第244話 腕試しとフェレンス到着

「どうやったら帰れるかはわからないか……」


 レンは呟く。今いる場所は、あの世と言われる場所らしくレンはそこに迷い込んでしまったらしい。


「そのうち帰れるだろーよ!昔、父さんとレンで出かけて迷子になったけど、まぁ、帰れたし」


 レンの父親であるライが言う。何気にレンの記憶にないエピソードを語ってくる。


「そんなことあったのか……お母さん、苦労したなぁ」


 困った表情をするレミの顔が頭に思い浮かぶ。


「さーて、いつ戻るかわからないし、暇だろ?なんなら父さんと遊ぶか?」


「まあ、いつ目覚めるかわからないけど。何すんの?」


 キャッチボールでもするのだろうか?と思いながら聞いてみる。


「そりゃあ、息子と久しぶりに会えたからなぁ〜!思い切って腕試しでもするか」


 と言いながらファイティングポーズをとる。


「野蛮なんだけど……本当に父さんなんだよな……」


「そりゃ当然!レンのことを忘れた日はないぜぃ!それ、行くぞ」


 と言いながら地面を蹴ってこちらに向かってくる。スピードは、レンよりも素早く動いているように感じる。


「はやっ!」


「遅いぞぉ?レン」


 すでに父は、レンの後ろに立っていた。いつの間にと思うのは当然だ。


「人って死んだら早く動けるもんなのか?」


「ん?父さんは元からこれくらいの速度で動けたぞ」


 ドヤっと言ってくる。


「て、ことは父さんは、俺よりも……」


「ああ、強いな」


 今度はサムズアップだ。なんだか歯がキラッと光った気もした。



「だから、レンを時間がある限り鍛えてやるよ。父さんの力、少しでも見て帰ってくれよ?」


「それは、ありがたいな」


 と言いながらレンも拳を構えるのだった。






「これ、後で怒られるわよね」


 フェレンスについて、開口一番ルティアが言う。


「ええ、本当でしたらすぐにでも王都に戻ってもらいたいですが、そうもいきませんね」


 ハルカが仕方がないという反応を示す。カラミィがこちらに居る者を連れ戻すのは中々難しい。


「よく、あんなにタイミング良く来れたね」


 エリアスがルティアの転移への滑り込みのタイミングに感心する。


「それはねぇ〜」


「それは、ミラがルティアに合図したからです。ミラなら師匠である賢者カラミィの転移の発動タイミングを見たことがあるのでしょう」


 ミラが言いかけるとナビゲーターが説明する。


「ちょっ!ナビゲーターさん、私が説明しようとしたのに!」


 ミラが悔しそうにナビゲーターに言う。


「あら、ごめんなさい」


「キィー、悪女みたいな反応しやがって!」


 ドヤ顔で謝るナビゲーターにミラが言うのだった。なんだか、レンに似てきている気がすると思うミラだった。



「あれ、ミラが協力したってことは、ミラもルティアと一緒に怒られるんじゃない?」


 エリアスがポツリと言う。


「へ?待って!そうなるのか。ルティア、巻き込んだな!」


「ええ、巻き込んだわ」


 悪びれもせずにルティアが答える。


「ちくしょう!やりやがったな、この悪徳王女!何が第3王女じゃい」


 とルティアの頬を摘む。


「痛い痛い!てか、普通わかるわよ、バカ!賢者なのに知能低くないかしらぁ?」


 取っ組み合いに発展する。



「エリアス、この2人どうします?」


「まぁ、いつものことなので放置で良いかなぁ」


 ハルカの問いにエリアスが答える。もう慣れている流れのためその内収まるだろうと思う。



 ルティアとミラの様子を眺めていると、


「ふふっ、凄く賑やかね!」


 と声がして、フェレンスギルド長、フィレン・アーミラが来るのだった。

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