第28話

「これが依頼書です。」

受付のお姉さんが書類を渡してくれた。


「どれどれ。」

ゴブリン共の巣は、街から見て最近よく行く草原の反対側、森の中にあるらしい。森からほど近い村に被害が出ている様だ。


「群れの数はおよそ30匹と推定されます。お二人だけで行くのなら注意してくださいね。」


 お姉さんからアドバイスを貰って俺たちは事務所を後にした。依頼料は銀貨6枚。ゴブリン1匹2000円だ。豊かな村じゃないし、仕方ないよね。採集したものも売れば足しにはなるし。


「ようこそおいで下さった。」

依頼元野村へ行くと村長さんが挨拶してくれた。


「被害はどの様な感じですか?」

アンちゃんが村長さんに尋ねる。軽い怪我を負った人は居るが死人は出ていないらしい。主に畑の作物と家畜が狙われていると。本格的に襲って来る前に到着出来て良かった。


ゴブリン奴らは昼間は巣に籠っていて、主に夜に活動する。そして段々行動が大胆になり、最後は人を襲うようになる。事務所の教本を読んで調べました。


「アンナ。まだ日が高いから森を探索しよう。」

「それが良いわね。」


 森に入り徐々に奥へ向かっていくと多数の足跡を見つけた。ゴブリンのものの様だ。


「行って見よう。」

俺たちは足跡を辿って、更に森の奥へと進んだ。すると崖になっている部分に洞窟があり、足跡はその中へと続いていた。


「ここがゴブリン奴らの巣みたいね。」

「このまま一網打尽にしようか?」

「それだと人型を斃す訓練にならないでしょ。」


そうだった。今回はそれが目的でした。


「このまま中に入って行くのは危険だし、何かいい手は無いかしら。」


 地形も分からない狭い洞窟の中だと何が起こるか分からない。こちらのゴブリンさんはどうか知らんが、テンプレのゴブリンだとかなり女好きだからな。アンちゃんに何かあったら一大事だ。さてどうしよう。


俺はアンちゃんに見せた事が無い魔法を使う事にした。火球男のロマンである。おびき出すだけだから小さいので良いよね。


「じゃあ、洞窟から炙り出すから戦闘準備しておいてね」

「了解。」


 でも火球ファイヤーボールが実際どの位の威力があるのかを試した事無かったな。試し打ちは空に向かって撃ったし。良く分らないからパチンコ玉位から始めてみよう。


「随分と小さいのね。」

アンちゃん、それはこの火球ファイヤーボールの事だよね。なんて下らない事を考えながら、火球小さいのを撃ち込んだ。


 火球は勢いよく飛んで行き、少し間をおいて”ドゴン”という結構大きな音がした。小さいのにそこそこ威力があるようだ。


 洞窟の中がどうなったか分からないが、ゴブリン共がわらわらと外へ出て来た。20匹くらい居そうだ。あれ、30匹位の群れって情報じゃありませんでしたか?残りは見回で外出中とか?まあ、そんなことは後で考えよう。

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