第100話 挑発と魔力弓

 レンとアイリの2人は現在、25階層にやってきていた。


「普通は、こんなにスムーズに攻略出来ないものですけどね……」


 とアイリが呟く。


 アイリは、少しでも役に立つために盾で前に出ようと思ったみたいだが、その前にレンが一撃で倒してしまうのだ。これでは、寄生しているようだ。



「あんまり参考にならないだろうな……アイリが戦った方が良いな。何かあれば俺が援護するから」


 アイリの気持ちを読みレンが声をかける。アイリにとって、とても嬉しいものだった。


「はい!」


 元気よく返事をして前を進み始める。





 そこからレンは、アイリに対して動き方の指導を行った。


 盾の使い方などはそこまで知っているわけではないのでナビゲーターさんに頼ることにした。彼女に言われたことをアイリに伝えていく。


「レンさん、盾についても詳しいんですね!強いし、色々なことを知ってるし、尊敬します」


 とレンのことをベタ褒めだ。


「そんなことはないぞ!俺も知らないことだらけだから」


 と答えておく。そして心の中でナビゲーターさんに感謝を捧げる。


『ふふ、どういたしまして、マスター!』


 ナビゲーターさんのニコニコした表情が頭に浮かぶ。いつの間にかナビゲーターさんは感情が豊かになってきたなとレンは思うのだった。





「さて、ボス部屋の前まで着いたな!何が出てくるか……」


「ドキドキします……」


 アイリは、盾をしっかりと握りながら呟く。少し緊張がうかがえた。




 レンが扉を開けて中に入ると部屋の中も木が生い茂っていた。部屋という規模ではない広さだが、迷宮だから納得だ。


「索敵……これは、複数いるな」


 とレンが呟いた時にレンに向かって魔法が飛んでくる。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


 だがすぐさまアイリがレンの前に出て、盾で魔法を受け止める。


「うん、お見事!」


 と言いながらレンは拍手を送る。アイリには、盾役を務めるように言ってあるのでレンを守るように行動したのだ。レン1人でも余裕で対応出来るがここは練習をさせておく。



「トレントに、ゴブリンマジシャン……普通のゴブリンもいくらか」


 とレンは呟いていく。


「わかるんですか?だとしたら厄介な数です」


 アイリは、いつでも動けるように盾を構えておく。


「そうだな、今回は連携を取って戦うとしようか」


 レンは、アイテムボックスから弓矢を出しながらアイリに声をかける。


「はい!レンさんの足を引っ張らないように全力で頑張ります!」


 敬礼でもしそうな勢いでアイリは返事をする。



「ナビゲーターさん、相手に俺だけを攻撃させる方法とかない?」


『そうですね、挑発というスキルはどうでしょうか?』


 と提案がある。


「よし、ならインストール!」


 レンは、すぐさまユニークスキルを発動する。


『インストール完了しました』


 とナビゲーターさんの合図と同時に挑発を使用する。



 すると魔物は、レンに向かって魔法などの攻撃を始めた。


「なっ……レンさんの方にばかり攻撃が」


 アイリは、すぐさま盾でレンの前に立ち攻撃を弾いていく。


 実際、レン1人でも問題はないがアイリにとって良い訓練になっていることだろう。


「良い感じだな」


 とレンは呟きつつ、弓矢で近づいて来たゴブリンを射る。




 少し時間が経ち、これだけやっておけば十分だろうと、奥にいるトレントをMPを多く注いだ矢で吹き飛ばす。


「ええ……何ですか、その弓矢の威力!」


「ああ、これは特別な武器なんだよ。みんなには秘密で」


 と驚くアイリにレンは、人差し指を口元に当ててシーっと言う。


「わわ、わかりました!さすがレンさんです」


 と理解してくれたようだ。素直な良い子で助かる。





 魔力弓(聖級)

 付与 自動修復 装備錬磨 魔力矢作成


 と鑑定が出来るようになり内容が分かったのだ。


『この武器にある装備錬磨は、使うほどに武器自体が強化されるものです。いずれ神級……アーティファクトに至ることでしょう』


 とナビゲーターさんが説明してくれた時には驚いたものだ。



 とんでもない物を運営はくれたな、と考えながらもレンとアイリは、26階層に上がる。


 そして転移結晶で帰るのだった。

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