第140話 人質と全滅
「なんで倒せないのよぉぉぉ!」
「しぶとすぎる!」
レン型ゴーレムの前に、ルティアとミラは倒れ伏す。
攻撃を加えて、ゴーレムが砕けた時は勝ったと思ったのだが修復するとは予想外だった。
レン型ゴーレムには、自動修復が付与されている。壊れてもまた元に戻るのだ。
「まさか、2人がかりでゴーレムに負けるなんて」
地面に倒れたままミラが言う。
「砕けただけでも凄いことだぞ」
とルティアとミラの間にレンが立っている。そして2人にポーションをかける。ゴーレムは、かなり頑丈に作られているため砕くのはなかなか難しい。それを砕けるということは2人の力がかなりついているということをレンは理解している。
「そんなに強くないとか言っちゃって、普通に強いじゃない!誰も勝てないわよ」
起き上がりながらルティアが答える。
「確かに、私達は人工魔人との戦いでレベルも上がったけどまだまだだよね。あの時もそこまで戦うことが出来なかったし」
ミラは、未だに地面に寝ている。
「2人とも頑張ってるから、やる気をなくすなよ?ほらエリアスを見てみろよ」
とレンが向いた方向をルティアとミラも向く。
「確かに強いけど、本物のレンはこんなものじゃない!」
ゴーレムの腕を細剣で的確に貫き壊す。だが修復していくためさらに攻撃を加えていく。
「はぁぁぁぁぁぁ!雷突」
少しでも修復を妨害するために、連続で突き技を放つ。
「まだまだぁぁぁ!」
とエリアスが攻撃し続けていた。
「やっぱり凄いわねぇ」
「これまでの経験から私達とは違うよね」
とルティアとミラが呟く。2人は、冒険者になってまだ日が浅い。経験というのも戦いにおいては、大切な要素になってくる。
「さすがに限界……」
いくらか時間が経ちエリアスが限界を迎える。剣を手から取り落として倒れ込む所をレンが受け止める。
「お疲れ様!良い感じだよ」
「強くなれてたのなら……良かった」
ぐったりしながらエリアスが答える。
何度もゴーレムを砕くことが出来ていた。エリアスの力も出会った時から遥かに上がっている。ポーションを飲ませながらレンは思うのだった。
ちなみに、倒れるときにエリアスだけしっかり受け止めたことにルティアから苦情が入った。申し訳ないと思う。
アンナとアイリの2人はというと、協力してゴーレムと戦っていた。アンナを守る立ち回りをするアイリにとっては、かなり良い修行となっているだろう。アンナも隙をついてゴーレムを破壊するなどしている。2人のコンビネーションの高さに、レンは、目を見張るものを感じていた。
その後、セインとルノのルーキー2人には、ゴーレムが相手は分が悪すぎるためじっくりとレン達で修行をすることになった。
支援系のルノには、ルティアとミラがイメージなどをじっくりと教えていた。ルティアは、教えることに慣れていないため苦労しながらも頑張っている。
セインに対しては、レンとエリアスで教えていく。
レン達が組み手をするがやはりレベル差などがありすぐに限界が訪れる。
「やばい!キツい……」
と言い、座り込む。
「動きに良いものを感じるな。この調子で頑張っていこう」
とレンが声をかける。
「はい!頑張ります」
レンの言葉が嬉しかったのかすぐさま元気を取り戻していた。
ルノの方も頑張っているとルティアが言っていた。なんでも自分が優秀な魔法使いにすると意気込んでいる。
ついに警戒する相手に動きがあった。
「どうしても俺達、炎の双剣の傘下に入るのは嫌だと?」
ギルドの中、そこでレン達に声をかけてきたのは炎の双剣のクランリーダーだった。何人も仲間を引き連れている。
「その話は断ったはずですが?我々があなた方の傘下に加わることはない」
レンははっきりと答える。
「こっちが下手に出ていれば良い気になりやがって!それだったら、後ろの嬢ちゃん達だけでもどうだ?こんな仲間に頼るしかない男なんかとクランにいても嫌だろう」
とレンの後ろにいる、エリアス達に声をかけ始める。そこには、邪な気持ちも含まれているだろう。後ろでもニヤニヤしている奴らが何人もいる。
「は?レンが仲間に頼るしかない男?あなた、本気で言ってるの?」
エリアスの殺気がギルドに流れ出す。
「勝手に決めつけないでくれるかしら!ここにいる全員でかかってもレンに勝てる確率はゼロよ。レンを倒したいなら救国の英雄でも連れてきなさい」
「実力も測れない残念な人達、なんならレンと戦ってみることだね。都市でトップクラスのクランとは思えない人達」
ルティアとミラの言葉にレンを舐めていた炎の双剣のメンバーがたじろぐ。
「そうだぞ!レンさんを悪くいうな!」
「本当よ!最低だよ」
とセインとルノの2人が続く。
「お前ら、調子に乗りやがって!」
クランリーダーが剣を抜いて斬りかかろうとする。
レンは、すぐさまそれに対応しようと動くが間に人が入る。
「なっ!」
炎の双剣のクランリーダーは、剣があっさりと受け止められていることに驚いた。
「ギルドの中で騒ぎを起こすでない……処分される覚悟は出来ているかの?」
「ギルド……長!」
頭がハゲたお爺さんという感じの人だ。だが、体格は筋骨隆々で戦士と言っても過言ではない風貌だ。
「すまんのぉ、ギルド内で揉めるのは禁じられとるからの。規則は、最も大事じゃ」
レンの方を向いてギルド長が言う。その言葉にはかなりの重みがあった。
「いえ、仲裁感謝します。ギルド長。炎の双剣が執拗に勧誘をかけてくるもので」
レンは、冷静に返しておく。
「くそっ、こうなったらお前ら!俺達とクラン戦をしろ!お前らが負けたら俺達の傘下に加わってもらうぞ」
「そんなこと、こちらが承諾するわけないだろう?クラン戦は双方の同意が必要だ!」
アンナが言う。相手の発言がさっきからかなり無茶苦茶なもので正直驚きがあった。
「同意することになるぜ?今頃、ガラ空きのお前達のクランハウスにいる奴らが人質にされてるからな」
と言う。
「なんだって」
とレンが驚くポーズをとる。大根役者のような驚き方だ。
「なんだ!その緊張感のない声は、仲間が人質になっているんだぞ?さっさと、クラン戦に同意しろ!」
クランリーダーがレンの反応にイライラし始める。
その時、ギルドの扉が空いてボロボロの人が入ってくる。そして、炎の双剣のリーダーに言った。
「リーダー、クランハウスに……攻撃しようとしたメンバー全員が……やられました」
と言い倒れる。気絶したのだろう。
「一体何がどうなってるんだ……」
炎の双剣のクランリーダーが呟く正面でレンは、ただ微笑んでいるのだった。
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