第208話 王の相談と新たな行き先
「レン殿、リディエル神聖国に行ってもらえないだろうか?」
「はい?」
国王の言葉に対してレンは、戸惑った反応をしてしまう。
場所は、王城。そこには、レンやエリアス、ルティア、ミラに加えて救国の英雄の面々も揃っている。
「いきなり過ぎたな……申し訳ないな、レン殿。詳しく説明するとだな、リディエル神聖国との間に協力関係を結びたいと思っているんだ」
「なるほど……」
とレンは答えるが、完全に理解は出来ていない。
「今回のスティグマの襲撃があって、一国だけでどうにかする事が出来ない事態に今後発展するかもしれないからね、出来るだけ他国とも友好的になっておきたいんだよ」
レンの反応を察してかネーヴァンが言葉を挟んでくる。
「ああ、確かに味方は多い方が良いですよね!助け合いは大事です」
とレンは理解を示す。
「そうなのだ。そのためにこちらからリディエル神聖国に赴こうと思うのだが、私は国を離れられない状況でな。息子であるアルキアに行ってもらおうと思っておる。そのお供としてレン殿に行って貰いたいのだ」
王国の第一王子アルキア・ファン・アルセンティアには、レンも何度か会っている人物だ。真面目な心を持っており、レンも好印象を持っている。
「陛下の頼みでしたら、ぜひお応えしたいですね」
「そう言ってもらえるとありがたい。ただ問題があってな、リディエル神聖国は冒険者を好まない者が多く今回は、レン殿とアルファード殿の2人と兵士を2名程で向かって欲しいと思っている」
確かリディエル神聖国は、冒険者ギルドがないとか聞いたが冒険者が好かれていないというのがあるのは驚きだ。
「少ない人数ですね。王子の身辺は大丈夫でしょうか?」
とレンは一応聞いておく。
「うむ、それは大丈夫だと思っておる。何せ、武道大会の1位と2位がお供になるのだからな!」
と国王は、自信満々に言う。
「確かに、世界で1番安全な場所になりそうだわ」
とレンの後ろの方でルティアが言う。
「もちろん、お礼もさせてもらおう!なんならレン殿とエリアス殿の新居を用意する位のことを言ってくれても構わない!」
「えっ!」
とレンではなく後ろのエリアスが反応する。
「あ〜、確かに家とかは魅力的ですね」
とレンは答える。元の世界では家を建てるとなればかなりの金額が必要になるものだ。ローンなんてのを組んで何年もかけて払っていくものだ。
ゲームなんかと違ってお金は簡単に貯まらないので厳しいものだ。
「仲間達を置いてか……」
とレンは呟きながら後ろの3人を見る。その視線に気付いて3人もレンを見る。
「いきなり、離れるのは寂しいけど……レンの力を必要としてる人がいるならね」
とエリアスが答える。婚約者となったばかりで離れるのは嫌なようだが、認めてくれるようだ。
「お礼も貰えるから良いんじゃない?私達は、ここで鍛えて待ってるわ」
とルティアは、行ってこいという反応だ。
「あの〜、物置でもいいんで新居を手に入れたら私も住まわせてください〜」
とミラは、土下座を決める。行動が速いなとレンは思いながら笑いそうになってしまう。プライドはないようだ。
「みんながそう言うのなら……行きましょうかね、リディエル神聖国に!」
とレンは答える。スティグマに対抗するため少しでも協力を得たいものだなとレンは思う。
「ありがとう、レン殿。また出発の日は追って知らせさせてもらう」
と国王が言いお開きとなった。
「私は、明日フェレンスに帰るから挨拶をしておくわね」
とフィレンがレン達に声をかけてくる。
「はい、お気をつけて!」
とレンは微笑む。
「アリーが会いたがってたからこの後でも会ってくれるかしら?」
と言ったので頷く。きっとアリーは、エリアスと話したい事が多いだろう。
ルティアとミラは、早速それぞれの師匠に修行に連れて行かれていた。ルティアは、普通に向かっていくのだが、ミラは無理矢理に連れて行かれているような感じがあった。
「お、た、す、け〜!もう嫌ダァ!」
とベタなことを言っているが誰も助ける様子はなかった。どんな修行してんだよ、と思わずにいられない。
リディエル神聖国に向かうにはまだ数日は余裕があると思うのでレンも少しは賢者カラミィの所に行って魔法を教えて貰うのもいいかもしれないなと思うのだった。
「こんな所にいましたか、神女様!」
綺麗な花が咲く庭園で植物を優しく眺める若い女性に対して、鎧を着た髪の長い男が声をかける。
「あら、騎士長様ですか。お元気そうでなりよりです」
と微笑む。多くの者がここに咲く美しい花よりも美しいと答えるだろう笑顔だ。
「ええ、元気です。しかし、神女様1人であまり出歩くことはオススメ出来ませんね。悪しき者がいるかもしれません」
と腕組みしながら騎士長が言う。
「そうでしょうか?何かあってもすぐに騎士長様が駆けつけてくれると確信してますわ」
「買い被り過ぎですよ。私が負けてしまうこともあるかもしれない」
と目の前で微笑む神女に言う。
「いえいえ、あなたの実力はアルセンティア王国で最強という冒険者、アルファード・シルフォンにも匹敵するのでしょう?」
若干悪戯っ子のような笑みを浮かべて神女が言う。
「確かに、親友とは互角でしょうね!未だに決着が付いてません。その内、こちらに顔を出すようですので会うのが楽しみです」
騎士長が笑みを浮かべてアルファードのことを語る。心から楽しみにしているのだ。
「それは良いですね。私も是非ともお会いしたいです!それに、私も素晴らしい出会いが近い気がしますので」
とウキウキする様に神女が答える。
「何か未来が見えたのですか?」
「そうですね、ハッキリとしないのですが良い出会いがありますよ。ですが、同時に嫌なものも見えましたね」
と後半は、厳しい表情をして言う。
「それは、聖王殿にも伝えないとですね」
「ええ、帝国と我らがリディエル神聖国には、近いうちに厄介なことが起きることでしょうね。悲劇が始まるかもしれません」
先程までの楽しそうな会話はなくなっていた。
「我ら聖騎士もリディエル神聖国のため全力を尽くして参ります」
と騎士長が言う空を見上げるのだった。綺麗な青空がやがて暗くなるとは今はとても思えないのだった。
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