第24話 エレメントキラー

「PK発見……。だな」


 今にも殺されかけている人を前に、ルグアは普通に眺めている。きっとそれだけ余裕があるのだろう。

 俺はルグアに任せることにした。こういうことは、ギルドの団長であるルグアの方が都合が良い。


「エレメントキラーって実際いるんのかと、少し前から気になっていたが……。ほんとにいたとはな……」

『別に楽しくない? こうやって悲鳴聞くのとかさ。聞いてるだけで……』

「そういうことは聞いてねぇよ。見た感じ相当やらかしてるみたいだな。私は人殺しするやつが嫌いだ」


 確かに俺も殺し合いは嫌いだ。人が死ぬところは見たくない。デスゲームじゃなかったら話は別だが……。


『そう言ってるお前さんは、か弱そうで的にもならないねぇ。まずはこの子猫ちゃんを……』

「……や、やめ……」


 女性の震える声。いつ殺られてもおかしくない。俺は前に出たい気持ちを抑えて、ルグアを見る。


「ふ~ん、そっか。殺すなら私の方が得だぜ? 私の価値は高額だからな」


 いや普通自分売るか⁈ 売らないよな⁈ ってか高額ってヤバくね⁉ どんだけ値を……。


「今なら特別大サービスで勝っても負けても、現金100億円プレゼント‼ どうだ?」


 ルグアの方から100億円だと⁈ どんだけ金持ってんだよ⁈ 大金持ちじゃん‼ 裕福すぎだろ‼

 てかPK集団引いてる。完全に腰抜かしてる‼ きっと嬉しいんだよなぁ~。100億円……。

 俺も欲しい……。家とテレビと服にベッドにパソコン、ゲーム機も買って……。


「アレン、食いもんねぇじゃないか‼ 衣食住ちゃんとしないと意味ねぇぞ‼」


 ですよねぇ~。ってそれより、追い込まれてる女性はどうなったんだよ⁉

 俺は周辺を満遍なく探すが姿が見えない。もしかして逝っちゃった? 逝っちゃったの⁈


「その件に関してはご安心を……。ワタシが救出しておきましたので……」


 コンビネーションすご‼ ルグアが話してる間にウェンドラが救出って、最強じゃん‼ 俺には無理‼


「ってことで相当やらかしたわけだから、それに似合った代償をだな……。リアルは殺さねぇよ」

『どどど、どういう……。エレメントを貯めた状態でオーバーすると、確かその分の……』


 PK集団の一人が、恐る恐る言葉を並べた。それにルグアが続ける。


「負荷が発生して"死ぬ"。だろ? その負荷を私一人で処理してやる。ま、私にはほんの少しの暇潰しだろうが……」


 ほんとこの団長はどんな脳と神経なんだよ⁈ 異常という言葉しか思いつかないんですけど‼


「手続きはもう終わってるからさ……。ここから消えてもらうぜ‼ それともう1つ。ゲームオーバーすれば、再ログインはできない。すなわち、このゲームから追放だ……」


 ――パチンッ‼


 ルグアが指を鳴らすのと同時に、空間が静寂に包まれてから数分後。


 ――ドゴォン‼


 爆発の勢いが土煙を巻き起こし、一瞬視界が悪くなる。ようやく見晴らしが良くなった時、PK集団の姿は消えていた。

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