1話 朝のこと

「ふぅ…」


 誰もいない教室に安堵する。

 私は自分の席に座り、鞄から教科書とノートなどを取り出して机の中にしまう。

 今、使うノートと参考書だけは机の上に置く。

 昨日解けなかった問題を解いて予習していく。

 1年生の時から、朝早く登校して、予習復習か宿題の残りをやってきた。

 欠かさなかったから、成績は常に上位。

 誰もいない教室は本当に居心地は良い。

 気を遣うことなく、リラックス出来るから。

 だいたい7時半頃にはぽつりぽつりとクラスメイトたちが登校してきて、朝の読書時間が始まる15分前頃に一気に登校してくる。

 私はその15分前頃には、勉強を終わるようにしている。

 あんまり見られるのは嫌だから。

 よし、あとちょっと、と思っていると、教室のドアが開いた。

 驚いて出入口を見ると。


「「あっ」」


 隣の席の男子生徒が現れた。

 やっぱり私の席は外れだなと実感したのだった。


 それからほぼ毎日、彼は、宇城うき雅虎まさとら君は朝早く登校するようになることを、この時の私は知るよしもない。

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