第121話 マグノリアと弄び
レンとエリアスの2人は、ルティア達と合流していた。
「まあ無事だよね。特に問題は無かった?」
ミラが当然だろうねという反応で声をかけてくる。
「そうだね。洗脳しようとしてきたけど、レンのお陰でなんとも無かったよ」
「洗脳!やっぱり酷い事をしようとするわね」
ドン引きだと言わんばかりにルティアの顔が引きつっている。確かに洗脳ほど、非人道的な行為もないとは思う。
「レンさん……お姉ちゃんには会えましたか?」
アイリは、やはり姉のことが気になって仕方がない様子だ。
「ああ、もう少ししたら助けられると思う。手は打ってきたから」
「ありがとうございます……本当に色々なことを手助けいただいて」
とアイリが頭を下げる。
「無事に助けられてから喜んでね。まだ何が起こるか分からないから……」
そう相手は、スティグマの息がかかったもの……また何かを仕掛けてくることは明白だ。
「相手の様子を探ってみるよ。プログラミング起動」
レンは、新しいユニークスキルを発動する。
「そういえば、使うとか言ってたね。上手くいったの?」
とエリアスが聞いてくる。彼女には、真紅の宝剣のクランハウスで使用すると伝えてあったのだ。
「みんなに説明するのは難しいけど……アンナに、ウイルスってのを付けてきたんだ」
日本人である、ミラとレミ以外は良くわかってないようだ。こちらでは、ウイルスという言葉は使わないらしい。
「ウイルスって、病気とかじゃなくてパソコンとかのよね?なかなか危ないものを作ったわね」
パソコンや携帯などに送り込まれて情報を盗み取るアレのことである。
プログラミングのスキルを発動すると、色々な機能が頭に出てきたが、今回はウイルスを作ることにしたのだ。
「名付けてレンウイルスと言った所かな!アンナと握手した瞬間にウイルスを付与してきたんだ。敵にもそうそう気付かれない」
「レンウイルスって名前、ダサいわね……」
ルティアがボソッと呟いたのを聞いた。心にクリティカルだ。後でお仕置き決定とする。
ミラがみんなにウイルスについて説明してくれている間、ウイルスを通して真紅の宝剣のクランハウスを覗くことにする。
見えたのは、王都で見たスティグマの筆頭だった。確か魔法部隊だとか言っていたような……
「スティグマ筆頭が真紅の宝剣の所に来てる!」
レンの呟きにいち早く反応したのはレミだった。
「とうとう尻尾を出したわね。ここに来た筆頭は誰?」
普段の光明の魔女としての優しさは、感じられず燃え上がる炎のようなものを感じた。それだけスティグマを許せないのだろう。
「魔法部隊筆頭の女だ。真紅の宝剣の人達に変な注射を打ってるし……」
「マグノリアね……それに注射か。嫌な予感がする……真紅の宝剣のクランハウスの近くに待機しましょう」
とレミが言うので従うことにした。
「お姉ちゃんは、無事なんでしょうか?」
「ああ、危なくなったら俺のユニークスキルを駆使してなんとかするから」
不安そうなアイリに答える。プログラミングを使って洗脳を解くことも可能だが、もう少し人形を演じていてもらいたい。アイリには、申し訳なく思うが……バックにマグノリアが付いていなければすぐにでも洗脳を解いてこちらに取り戻したい所だが今は様子をみたいと思ったのだ。
レンの視界には、注射を打たれ苦しむメジスが映されていた。直前の会話から予測するに何かの実験に使うつもりのようだ。
「なんだ?メジスの様子が……」
メジスに変化があった。体格が格段に良くなったのだ。筋肉が膨張したとでも言うだろうか。それに肌も紫色に変色している。元の姿から格段に離れていくのだ。
「魔物みたいになった……これは、まずいんじゃないか?」
と言いながらレンは走り出す。
後ろからはみんながついてきている。
「ちょっと!説明くらいしなさいよ」
「多分、説明する余裕がないことが起きてるのかも?」
説明を求めるルティアにエリアスが答える。
真紅の宝剣のクランハウスの近くにいたためすぐに到着した。
「なにあれ!」
ミラが驚きの声を上げる。クランハウスの屋根を突き破って何かが飛び出して来たのだ。
「あれは……人じゃない……」
「魔物みたいに見えるわよ」
レンの呟きにルティアが答える。
さらにクランハウスが吹き飛び中から出てくる女の人がいた。
「あら、久しぶりね。破黒の英雄くん。私のことは覚えててくれてるかしら?スティグマ魔法部隊筆頭マグノリアよ」
杖を持った髪の長い、ヴァイオレットの瞳の女性だ。
「まさか、真紅の宝剣の人を?」
「使えないから処分したのよ。ちゃんと再利用したから良いでしょう?」
「確かに真紅の宝剣は、スティグマに関わった……だけど、お前が勝手に弄んで良い命じゃないだろ!」
レンが剣を抜いて突き付けながら発する。
「たかだか、数十単位の命よ?我らスティグマのために捧げてもらうわ。光明の魔女も一緒にいるならまとめて殺してしまおうかしら」
と言った直後、さらに多くの魔物になったであろう真紅の宝剣のメンバーが出てくる。
1番後ろの方では、人形のようにアンナが立っている。特に何かされた様子はない。
「お姉ちゃん!」
アイリが叫ぶ。
「破黒の英雄に、その仲間……光明の魔女、そしてあなたは、アンナ・フェロルに捨てられた妹ね?あなたも洗脳しようとしたけど何かしらの力に阻まれたから関われない様に仕向けたのよ。そんなあなたまでいるなんてまさに、大集合という感じね」
マグノリアの言葉からレンは、アイリは、盾神の加護に守られたのだろうと推測する。
アンナ・フェロルとアイリ・ガーラム……2人の人生もスティグマに狂わされたということだ。
「人の人生を……命を狂わせた罪を償え、スティグマ!」
レン達は武器を構える。
「迷宮都市ごと、ここで潰してあげるわ。この人工魔人達でね」
戦いが始まる……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます