第120話 脅しと拒絶

 レンとエリアスの待機している部屋に入ってきたのは、副リーダーと人形のように感情がないクランリーダーアンナ・フェロルだった。


「初めまして、私はクラン真紅の宝剣の副リーダーを務めておりますメジス・シーズと申します。こちらがご存知とは思いますが、我が真紅の宝剣のクランリーダー、アンナ・フェロルです」


 と男が自己紹介する。


「初めまして、レン・オリガミと申します。Bランク冒険者です。そして隣がパーティメンバーのエリアスです。どうぞよろしく」


 隣でエリアスがペコっと頭を下げる。副リーダーメジスが握手を求めてきたためレンはそれに応じる。


 そしてレンは、すぐさま行動する。


「いやぁ、初めまして、アンナ・フェロル殿。私みたいなしがない冒険者のことは存じないでしょうが、私はあなたのファンでして握手させてください!」


 と言いアンナの手を取って握手する。普通ならば突然握手され驚くだろうが、アンナの表情は全く変化する様子がない。


「私どものリーダーは、感情が薄く主に戦うことを好んでおられますので……話は私の方からさせていただきます」


 レンの行動にあまり良い顔はしてなかったが、特に何か言われるでもなく話しを進める。


「そうですか、よろしくお願いします」


「ええ、それで今回お呼びさせていただいたのは、レン殿達が一体どのようなユニークスキルを手に入れられたのか非常に興味深く、よろしければ教えて頂けないかと思いまして」


 やはり、ユニークスキルに興味があるか……とレンは思う。ユニークスキルは、1つでも戦況を大きく変えるものだ。手に入るチャンスが有ればみんなが入手したいと思うことだろう。


「申し訳ありませんが、ユニークスキルの効果については教えられません。情報を明かす……それがどれだけこちらに不利益があるか」


 まずはハッキリと断っておく。レンのユニークスキルは、特殊であるため教えたくはない。


「そうですか……それは残念ですが、我らとしてもユニークスキルを使ってどうにかしたいものがあります。都市最強のクランである真紅の宝剣を敵には回したくはありませんでしょう?」


 あっさりと脅しの形をメジスが取ってくる。もう少し上手く交渉してくるかと思ったが。


「それは怖いですね。ですが、私達はあなた達に負けたりはしませんよ。50階層を初見で攻略した我々なら」


 レンも負けじと言い返す。50階層を攻略したを強調して発言する。


「本当に勝てるおつもりで?そちらの人数は6人でしょう。クランの戦力には到底届かない」


 なんとしてでもユニークスキルが欲しいらしい。


「完全な脅しですね。ギルド報告させてもらいますよ」


 レンは、冷静に答える。


「最近、迷宮都市にやってきたあなた方より、クランである我々の言葉が信用されるのは明白ですよ」


「それはどうでしょうか?」


 と言いながらレンはスマホを取り出す。



「中には、私とあなたの先程からの会話が入っています。これを証拠としてギルドに報告しましょう」


 と言い、記録した音声を流す。するとしっかりと先ほどの会話が流れるのだった。


「なんだ……その魔法道具は……」


 メジスは愕然としながら言葉を発する。


「かなりレアなものですよ。それで、どうしますか?これで話は終わりでしょうか?」


「くそ、調子に乗りやがって!すぐに黙らせてやる」


 と言いながら、メジスはキューブ型の魔法道具を取り出す。


「なんだそれは?」


「ハッハッ!これでお前らも洗脳してやる!我々のために懸命に働いてもらおうかぁ」


 とニヤケながら言っている。


「そうですか、お断りします」


「私も」


 レンとエリアスは、あっさりと断りの言葉を言う。


「は?どうして洗脳されてない。これは、どうな相手でも洗脳出来るはず……」



『フィルタリングにより無効化しました。エリアスも同様です』


 とナビゲーターさんの音声が頭に流れる。レンの加護が与えられているため、守ることができるのだ。


「おのれ、もう一度だ!洗脳しろ」


 とメジスが言っているが効くはずがない。


「諦めろ。その技は効かないし、とっくに正体も見えてるんだよ、スティグマ」


「き、貴様らの仲間の宿を襲撃する準備はできてるんだ。従わないなら残りの仲間を殺すぞ!」


 メジスは、最後の手段を取ることにする。


「やってみろよ」


 だがレンから返ってきたのは、余裕の発言だった。


「強がりやがって、殺せー!」


 通信系の魔法道具に向かって叫ぶ。すぐにレンの仲間を殺すことだろう。





「どう……して……」


 メジスに殺しを依頼されていた者たちが地面に横たわっている。


 みんなあっさりと敗北したのだ。1人の魔女に……


「本当に襲いに来たわね」


 とルティアが言う。


「さすが光明の魔女……強いなぁ」


 とミラも感心している。


「息子の大切な仲間に手出しはさせないわ」


 レミは、力強く言う。




『あなたの仲間は、全員倒したわよ!さっさとお縄につきなさい!』


 通信用のアイテムからルティアの声が響く。


「なんだと……」


 お縄にって……と思いながらも、母に感謝する。


「もう用はないですよね。俺達はこれで帰らせてもらいます」


 レンとエリアスは、立ち上がり真っ直ぐに出て行く。




「くそ……どうにかせねば、どうにか……」


 俯きながらメジスは、必死に考える。


「結局失敗に終わったみたいね」


 転移で現れながら女の声が部屋に響く。


「ま、マグノリア様……」


 こちらに来てしまった……メジスは、まずいと思った。


「待ってください。すぐにでも奴らを追いかけて……」


「もう、いらないわ。あなたは、用済みよ」


 と言いながら注射器を取り出す。


「マグノリア……様、それは一体……」


 メジスは、後退りながら聞く。


「あなたは、用済みだけど身体位は役に立つでしょう。少しでも暴れて頂戴」


 と言いメジスに注射を打つ。


「なっ……がぁぁぁぁぁぁ!」


 メジスの叫び声がクランハウスに広がる。


「さて、どうするかしら。破黒の英雄くん」


 マグノリアは、笑うのだった。

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