第161話 面白いと全力
「ステータス外スキル、アカウントチェンジ!」
「スキだらけですよ!レン殿ォォぉぉ」
ハルカが拳を握りしめてレンに殴りかかってくる。若干ハルカの言語が安定してないような気がした。
「転移」
レンではない女性の声が魔法を発動する。そしてレンが消えた。
ハルカから20メートル近く離れた場所に再び現れる。
「あなたは?レン殿じゃない……」
ハルカが見つめる先……そこに転移して立っていたのは長い金髪の女性、ナビゲーターの姿となったレンだ。
「初めまして、私はマスターのユニークスキルです。そして挨拶はここまでにしましょうか!」
と言い再び転移で跳ぶ。
「そこダァ!」
動体視力が上がっているハルカが武器を突き出すが、それは当たらずナビゲーターが再び転移で移動を続ける。
「一体どう言うこと?レン……あなたは本当に不思議で面白い人ね」
戦闘の様子を見ているフィレンもレンの変化に驚きを隠せないでいた。
「マジックバレット!」
ハルカに向かって魔法を連射する。
「ふふふ!面白いですねぇぇ」
魔法にぶつかりながらもハルカはレンに向かって接近してくる。かなりタフな人だとナビゲーターは、思いつつさらに魔法の連射を強める。
『ナビゲーターさん、接近されると危ないぞ』
レンはナビゲーターに声をかける。
「ええ、私ではそこまでうまく剣などは使えませんからね。近づかれたら私とマスターで切り替えつつ戦いましょう」
「さあ!目の前まで来ましたよぉぉ。どうしますかぁ?」
レンの前に迫ったハルカが言ってくるが、すでにナビゲーターからレンに戻っている。
「こうしましょうかね!」
レンはアイテムボックスから棍棒を取り出してハルカを撃つ。
「ぐうっ……」
ハルカは、吹き飛びながらも態勢を立て直して着地する。接近戦は得意でない状態だと思っての接近だったが、レンに戻ったのは誤算だったようだ。
『マスター、もしかするとハルカ・ミナヅキのステータス外スキル、バーサークというものは知能の低下があるのかもしれません』
「なるほど、道理であっさりと攻撃が通ったわけだ」
ハルカならば予想できて良いかもしれない攻撃だが当たったということはナビゲーターさんの考えが当たっているのだろう。
『ですが、まだハルカが完全に全力でやってない可能性があります。油断しないように行きましょう』
「考え事デスかぁ?」
ナビゲーターさんと話していると目の前に再びハルカが迫っている。拳を振り上げているため横に飛んで回避する。
ドンッ!
「危なっ!」
先程までレンがいた場所には大きな穴が空いていた。
『当たれば一撃で戦闘不能もあり得ますね』
とナビゲーターさんが言う。
「おっかない……」
と思いながら再びハルカの方を見る。
「まだまだ行きますよぉぉ」
と真っ直ぐに突っ込んでくるため再びレンは回避の選択肢を取る。
「避けて、どうにか反撃しなくちゃな」
余裕で避けることが出来たとレンは思ったが、
『マスター追撃です!』
直後にハルカの拳がレンの腹にめり込む。
「ぐはっ……」
よく見るとハルカは、スキルを切っており元の状態に戻っていた。
「同じことをしてみましたが、意外にも効きましたね」
さらに攻撃を仕掛けてくるのをどうにかガードする。そして後退しながら腹を抑える。流石の戦闘センスだ。
「痛いな……これで普通に殴っただけかよ」
「切り替えて使うのは隙をつくことが出来て便利ですよ。普通なら今ので気絶するはずですけどね……」
ハルカは自分の拳を見ながら言っている。確かに並の冒険者では一撃だろう。Bランク試験の時のレンでも一瞬で終わっていたかもしれない。
「結構俺も鍛えたと思ったんだけどな……」
レンは立ち上がりながら、答える。
「これでもかなり驚いてるんですよ?異常な成長速度です。ここまで私に追いついてくるとは」
嬉しそうにハルカが言う。やはり戦闘狂だろうなとレンは思う。
「私のステータス外スキルはですね、デメリットもあるんですよ。頭の回転なんかが悪くなるんですよ。だから魔法なんかもあの時は上手く使えないんですよね」
と説明してくれる。
「確かに威力はありましたが単調な動きでしたね。だけど、工夫すればとてつもないものですね」
先程の一撃のこともあるが工夫次第でスキルは化ける。
「ええ、ですので単純な考えですが頭の回転を上げる魔法道具を使えばどうなると思います?」
ハルカが指に指輪を嵌めながら言ってくる。
「まさか……ですよね。あのやばい力を使いながらいつも通りの考えで動けるってことですか?」
そんなベタなアイテムがあるのかと驚く。そして指輪が光り何かを発動したようだ。
『マスター、これはまずいですよ』
とナビゲーターさんも言っている。レンとしても同じ考えだ。
「さあ、私が出来る最高の状態をお見せしましょう」
と言い再びハルカがステータス外スキルバーサークを発動する。
やはり、これまでも全力では無かったようだ。
「これは、俺もうかうかせずに全力を出すしかないな……」
目の前のハルカからは、真っ赤なオーラが吹き出しており見るからに強そうだ。一歩前に進むごとにレンは汗が流れるのを感じた。
「さあ、行きますよ。レン殿」
ハルカが地面を蹴り上げてレンに向かって来るのだった。
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