私の実らなかった淡い恋
私は昔、恋をした。その時まで自分はただのろくでなしだと思っていた。
怠惰な人間が将来を案じ始めた高校二年、そこで出逢った彼女は酷く純粋で私よりも優秀だった。最初はただのかわいらしい少女だと思っていた。
本格的に自分が惹かれていると気付いたのは夏の修学旅行の時だった。
適当に過ごしていた自分はその時に適当にグループに放り込まれた。グループは男女に分けられていた。
そこで盛りの付いた年頃の男子達は恋話の話になった。誰が良いだの可愛いだの好き放題言ってた彼らは、聞き上手に徹していた私に話をふった。
そこでなんとなく彼女を取り上げた。なんとなく気になっている程度で。そこで悪ノリのしやすい彼らに彼女が居るグループに連絡しようとなぜかなった。
慌てて止める私を面白く思った彼は電話を決行。時間は夜の九時。彼女はこの時間にはすでに寝ていて事なきを得た。
その時の私は一体どういう心境だったろうか?
彼女に知られなくて良かった?彼女と話したかった?
どう取り繕うにも彼女を求めていることに気付いた私は苛まれた。このろくでなしには彼女に釣り合う人間だとは思えなかったから。
ともあれ、無垢な彼女は私の心を捕らえた。
だが恥ずかしさや一歩身を引いてしまう、このろくでなしの心境では自由気ままで無垢な彼女とは接点を作れなかったのだ。
そのまま三年生になり今度は学校で遊園地に行くことになった。その時、友人達の協力もあり、私は彼女に告白した。頬を赤らめ恥ずかしがる彼女はとても愛しかった。
だがその返答は保留。
私はめげずに彼女に振り向いて貰えるよう努力した。彼女と過ごした、なんて事の無い日々は楽しかった。恋の力は方向の決まらなかった自分の進学先を決断させ一発で合格。卒業までバイトをして金を集めた。今までの自分からは想像出来ない程の進歩だった。
だが彼女は自分の事を文字通り仲のいい友人だと思っていたのだろう。最初からその気は無かったのかもしれない。そこから私の恋には進展は無かった。
高校を卒業してその後、彼女とは接点がない。
だがその恋をしてる間の私は確実に変わっていた。
ただのろくでなしを確固たる意思を持った人間に変えたのだ。
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