ダンジョン


 先日は散々だった。もう二度と目立つ事はしない、人前に出たくない。


 ギルドに来てナタリーさんからダンジョンの話を聞いた。ダンジョンに入るにはパーティー申請をしないと入れないらしい。

 ソロボッチの俺は入れない、と肩を落としていたら猫獣人のローズが通りかかった。


「どうした、ネロ。何か落ち込んでいる様だが」

「パーティーが組めなくてダンジョンに入れない」


「なんだ、そんな事か。よかったらウチと組まないか? またネロと組んでみたいと思っていたのだ、あ、でもネロは学生じゃなかったか?」


「あ~、それは大丈夫なんですよ~。ネロくんはダンジョン実習の単位が取れたから入れるんでーす」


 ナタリーさんが説明してくれた、相変わらず語尾が長い。


「じゃあネロとパーティー申請していいか?」

「ローズ、ありがとう。学生なので毎日潜れないけどよろしくね」

「こちらこそよろしく」

 ソロボッチ卒業だ、おめでとう、俺。


「さて改めて自己紹介しようか。剣士のローズだ、今はBランクの冒険者、経験は長い」

「ネロ•ヴァッサー 水魔術師で学生だ。学院の単位があるのでCランク相当の冒険者でもある。狩りの経験はそこそこある。ダンジョンは初めてだ、よろしく頼む」


「罠などの対応の経験はあるか?」

「あまりないな、ローズは?」


「ウチもあまり上手くはない」

「斥候タイプの冒険者を増やすか?」


「そうだな、そうした方が万全かもしれん」


 二人で話し合い斥候タイプの冒険者を入れることにした。見つかったのがローズの知り合い、猫獣人のサラ 斥候としてフリーランスとして活動しているらしい。今手が空いているのでとりあえず今日は手伝ってくれるらしい。


「斥候のサラだ、とりあえず今日よろしく頼む」

「サラの腕は確かだ、ネロにとっても役に立つだろう」

「はじめまして、ネロ•ヴァッサーです」


「敬語はいらん」

「わかった、よろしく頼む」


 さて本番のダンジョンだ、色々なモンスターが出てくるので楽しみだ。


「低層階ではネロには物足りないだろう、罠も無いしな。とりあえず5階まで降りようか」


 ローズの提案、冒険者先輩なので従った方がいいだろうな。低層階は学生や初心者のためにモンスターなどを残しておくのがマナーみたいだ。

 今更ゴブリンやら狩ってもいらないしな。


「了解、そうしよう」


 5階に着いた、まずはミストサーチ、このダンジョンは広い、俺のミストサーチでは端まで届かないようだ。


「おい、お前。なんかしたろ?」

「俺の魔法の探知魔法だが」


「探知もアタシの仕事だ、余計な事するな」

「わかった」

 言う通りにしよう、先輩達の意見に従う。


 サラは視覚、聴覚、嗅覚を使って探知している、なるほど。獣人特有の感覚だからこそ出来る技術だろうな、俺にはその方法は難しい。


「来た、アンデッドだ、臭いが薄いからスケルトンソルジャーだろう」

「よし、サラは下がってろ。ウチが引きつけるからネロは魔法で頼む」

「了解」


兵士が白骨遺体になったようなスケルトンソルジャーがあらわれた。

 ローズが切り結ぶ、その間に俺がポーションを取り出してスケルトンに投げつける、当たった半身が浄化していく、ローズがトドメをさす。


「おい、お前! 魔法じゃなくて何でポーションを投げるんだ!?」

 サラに怒られた。


「え? 水魔法よりポーションの方が効くと思って」

「貴重なポーションを投げつけるなって言ってんだ!」

 あ、そっちか、説明してなかったな。


「ごめん、俺、ポーション作れるんだ」

 サラの目の前でポーションを作る、しかしこの瓶はどこから来るのだろう? 水神様のサービスなんだろうか?


 サラが固まる、ついでにローズも。

「なんだ、その能力は‥‥‥?」

「そんなに簡単に作れるニャ?」

 あ、ローズの口調がニャになった。


「ローズには一度あげただろ?」

「そんなにすぐ作れるとは思わなかったニャ」

「おい、お前。何でポーションなんて作れるんだ?」

サラに首を掴まれて揺さぶられる。苦しい。


「サラ、くるし‥‥‥」

「あ、スマン」

「ゲホゲホッ、ふぅ。俺の能力だよ。ポーションを作ったり動かしたり‥‥‥」

「「動かす!?」ニャ!?」

 

 いちいち驚かれるのも面倒なので一通り説明した。二人とも理解が追いつかない様だ。


「規格外にも程があるだろ」

「前にも言ったけど強すぎるニャ」


 ローズはずっと口調が戻らない、動揺し続けているようだ。可愛いから良いけどな。

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