第75話
「おはよう」
「おはよう!みぉっ…」
「どしたの!?」
絢子ちゃんは私に詰より大きな声で言った。
「うーん…イメチェン?みたいな」
イメチェンは本当だけど、それは誤魔化し。
本当は…。
「よっ…お!?」
教室に入って来た
「雰囲気変わったな?」
「あはは」
なんと言えば良いのやら。
「あっ、
今日も今日とて、変わらずの聡希君が教室に入って来た。
「ちょっと!みおなん凄くない?」
と絢子ちゃんは聡希君の身体を私の方に向けた。
目が合ってしまった。
「ね?凄いっしょ?」
すると、聡希君は一言。
「似合うじゃん」
そう言って席に着いた彼は鞄から本を出して机に置き、鞄は脇に置いた。
机に置いた本を早速開いて読み始めた。
「相変わらずなんだからー!」
膨れっ面の絢子ちゃん。
湊君も呆れ顔。
「まあまあ」
と、私は苦笑。
心の中は、こう。
似合うと言われて嬉しかった。
いつもの三つ編みお下げをせずに、ストレート。
肩までだった長さが、さらに伸びていたことに気付いた今日この頃。
左耳上にヘアピンを留める。
たったそれだけ。
印象が変わるものだなと実感。
のんびりと担任が現れた。
学校の始まりだ。
※
後片付けをしていて、廊下を出ると。
「やっぱいた」
「あっ…」
同じ高校とは知らなかった人がいた。
「何で私のことを知っているの?」
あの一貫校は、1クラス40人で私が通っていた時のクラスの数は5クラス。
同じクラスにならないと分からない人だっている。
私にとってその分からない人の内の1人が彼だ。
「文化祭の時にいたアイツら、初等部の時に同じクラスでそっから友達でさ」
人の話は聞こう、と努力する。
本当は嫌だったけど。
「そんで高校別々になって会わなくなったけど、連絡先は知っててさ。文化祭の1ヶ月前くらいに連絡きて、
「それで、教えた、と」
「うん…」
あの人達は私をずっと探していたのだろう。
きっと、また…。
怖くなってきた…。
「すまなかった」
「えっ?」
突然、頭を下げた彼。
「後で聞いたんだよ。何でそいつを探してるんだ?って」
この後、私は倒れそうになる。
けれども、足に力を入れて踏ん張った。
「ずっと、おもちゃにしていたから、またそうしようと思って…て」
呼吸が荒くなりかける。
頭の中が白くなってきた。
早く、話を、終わらせないと。
「それを聞いて、俺、とんでもないことをしたなって…会計にいたあの無口にも謝ってたって言ってくれ。んじゃな」
彼は自分のクラスに戻って行った。
泣きたくなった。
また、必ず、来る、かもしれない。
私は教室に戻らず、ある場所へ行った。
※
コンコン。ノックする。
「はーい」
返事がしたから大丈夫だ。
「失礼します…」
ガラガラとドアを開けて入室した。
「あら、元気ないこと」
保健室の先生が出迎えた。
「顔色悪いわね、さっ椅子に座って」
私は促されるままに、椅子に座った。
奥から生徒が現れた。
「あれ、弓削さんじゃん」
「先輩…」
「
「去年の副会長の妹の友達がその子なんで」
「そうなのね」
気さくな先生だなぁ。
「それで、どうしたの?」
「ちょっと休みたくて…」
「顔色、本当に悪いから少し寝なさい」
「ありがとうございます」
訳を聞かない。それでも寝ても良い。
きっと、気を遣われている。
少し休んだら話してみよう。
そう言って私はベッドの方に行き「お借りします」と言って、カーテンを閉めた。
靴を脱いでベッドに横になる。
すると、眠気が直ぐに来て、落ちた。
※
「あっ、起きた起きた」
「ありがとうございました」
カーテンを開けて、私はぼうっとした頭をなんとか覚まさせる。
「はい、座って」
また椅子に座る。
「嫌なこと、あったのかしら?」
「文化祭の時にー…それで今日も…」
「そうだったのね」
きちんと聞いてくれる先生で良かった。
「また、必ず、嫌な思いをすると思うと、怖くて怖くて…」
思い出したら、涙が出てきた。
「逃げられない、気がして…」
背中を擦ってくれる先生の手は温かくて優しかった。
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