違いだ。
辺境伯の顔色が悪いのはこの辺りが理由なんだろうなー、なんて考えてたら俺たちも当事者じゃないの。凍え死んだりするのは御免こうむりたい。
お偉いさん達が何かごにょごにょ相談している。もう帰りたいなぁとあくびをかみ殺して待っていると、ようやく家令からお達しがあった。
「冒険者達に新たな依頼を出す事にした。詳しくは組合を通して通達する。特にお前達には期待しておるぞ。下がって宜しい。」
何か嫌な予感がするけど、漸く開放された。あー疲れた。
「新たな依頼ってなんだろうね。」
そう言ってアンちゃんを見ると顔色が悪い。辺境伯から何か移されちゃったの?どこか痛いの?
「多分、おとりだと思う。」
アンちゃんは固い声で応えた。
なんとなく分かった。帝国軍とこの街の兵力差は圧倒的だ。野戦ではおそらく敵わないだろう。となると籠城するしかない。問題は救援を呼ばなければならない事だ。冒険者が打って出ている隙に、王都へ救援要請の使者を走らせる作戦か。
「こうなったら仕方がない。何とか生き残る方法を考えよう。」
「うん。」
アンちゃんは硬い表情のままだった。
翌日冒険者組合から呼び出しが掛かった。おそらく昨日の件だろう。
事務所に行って見ると50人くらいの冒険者が集まっていた。良く考えたら、俺冒険者になってからアンちゃん意外と一緒に仕事した事無いや。事務所で見かけた人もいるけど、殆ど初対面の人達ばかりだ。
「良く集まってくれた。」
組合長の爺さんの話が始まった様だ。
「領主様からの通達を伝える。帝国軍を最低3日間足止めせよ、とのお達しだ。」
無茶振りしてくれるな、と言うのが俺の感想だ。
「それで帝国軍は何人来てるんだい?」
だれかが質問した。
「兵士20,000人だ。」
2万人かよ。50人対2万人じゃあ、兵力差400倍だよ。普通に戦ったらあっという間に全滅だよ。みんな難しい顔をしている。こりゃゲリラ戦しかないな。
「ちょっと良いか。」
俺は発言を求めた。
「こっちは50人しかいないんだ。まともに戦ったら勝てないだろう?」
「そんな事は分かり切ったことだろ。」
さっき質問してた奴かな?
「俺たちは別にこの戦いに勝つ必要は無いんだ。要は3日間帝国軍にまともに攻めさせなければ良いのさ。」
「どうするんだ?こっちは50人しかいないんだぞ。」
「帝国軍に嫌がらせをするんだ。少人数に分かれて、相手の嫌がる事、困る事、いら立つ事をやってやれば良い。短時間で仕掛けて、あとは森や山に逃げ込むのさ。この辺りの地理は詳しいだろう?」
「ほかに何か案がある者が居たら言ってくれ。」
組合長の爺さんが最後を引き取ってくれた。
「無いようならこの作戦で行くしかないのう。みんな死ぬなよ。」
何か作戦採用されちゃったよ。俺って採集で試験受けた冒険者だよ。それで良いのか先輩方よ。まあ、俺より年上ってあまり居ないみたいだが。
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