第27話 湖の中で……

 まさか湖の中に落ちるとは、想像もつかなかった。泳げないことがあだとなり、前を見ることすらままならない。

 このまま俺は死ぬのだろうか? 迫り来るサメの群れに、好きに遊ばれてしまうのか⁈


「水と共存する道に進めば良かった……」


 ぶくぶくと泡を立て、苦し紛れの後悔を吐き捨てる。無重力状態で水を掻き分けることもできない俺。

 突拍子もない方法はすぐ思いつくのに、一つしか答えがないものは苦手だった。

 王道が好きでも、周りと違う方法で遊びたい。その気持ちも裏目に出てしまったのだから。

 でも、目を開いていないのにそこらかしこにモヤが見える。色は、赤色。泳いでいるかのように、現れては消えるを繰り返す。


「もしかして、サメ? 襲って来ない⁉」


 身体を回転させるのはできるので真横に捻ると、別の色のモヤが見えた。色は黄金色。明るすぎて、一瞬ホワイトアウトする。


『おーい大丈夫かー⁈ 目を開けて良いぞ‼』


 脳裏に響くルグアの声。まだ無重力感が残っているが、目を開けろと言われたなら従うしかない。

 ゆっくりまぶたを持ち上げる。見えたのは湖の中にいるルグアの顔。俺は、シャボン玉のような膜の中に入っていた。


「呼吸がしやすい。どうしてなんすか?」

「ん、私の魔法で膜を張ったんだよ。溺れかけてたからさ。お前が」


 ほんと優しいなぁ~。っていうか、リヴァイアサンは⁉ リヴァイアサンはどうなったの⁈


「まだ生きてる。LABラストアタックボーナスほしいんだろ?」

「あ、はい……」


 どこまで勘が機能するのだろうか……。ルグアが冴えすぎで、頭の中がごちゃごちゃになる。


「お前が地上に上がったら、私は魔法で敵を拘束する。ついでに、サメの注目ヘイトも私が引き受ける。そんなやわじゃねぇから、安心しろ」

「そ、そう言われても……」

「ほら、サメに喰われる前に動け‼ 行動しないと何も始まらないからな‼」


 ルグアに鞭で叩かれる感覚。俺はルグアに地上まで運んでもらい、剣を交換する。

 やっぱり〈クリムゾン・ブレード〉は重い。これで2回目だが、まだ慣れないし、馴染まない。馴染むはずもない。少ししか使っていないから。


「んじゃ、見守ってやるから。行ってこい‼ 敵の攻撃も私が受けるから、これなら問題ないだろ」


 いや、問題ありありのありだって。なんで命投げ出すことができるんだよ‼ こんなゲームでさぁ……。


「ってことで、私が湖に電流を流しているうちに終わらせてくれ‼」


 完全に自身巻き込んでんじゃん‼ 心配しかないんだけど⁉ まあ、こうしている時間ももったいないし。


「了解しやした。ちょっと心配しかないけど、頑張ります‼」

「その意気だ‼ ファイトッ‼」


 剣に慣れてなくても、特徴はわかっている。ルグアに背中を押され、俺はリヴァイアサンに向かって飛び込んだ。

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