第139話 修行と剣神の加護
「凄いわねぇ」
クランハウス内に置かれたゴーレムを見て、ルティアが感心の声を上げる。
「ルティアの生命魔法の使い方を真似させてもらったんだ。あまり時間をかけずに完成させることが出来たよ」
ルティアの生命魔法は、かなり優れたものだ。いつもは、ポンコツな印象があるが、徐々に聖女に近づいているように感じる。
「役に立てたのなら良いわ。人の役に立つのが聖女だもの!」
先程のことを気にしているのか、聖女らしくあろうと頑張っている。
「ラノベなんかで、ゴーレムに警備をさせてる展開はあるけど自分で作るとなると大変なもんだな……」
とレンは呟く。ナビゲーターさんと話し合い、ルティアの魔法を参考にしながら完成させることが出来たのだ。
『いくらマスターが優れていてもやはり難しいものはいくつもあるものです』
完璧な者などいないといった所だろう。現にレンはまだ、スキルを完璧に使いこなせていない……スキルには無限の可能性が秘められているのだ。それをいかに引き出していくかは本人次第だろう。
ゴーレムは、人と同じサイズのものから大きめのものまである。
さらには、
「まさかこれって!」
とエリアスが一体のゴーレムを見て驚きの声を上げる。
人型の普通のゴーレムだ。だが、その見た目はレンに酷似している。
「ああ、見た目に関しては俺をベースに作ったんだ。工作って意外と楽しいものだって気づいたよ!」
とレンが答える。
ここまで正確な物を作れたのは、ナビゲーターさんのおかげだ。彼女の指示通りに作成し完成させた。
「まさか、これもレン並みに強いとか?」
とミラが聞いてくる。
「いや、そこまではないな……多分。あくまでゴーレムだからな」
自分には及ばないし、強くないとレンが答えるが周りはあまり信用してないように見える。
「まあ、修行の相手なんかにすると良いかもな!」
と提案する。レンが迷宮都市にいる間はここの守りは心配いらないだろうからクランメンバーの修行で活躍が見込める。
「そうだな、ならば私も使わせてもらいたい」
とアンナが言う。
「アンナは結構強いから、ゴーレムじゃなくて俺自身が相手をしようか?」
彼女の強さはエリアスにも匹敵するかもしれない。今後のことも考えてさらに実力を伸ばしておこうと思う。
「それはありがたいな。だが、街が壊れるような力は出さないでくれよ?」
「なんか俺、危険物みたいな扱いになってないか……」
そんなに俺は危ないですかね?と思い落ち込む。
「十分危険物よ」
「グハッ!」
ルティアの攻撃でレンはダウンする。
「大丈夫!大丈夫だから!」
エリアスが必死に励ましてくれるのを聞きながらレンは立ち直っていくのだった。
気を取り直して、修行をすることにする。
レンの正面にはアンナが立っている。
「レン、私は、君を倒すつもりで掛かる。だから、君も手加減をしないでくれよ!」
と言い紅色の剣を引き抜く。
「ああ、お互い出せる力を出していこう」
レンも黒い剣を引き抜きながら答える。
お互いに剣を構えて、相手を探る。剣神の加護もあってかアンナの構えには、隙がない。
そして先に仕掛けたのはアンナだった。ドンッと地面を勢い良く蹴りレンの方に向かう。
「はぁぁぁぁぁぁ!剣神の舞」
アンナが乱舞する。一撃一撃、鋭い攻撃がレンを襲う。
「身体強化!」
レンは、それにスキルを使用して打ち返していく。
カンッ、カンッ、カンッ……
幾たびも剣がぶつかり合う。
「スピードが上がってる!」
レンがアンナの変化に気がつく。攻撃の速度が徐々に上がってきているのだ。
その間もアンナは、無心に剣を振り続けている。
「転移!」
レンは、アンナの後ろに回り剣を振り下ろす。
「くっ!」
アンナが小さく声を漏らして剣を受け止めたため、レンは距離を取った。
「凄い力だな!これは、強い」
とレンが言う。
「それにしては、あっさりと対応してきたな」
アンナが剣を構え直しながら言う。
「まだ対応できる速度だったから。無限に速度が上がるとしたら厄介だ」
とレンも剣を構え直す。
「炎剣!」
「炎の剣!」
2人が武器に炎を付与してぶつかる。間近で剣を受けると熱さを感じるほどの出力だ。
「転移!」
レンが転移を使用して、アンナをあらゆる方向から攻撃する。
「こっちか!」
アンナもなんとかレンの攻撃に対応していく。
「さあ、もっとペースを上げていくぞ」
二刀流になり、さらにレンの攻撃が炸裂していく。
「なんと……か、凌いだか…」
アンナが、地面に座り込みながら言う。レンの攻撃を防ぐことが出来たのも一重に剣神の加護があってのものだ。
「前よりも、強くなったんじゃないか?」
とレンが声をかける。確かにアンナの動きは、ほんの数分前よりも確実に良くなっている。
「ああ……そうだな。だが、全く届かないとはな」
とレンを見る。彼は、すでに全く呼吸が乱れていない。もう回復したということだ。
「でも続けていれば、いつかは追いつけるかもしれない。何事も続けないとだ」
とレンが言い、手を差し出す。彼女の短期間の成長を目にしてこれからもさらに伸びるだろうと思った。
「ふふ、さすが破黒の英雄だ。その位置に立てるくらいになってみたいな。この巡り合わせに感謝するよ」
と言いアンナは、レンの手を握り立ち上がるのだった。
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