第112話 野望と到達

 45階層のボス部屋もあっさりと突破したレン達は、46階層に足を進めていた。


「さすが、レンね。あっさりと倒していくわ」


「そうね。レンは、こんなに強いんだね……」


 ルティアが呟くと光明の魔女は、驚いていた。


 45階層のボスもレンがあっさりと倒していた。ルティアやミラのレベルを考えると、勝つことが難しいため今回のスティグマの企みを防げたらまた下の階層からやり直そうと思っている。








 迷宮都市……クラン真紅の宝剣の本部。


 ある一室で男が水晶に向かって話していた。


「ついに迷宮イージス、50階層のボス部屋を発見しました。まもなく我々の力となるユニークスキルが手に入ることでしょう」


『そうですか。良くやったと褒めておくとしましょうか。あなたを副リーダーに任命したのは正解だったようね。それで人形はどうかしら?』


 女性の声が副リーダーに届く。


「は!未だに我らが駒として動いております。実力で言えば我らの上ではありますが、さしもの剣神の加護でも我らが洗脳には耐えきれなかったでしょう。彼女にはしっかりと活躍して頂きますよ」


 自信満々に男は語る。


『そう!なら良いわ。今後とも我らスティグマのために活躍してもらいましょう。それで攻略はいつになるのかしら?』


「明後日になっております。明日には広場で出発の式典を行う予定です。我らが英雄として讃えられることは決まったも同然です」


 失敗するはずもないだろうと思いながら男は語る。


『それじゃあ、せいぜい頑張ってね。もしも失敗しようものなら……』


 どうなるかわかってるだろう?と言わんばかりに女性の圧力を感じる。


「わかっております。しかし、我らの動きなど止められますまい……」


『光明の魔女……それに破黒の英雄が何か仕掛けるかもしれないわ。注意を怠らないようにしなさい』


「承知しました。では……失礼します。筆頭……マグノリア様」


 と言いながら男は通信を切るのだった。


「副リーダー、もう少しですな」


 近くに並んでいた大勢の彼らの部下の内1人が声をかける。


「ああ、長かったぞ。マグノリア様に命じられてから、良い手駒を手に入れて50階層まできた。ようやく、我らの存在を知らしめられる」


「「「我らスティグマの力を知らしめる」」」


「間も無くだ。私達がこの都市を支配するのも。ハッハッハッハッアハハハハハハハハハハ!」


 と男は笑い声をあげる。


 まだ、レンや光明の魔女、レミが迫っていることを知る由もない。





「本当に辿り着いたんですね……」


 アイリが驚きながら声を出す。


「ここが50階層……綺麗な場所!」


 エリアスが周りを見ながら呟く。それもそうだろう、一面花畑が広がっているのだ。


「なんだか、緊張感が抜けていくな……」


 レンは呟く。それほどに美しい景色だ。


「とりあえず、50階層についたから迷宮を出ましょう。真紅の宝剣がどう動くかも見なければならないから」


 とレミが言う。みな従って転移結晶で戻るのだった。





 外はすでに日が暮れており、夜になっていた。


「あっと言う間に50階層についたと思ったけど、意外と外は時間が進んでるものね」


 ミラが魔法で灯りを出しながら言う。


「ああ、千里眼を使って楽をしたとはいえ、移動時間ばかりはどうしようもないからな」


 体力的な問題にもなるのだ。レンは大丈夫なのだが、ほかのメンバーは疲れが見える。



「私は、真紅の宝剣を探ってくるから……みんなは休んでいてね」


 と言いレミの姿が掻き消える。


「転移か……相当な腕だな……」


 レンが感知できる範囲からすでにレミはいない。


「アイリ、大丈夫かしら?」


 ルティアが声をかける。姉のことで不安になっていることだろう。


「えっ!ああ、大丈夫です。すみません、心配をおかけして……」


 迷宮ではなんとか大丈夫そうだったが、今の状態は不安を感じる。


「とりあえず、時間も遅いから休むとしよう……光明の魔女が戻ってくるのにも時間がかかるだろうし」


 とレンが言い、歩き始める。





 宿で食事なんかも済ませて、レンとエリアスは、迷宮都市の外に来ていた。


「よし、50階層ボスのこともあるけど、修行だ」


「そうだね。頑張ろう!」


 と2人で気合を入れる。


『それにしても、マスターの母親まで異世界にいるとは予想外でしたね』


「そうだな……」 


 驚きが連続して起きるよなと思う。


「ねぇ、レン。レンはお母さんのことをお母さんって呼ばないの?ずっと光明の魔女って言ってたから悲しんでるかもよ?」


 とエリアスが魔法を使いながら声をかけてくる。


「そうだな……なんていうか、俺の整理がついて行ってないんだ。悲しんだのは覚えてる。でも、新しい母親が出来て……愛情をもらって……あぁぁぁぁ難しいな」


 レンは頭を抱えながら答える。


「そっか、でもせっかく会えたんだから……」


 とエリアスが言う。彼女も親を亡くしたこともあり、親が生きているレンには親を大切にしてほしいと思っているのだろう。



「そうだな、騒動が終わったら向き合ってみるよ。案外どうにかなるかもしれないしな」


 とレンは微笑み、エリアスに感謝するのだった。

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