第26話 vsリヴァイアサン

 とぐろをまいて居座る第六層のボスエネミー、リヴァイアサン。黄色や白といったラインが青い胴体を彩っている。

 綺麗な色がより美しさを際立たせて、挑戦者を威嚇。

 俺の手にはルグアが貸してくれた〈クリムゾン・ブレード〉。重すぎて両手で持つだけでも精一杯だ。これを普通に持てる団長が羨ましい。


「疲れたらいつでも教えてくれ‼ 武器を交代してやる」

「武器って交代できるんすか?」

「所有権不明の状態で20分以下なら交代可能だ。ただ、それを過ぎると所有権が確定される。説明以上。さ、終わらせるぞ‼ 私がお前に合わせてやるから、存分に戦ってくれ‼」

「はい‼」


 簡単に素振りをしてから、右下に垂らした状態でボスに接近する。

 剣に重心を持っていかれるが、遠心力を使えることに気付き、軸を左に固定して振り抜く。いつの間にか俺の身体が宙に浮いて、着地のタイミングで上手く踏みとどまる。


「ルグア。ほんとに、この剣の扱いはムズいっすね……。なんとか攻撃できるけど、落ちるのが怖い……」


 なぜこう言ったかというと、実はカナヅチで泳げない。加えてフィールドを囲う湖には、大きなサメの群れ。

 水に関してはとてもビビりで、お風呂は平気でもシャワーは使えないし、シャンプーを流す時はいつも手桶のみ。

 プールは中に入ることすらできない。もちろん、息継ぎもできないのですぐに溺れてしまう。


「安心しろ‼ 私が助けてやる。こう見えて〝泳ぎだけは得意〟なんだ。バタフライもできるからな」


 できる泳法ピンポイントすぎ‼ それと、泳ぎだけってことは、陸上系とか器械体操系は無理なのか……。


「ほらボケっとしてないで動け‼ 私が中央に誘導するからさ。一気に終わらせるぞ‼」

「りょ、了解しやした……」


 彼女の動きは相変わらず速かった。でも、テンポは俺に合っていて、上手く攻め込みやすい。けれども、だんだん腕が疲れてきた……。

 脳の信号入力と機械との送受信で、仮想五感フルダイブゲーム機は動いているが、ここまで重さを再現されると疲れてしまう。


「そろそろ交代するか? 私はどっちでも良いぜ?」

「じゃ、じゃあ、お言葉に……」


 俺の剣とルグアの剣を交換する。急に腕が軽くなり、身動きも取りやすくなった。


「こんなに重さの違いがあったんすね……。ルグアがどんな感覚で剣を振っていたのか、少しわかった気がします」

「そうか……。って、おい‼ そっちは水の中だぞ‼」

「えっ⁉」


 知るのが遅すぎた。もう、身体は水中に潜っていたのだから……。

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