第229話 目覚めと侵入
「……ん?」
レンが目を覚ますと、拠点のような場所に寝かされていた。周囲には、他にも寝ている人が多く治療のために動き回ってる人もいる。
「レン殿!目が覚めましたか」
目覚めたレンに気づいたアルキア王子が声をかけて来た。どこか嬉しそうだ。
「王子……いたた……」
起き上がろうとするが身体が思ったように動いてくれないでいた。
「無理なさらないでください。それに片腕も失われています」
レンが腕に目を向けると確かに腕がある場所には何もない。
『気絶してしまい、修復途中であったため再び再生を開始します』
ナビゲーターさんの声が聞こえて、再び腕にエネルギーが集まっていくのを感じる。
「直に治りますので大丈夫です。状況は、どうなってます?」
上空の魔門はすでに開いており、王都で戦った悪魔のような魔物も見えていた。
「聖騎士の皆さんやアルファード殿で懸命に耐えています。それに、神女様が神をお呼びするために祈ってらっしゃいます」
状況は、レンが気絶した時よりも遥かに悪くなっているようだ。
「じっとしてられないですね……俺も何かやります」
と言い立ち上がるとアルキア王子が肩を貸してくれる。
「私もこれくらいしか出来ませんが、レン殿の力になりますよ」
と言い移動するのだった。
「ハカイ、アルノミ」
「喋れんのかよ!はぁぁぁぁ!」
結界の上に落ちて来た黒い化け物目掛けてアルファードが剣を振るう。
だが、化け物は腕を剣のような形に変化させてアルファードの攻撃を受け止めていた。
「あっさりと受け止めやがるとは……それに気持ち悪い」
化け物を見つめながらアルファードが悪態をつく。目の前の化け物……ディザスターには、目がないためこちらを見ているかはわからない。漆黒で口だけがあり不気味に感じた。
アルファードは、飛べるわけではないため一度建物の上に着地する。結界には、ヒビが入っておりまだ大丈夫ではあるが長くは持たないように思えた。
「あんなのが入って来たら不味すぎるよな……まさか、あんな化け物が世界にはいるなんてな」
トップクラスの実力を持つ冒険者をおいて、恐ろしく感じるものだ。
魔門から、黒いスライムのような物が結界の上にいるディザスターに降り注ぎまとわりついていく。
5メートル程のサイズになったディザスターからは、触手のようなものが8本出ていた。そこから再び結界に攻撃しようとする。
「またか!」
アルファードは、攻撃を妨害するべく建物を蹴りディザスターに接近するが直後に自らが吹き飛ばされていることに気づいた。
「速い!ババアの手刀かよ」
拳を使う聖女のことを思い出しつつ、体勢を立て直す。その間にも、ディザスターは、結界に触手を叩きつけ続ける。
そして……パリンと窓が割れるかのような音がなり結界の一部が崩壊する。綻びからディザスターが侵入しようと身体を少しずつ結界の小さな穴に入れていく。
「あれがディザスター!」
アルキア王子に肩を借りながらレンが呟く。
「もう結界が破られただなんて……」
隣の王子の表情は暗い。
「アルファード!無事か!」
「ああ、フェインドラ。だけど結界がヤバそうだぜ?」
ディザスターの近くまでやってきたアルファードにフェインドラが声をかける。
「侵入されてしまっては、迎え撃つしかない。神が降臨する神託にかけるしかないな……」
「とりあえず、俺らで時間を稼ぐとするか……初めてだぜ、ここまでの強敵は」
結界の穴を通り抜けたディザスターは、落下して建物を潰す。
「来たな!いくぞ」
「おう!」
アルファードとフェインドラが攻撃を繰り出そうとした時……
「カミのけはい……ハカイする」
とディザスターが言葉を発して、アルファード達を無視し別の方に向かっていく。
「不味い!神女様の所か?」
「レンや多くの怪我人もいるんだぞ!」
フェインドラやアルファードも慌ててディザスターを追跡するのだった。
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