第106話 氷龍とドラゴンスレイヤーミラ

 ここまでの階層の魔物でレンにとって満足できる相手はいなかった。アイスフィッシュが少しは、相手になるかもと思い攻撃する。


「ファイヤウォール!」


 レンの炎の壁によって、アイスフィッシュは一斉に焼き尽くされる。炎を通り越してくるものは、一体もいなかった。レン達にたどり着く前に完全に燃やし尽くされてしまうのだ。




「やっぱり、まだ上の階層に行かないとな……」


 とレンは呟く。もう少し手応えがあるかと期待していたが、そこまでの力がアイスフィッシュにはなかった。


「やっぱり、強いなぁ……これは追いつくまでどれだけかかるか」


 レンの魔法を見たミラは自分とのとてつもない差を実感するしかなかった。


「諦めない限りは、絶対に追いつける。この世界に来た頃の俺じゃ、こいつらには勝てなかっただろうし」


 ミラは、まだこの世界に来て数日だ。レン達に着いてここまでやって来ているだけでも褒められることだ。


「しかし、突然出てくるとあれは驚くわよね。ファイヤドール!魔物が来たら迎撃しなさい」


 ルティアは、パーティの周辺に数体の火の人形を出現させる。


 その時、アイスフィッシュが飛び出して来たが、すぐさまファイヤドールに捕まえられ燃やされた。


「これは、頼り甲斐がありそうだね」


 とエリアスは、火の人形を見て言う。





「あった、あれじゃないか?ボス部屋」


 レンが指を刺した方向には、巨大な氷の扉がある。


「さて、どんなボスが出て来るかね〜」


 意気揚々とミラが扉を開ける。



「グルルルルァァァァァァ!」


 中にいたのはドラゴンだった。ミラは即座に扉を閉める。


「いやいやいや、無理でしょ!ドラゴンって……」


 とレン達の方を向いて言う。さっきまでの勢いはどうしたことか……


「別に戦ったことが無いわけじゃ無いからな、行くぞ」


 と言いながらレンが扉を開ける。


「どんな経験してんのよ……」


 とミラ達も後に続くのだった。


「あれは、氷龍だね。黒龍と比べたら強く無いよ」


 とエリアスが言う。


「いやいや、黒龍って出たら町が滅ぶわ。あ、そういえば、レンとエリアスは戦ったんだったわね」


 とルティアも続く。確かに黒龍戦は、死にかけたものだ。


「とりあえず、私が前に出ますので!」


 と盾を持ちながらアイリが進む。




「ガァァァァァァァァァ!」


 氷龍は、レン達を威嚇するかのように叫び氷のブレスを放って来る。


「止めます!くうっ……冷たい」


 アイリは、盾を前に出してブレスの氷を受け止めている。だが龍のブレスには、相当な寒さがあるようで大変そうだ。


「ファイヤ」


 レンが火魔法で援護する。レンの炎の威力の方が強く、氷をあっさりと溶かす。


「グルルルルァァァァァァ」


 レンの炎を恐れたのか氷龍は、叫びながら宙に浮く。ボス部屋は、天井もかなり高いため広々と動ける。


 そして上空から氷ブレスを放って来る。普通の冒険者からしたら死の雨といった所だろうか。レン達にとってはただの雪だが…


「「ファイヤ!」」


 ルティアとミラが火魔法でブレスを受け止める。


「アイリ、私を打ち上げて!」


「了解です!」


 走ってきたエリアスをアイリが盾を使って宙に打ち上げる。


「ライトニング!」


 魔法も発動しエリアスが氷龍に迫る。


「俺も行くか」


 レンも魔法を使い宙に浮く。すぐさま加速してエリアスに追いつく。


「ガァァァァァァァァァ!」


 氷ブレスが放たれるが、レンが火魔法で完全に相殺する。


「エリアスが右、俺が左を斬る!」


 とレンは隣を飛ぶエリアスに声をかける。


「わかった!」




 2人は、ドラゴンに迫り左右から剣で攻撃する。


 ダメージを受けたドラゴンは、地面に墜落するが、下では魔法の準備を済ませたルティアとミラが待機していた。


「「ファイヤウォール」」


 2人の魔法により、氷龍は完全に絶命する。



 盾で飛ばされた時の威力が無くなり、下に向かって落ちるだけのエリアスをレンは受け止めて下に降りていく。


「ありがとう、レン!」


「どういたしまして!」


 と言いながら着地する。


「レン、あなた飛べるのね!ずるいなぁ。全人類の憧れを叶えやがって〜このこの〜」


 ミラは、空を飛びたかったようだ。レンも飛びたくて覚えたわけだが……



「案外、ドラゴンって倒せるものなのねぇ。今度、お母様やお姉様に自慢しようかしら」


「かなり、驚くかもな……」


 ルティアは、家族にドラゴンを倒した事を報告するようだ。国王なんかは、腰を抜かすかもしれない。



「よし、収納したし次に行くか」


 アイテムボックスに氷龍を収めたレン達は次の階層に向かう。



 31階層に到達した時に思い出したかのようにミラが叫ぶ。


「そういえば、さっき氷龍を倒したから、もしかして私ってドラゴンスレイヤー?やったぜぇぇぇ!」


 そんなに憧れてたのか……と思いながらレン達は、関わらないように話さない。アイリには変わった奴なんだと伝えておく。


「ちょっと、みんな白けてるわね」


 とミラは不満げだった。話してもややこしくなるだろうな……と思う一行だった。





「思えばもう30階層を超えたんだな。良いペースじゃないか?」


 レンはみんなに聞いてみる。


「速いなんてものじゃないですよ。普通この階層辺りからは、ボス部屋に少数では挑みません」


 アイリは、ありえないという感じで語る。


「「「レンがいるからねぇ〜」」」


 エリアス、ルティアとミラがそろって答えるのだった。

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