第242話 我儘とフェレンスへ
王国第2王女ミディアが言った、レミの名前。その言葉で、エリアス達には動揺が走るのだった。
「どうしたの?……もしかして、知っている人?」
周囲の反応に驚いた、ミディアが返す。
「そうなのよ、お姉様。レミさんは、私達特にレンやエリアスにとって大事な人なのよ」
ルティアが説明を行う。
「エリアス……レミさんは」
「大丈夫だよ、ミラ。レミさんは、強い!だから無事……」
エリアスが返すが、どこか不安そうでもあった。
王都のギルドに、国王直々の依頼が貼られた。
「フェレンスの防衛に、帝国の偵察か」
「偵察は、かなり難易度が高そうだぞ」
冒険者達の声を耳にしながら、エリアス達も同様に張り紙に目を向ける。
「フェレンス……行こうかな」
「レンのお母さんのこと、気になる?」
「うん」
ルティアの質問に肯定で答える。自分の命の恩人だ。怪我をしていたという話も聞いたのだ。動きたくないわけがない。
「じゃあ、行ってみよう!」
「相変わらず明るいわね……結構なピンチかもしれないのよ!」
はしゃぐミラをルティアが嗜める。
「大丈夫だよ!私達には、レンもいるじゃない!」
「意識が戻らないレンがね」
「う、あ……」
ミラの言葉が詰まる。
「とりあえず、受けたい人は王城にってことだし戻ろう」
とエリアスが言うのだった。
「そうか、受けてくれるか!感謝する」
ルティアの父、国王が頭を下げる。
「いえ、フェレンスは大事な場所ですし、それに……探したい人もいますので」
とエリアスが答える。
「だが、ルティアよ」
「どうしました?お父様」
国王がルティアに声をかける。なんだろうかという反応でルティアが顔を上げる。
「ルティア、お前をフェレンスに行かせることは出来ん」
「どうしてと言うのは愚問よね」
とルティアは答える。予想は出来ていたのだ。父は、自らが危険な場所に行くのを良く思わないだろうと。
「そうだ。これまでは目を瞑れたが、レン殿もいない……」
「わかりました、私は、無事を祈って待つことにしましょう……」
とルティアが言うのだった。
いつ、何が起きてもおかしくないためエリアス達は、すぐに王都を立つことになった。
「レン、ちょっと行ってくるね。あなたのお母さんのことが心配だから探してくる。私が帰ってきたら、起きててね」
と言い自らの唇をレンに落とす。彼が本で読んだ登場人物のように起きることはない。だが、すぐに戻ってきてくれるとエリアスは思うのだった。
「はぁ、尊いなぁ。私のこの気持ち、拡散したィイ」
エリアスとレンの様子を眺めながらミラが呟く。
「また意味のわからないことを……」
とルティアが呟く。
「マスター達の元の世界で流行っていたものでしょうね」
ナビゲーターが答える。
「ナビゲーターさんも行くんだよね?」
「はい、マスターの大切な人だけ危険な所に行かせることは出来ません」
ただのスキルのはずなのに、彼女には思いやりの心をしっかりと感じた。
「賢者カラミィ殿に転移でフェレンスの方に跳ばしてもらう。みな、よろしく頼む」
「うむ、それじゃあみんな、そこに並んでくれ!」
カラミィが指を刺して促す。
「今回は私も向かいますので、よろしくお願いしますね」
とハルカが言う。
「心強いです!」
とエリアスが答える。
エリアス、人型ナビゲーター、ミラ、ハルカが立っているのを確認したカラミィが詠唱を始める。
「みんな、気をつけてね!」
とルティアが国王の隣で手を振る。
「我儘なお前があっさりと言うことを聞いて驚いているぞ?」
と国王が言う。
「そうですか?お父様。私も大人になったと言うことですね」
とルティアが笑顔で答える。
間も無くカラミィの詠唱が終わり、転移が発動しようとしている。
「このタイミングかー」
ミラが言いながら、手を挙げて指を弾く。
パチンとミラの指が鳴った瞬間にルティアが言葉を発する。
「ごめんなさい、お父様!まだ我儘だわ!」
言い終わる瞬間にはすでに走っていた。
「な!誰か!」
近くの兵士に声をかけようとしたが遅い。
ルティアがエリアス達の所に飛び込んだ瞬間、転移が発動して姿が掻き消えるのだった。
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