第23話 森林を駆け抜けて

「ルグア団長、ウェンドラ、こっちです‼」


 俺を含めた三人は森林を駆け抜け、モヤがある場所へ移動していた。モヤが見えるのは俺だけで、ウェンドラも気づかなかったとのこと。


「ウェンドラ‼ ID送ったから処理頼む‼」

「かしこまりました」


 ID? プレイヤーIDのことかな? 処理ってなんだろう? モヤが見えるだけの俺には、全くわからない。


「お前のおかげで助かった。理由はもうすぐわかる」

「は、はい……」


 後ろを振り向きメンバーを確認。ルグアは普通に走っていたが、なぜかウェンドラが浮いている。浮いたまま移動している。なんで?


「システム外っていうか、ウェンドラの特別仕様。多分、お前だけモヤが見えるのも、システム外スキルみたいなやつかもな」


 システム外スキルか……。かっこいい名前。俺が使かっても良いのかな? 良くわからん。

 森林を抜けて知らぬ間に開けた場所で、俺達が目にしたのは大量の死亡アイコン。ここで一体何が? もしかしてPK?


「かもな。なあ、モヤっていうのはまだあるか?」


 ルグアに聞かれて辺りを見回すと、同じような黒いモヤ。方向は西に尾を引いていた。

 急いで西へ走る。なんか嫌な予感がしてきた。きっと俺より先にルグアが気づいていると思うけど。


「ルグア、書き換え終わりました」

「サンキュー‼」


 書き換えって何? さっきから気になっている、ルグアとウェンドラの会話。この二人は仲が良いのか悪いのか……。絶妙に意思疎通している。


「実はウェンドラに頼んで、さっき見たプレイヤーのタイムオーバー後負荷対象を、私に変えてもらったんだよ。そうすりゃ死亡者減るしな」


 なるほどぉ~。って、感心している場合かよ‼ 俺‼ パッと見ただけでも五、六人居たんだぞ‼

 それをルグア一人でって……。ほんとこの人が考えてることは、何もかもがめちゃくちゃだ……。


 全然着いていけない。安心して良いのか悪いのかすらもわからない。でも、本人が大丈夫と言ってるのなら信じるしかない。


「エレメント狙いか……」

「なんすか? それ?」

「ステータスで見なかったのか? このゲームにはエレメントっていう通貨があってさ。エネミーかプレイヤーを倒すともらえるんだが……。エネミーが一定確率なのに対して、プレイヤーは相手が持っているエレメントを全て獲得できる」

「なるほど……」


 このゲームにも通貨があるのか……。なかったら購入もできないし、攻略もできないから普通だよね。


「きっとこれはエレメントキラー。他のゲームで言うところの、PK集団だな」


 やっぱりか。PK集団とはプレイヤーキルのことで、無作為にプレイヤーを殺していく団体。

 デスゲームではお決まりの殺戮さつりく集団だ。PK集団がいればいるほど、死者が増えていく。


 そして俺達が辿り着いたのは行き止まり。五人ほどの男性プレイヤーが、一人の女性を襲っている最中だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る