第55話

「はーい、報告書~」

「ありがとな」

「はい、カップケーキ!」

「わぁ~可愛い♪ありがとう♪」

 いろんな味のカップケーキを報酬として、調べてもらった1年の弓削ゆげさんのこと。

 報告書を見ると。

「小中、一貫だったのか」

「珍しいねぇ」

 でも、この学校は高校まであるのに。

「何でうちの高校?て思っているでしょ~?」

 幸せそうにカップケーキを食べる挑夢のぞむ

「その答えは次のページにあるよ~」

 すると琴坂ことさかがページを捲った。

「「…」」

 見た途端に俺と琴坂は絶句した。

「だから、うちの高校に来たんだよ」


 "いじめ"

 犯罪に該当しかねない行為もあり、しかも加害者は年上…つまり、複数人の男女の先輩だ。


「挑夢…どうやって分かった?」

「今回は臭い匂いと直感で感じて、詳細の所は、パパの力を借りたんだ~」

 挑夢パパ、ここまで求めてないんですけど。

「性格とかだけでも良かったのに…のんちゃん」

 琴坂は少し苦しい表情になる。

「う~ん、それだと、あの子は一生誰も信用しないと思ったんだ」

 挑夢は食べかけになったカップケーキを置く。

「どういうことだ?」

「あの時の様子を思い出してみて?」

 あの時の様子…。

「怖がってたね」

「怯えてたな」

 そうだ、そうだ。

「泣きそうな顔してて…」

「不安でいっぱいだった…」

 俺と琴坂は気落ちした。

「追加調査しても良いけど…直接本人に聞いた方が早いと思う」

 挑夢は真剣な顔で。

「弓削さんにも向き合う意味では、誰かが踏み込むのは良いはず」

 そう言った。

「私達ではダメだよね…」

「同じ学年ではないからな…」

 誰か…誰か…。

「「あっ!」」

 いるじゃないか。

みなと君と!」

絢子あやこ!」

 あの2人に頼もう。



「帰りのホームルームが早く終わったことと」

「掃除当番じゃなかったから、早く玄関に来れたね」

 1年生を待つこと10分。

 玄関に続々と1年生が現れた。

 すると「琴坂せんぱーい!」と元気な声が聞こえてきた。

「絢子ちゃん!」

「お疲れ様でーす!」

 絢子は相変わらず元気だな。

「どうしたんですか?もしかして待ってましたか?」

「うん、待ってたの」

「わぁー嬉しい♪」

 はしゃぐな。

瀬戸せとは?」

「ん?あぁ、いたいた、瀬戸っちー!」

 瀬戸は絢子の呼び掛けに気づき、こっちへ来た。

「兄さん、みやびちゃん、お疲れっす」

「おう」

「お疲れ様」

 よし、揃った。


「2人とも、時間大丈夫かな?」

「「?」」

「話があるんだ」

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