第190話 怒りと宣言
「ヒャハハ、良い攻撃ですねぇ?さすがは破黒の英雄〜」
レンの攻撃を軽々と受け止めて、余裕そうにサジャードが声をかけてくる。
さらにレンが放った連続攻撃をしっかりと防ぎ切る。
「ちっ……こんなに簡単に防がれるのか!」
通常の状態のレンであるとはいえ、ここまで簡単に凌がれるとは思わず舌打ちしてしまう。
「レン、注意しなさい。サジャードは、相手を怒らせるのにも長けているわ。怒れば相手の思う壺よ!」
とレミが注意してくる。
「そうだな……」
確かにどこか腹立たしく思う自分がいた気がした。先程、自分は舌打ちをしたのだ。いつもならそうそうないことがあった。
「わかってるじゃないですか〜光明の魔女。あなたもイライラしてるんでしょぉ?」
どこか煽るような言い方をサジャードがレミにする。
「ええ、そうね。あなたにはイライラしてるわよ。あなたを、殺すことも私の目的の1つなんだから!」
母からとてつもない気迫を感じた。レンでさえも驚くほどだ。
「ヒャヒャ、あなたもしつこいですねぇ〜。たかだか村1つじゃないですかぁ」
レミとサジャードには、確実に因縁があるようだ。レンに、注意しつつ話を聞く。
「あなた達の所為で1人の少女の運命が狂わされた!これは、絶対に許されない」
レミの言葉にレンは、まさかな……と思うが、次のサジャードの言葉で確信に至る。
「イヒヒ……たかが狼人族のガキ1匹でうるさいですねぇ〜、そのガキどうなったんですかぁ?絶望して死にました!」
「それって、まさか……」
レンは、チラリとレミの方を見る。するとレミは頷きながら
「ええ、こいつもいたのよ。エリアスの村が滅んだ時にね」
と言う。
目の前のこいつがエリアスを!
許せるはずがない!
レンの中で何かが切れそうになる……
レンの髪が白く染まっていく……しかし、
パァン!
とレンは頬を叩かれる。
「はっ!」
「また、同じことをするつもりですか?マスター」
目の前にいるのは人型のナビゲーターさんだった。金髪に白い服を着た彼女は、怒っているようだ。精神に彼女が干渉してくれた。
レンの髪が元の黒い色に戻る。
「危なっ……ごめんな、ナビゲーターさん。同じことを繰り返す所だったよ」
レンは、かつての王都の戦いと同じように怒りによって暴走仕掛けていた。だが、ナビゲーターが止めたのだ。今の彼女は、かつてと違いレンを止めることが出来る。
「なんでしょう?面白いものが見れそうだったのになぁ?」
残念そうにサジャードが言っている。
「私もいるから落ち着いて行きましょう!」
レンの肩に手を置きながらレミが言う。彼女の言葉には安心感があった。
「お母さん……」
「フェ?まさかお2人、親子なんですかぁ?家族で我々に仇なすなんて許されませんねぇ!」
サジャードから黒いオーラが吹き出していた。
「ナビゲーターさん、力を借りるよ!」
レンの髪が金髪になり、周囲に魔法が発動する。
「「マジックバレッド!」」
レンとレミがサジャードに向かって魔法を連射する。
「ヒャハハ、そうこなくちゃ〜。楽しませてもらいますよぉ」
と言い短剣で魔法を打ち落としたり、回避したりする。
「転移!」
移動したレンが刃をふるうがガードされる。
「マキシマムマジック、ファイヤボール!」
レミから強力な火球が放出される。
「ハハッ〜、熱いねぇ!魔法切断!」
だが、火球はサジャードの剣により真っ二つに切られる。
「黒炎付与!はぁぁぁぁぁぁ!」
すぐさま、レンが魔法を付与した剣でサジャードに斬りかかる。
「おっと、少し切られましたかぁ」
サジャードの頬に傷がつくが深くはない。相手は、空中戦にも慣れているようで、動きに無駄がない。
お互いに決定打が当たらないまま、少し時間が過ぎる。
「ふふっふ〜、これはキリが無いようですね。私はここでお暇させてもらいましょうかね」
とサジャードが言い出す。
「逃すわけがないだろう!」
と言いながらレミが魔法を放つが見事な飛行により回避される。
「ここで、宣言させてもらいましょうかねぇ!我々スティグマが攻撃するのは武道大会、決勝戦です。決勝なら多くの人が集まるでしょう?楽しみですねぇ。地獄になりますよ?」
ニタニタと笑いながら言う。
「そんなことを言ったら、大会も無くなるだろ」
わざわざ人を一か所に集めることはしない。
「それするなら、我々は勝手に王都に攻撃させてもらいますねぇ〜。さあ、どうしますかぁ?タイミングがわかる襲撃か、わからない襲撃か。ご自由にどうゾォ〜」
レンとレミが一斉に攻撃するが、サジャードの姿は消えていた。転移でもしたかの様な消え方だ。
「これは、厄介過ぎるな……」
「ええ、私達が決めて良いことじゃないわ。救国の英雄達の力も借りないと……」
とレンとレミが空に浮かびながら言うのだった。
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