第111話 肉祭り
「ええと……お願いしますから! 私は女神様じゃないので勘弁してください」
村にある一番広い広場にて、村人達や騎士団の人達がみんな私に平伏している。
なぜこの様な事態になったのかと簡単に説明すると、私がビックボアをみんなの前に出すタイミングを間違えてしまったからだ。
シャルロッテのおかげで村に強力な結界が張られ、これからは魔獣に脅かされる事がなくなると村人達は皆安堵した。
そんな中ある一人の村人が「消えたビックボアの肉があれば肉祭りができたのにな」と呟いたのだ。
その言葉を皮切りになんでビックボアが消えたのか!
ビックボアを食べたかったと、嘆き惜しむ声が村中のあちこちで聞こえる。
その声は騎士団も同じでグレイさんを筆頭に消えた肉を惜しむ声が聞こえてくる。
皆が、ビックボアの肉がどれほど旨いのかを語るのだ。「新鮮なビックボアを焼いて食べるのは最高だ」「それを一口食べてエールをクイッと飲んだら最高さ」と。
そんな話を聞いたらビックボアの肉の味が気になる。
「あのう……それ程に美味しいのですか?」
「ああっ……あんな新鮮な良い肉……有名な冒険者チームくらいしか食べた事ねーだろうな」
ゴクリッ
それを聞き私はつい、「ビックボアならここに沢山ありますよ」と村の広場に、ビックボアの肉塊をアイテムボックスからドドーンっと出してしまった。
そんな事をしたら、どんな事になるか想像出来るだろうに。
ビックボアの肉食べたさに、私の脳は考えを停止しそんな事これっぽっちも考えなかった。
勿論これが間違っていた。
いきなり広場に山積みされたビックボア、これでもまだ五分の一の量だ。
それを見た村人や騎士団の人達が、私を女神様と言い出したのだ。
村人たちは何も無いところからビックボアを出したと勘違いしたらしい。
いやいやそれは違いますよ? アイテムボックスだと何度言っても誰もまともに話を聞いてくれない。
旨い肉食べたさに馬鹿な行動をしてしまい……村人達にチート能力を知らしめてしまった。
「ソフィア様はすごいです! いきなりこんな大量のビックボアを出すなんて。カッコ良すぎます」
そう言って頬を染めシャルロッテは誉めてくれるが、正直素直に喜べない。
ふとアイザック様を見ると苦笑いしていた。
騎士団団長のグレイさんまでうっとりと私を見つめている。
ええとこれはどう収集したら……あっ! こんな時は話題を変えるに限る。
「そうだ! 肉祭り!」
村人達は肉祭りがしたいって言ってたもんね!
お祭り効果で私の女神説が薄れるかも? と安易に考え肉祭りをしようと提案する。
話しを聞いた村長さんは、頬を染めスキップしながら足速に何処かへ去っていく。
ふふ……余程嬉しいんだろうな。
すぐさま村の広場に大きな焼き台が続々と並べられ、肉祭りの準備が着々と進む。
焼き台の上には、綺麗に捌かれたビックボアの肉が並べられ、次々に焼かれていく。
数分もすると、なんとも香ばしい食欲をそそる匂いが広場に充満する。
みんなは順番に焼き台に並び、焼けた肉をもらっていく。
私も列に並び肉をもらった。
もぐ …….
「うんまーー! ジュウシーで甘い肉汁が口の中いっぱいに広がる」
新鮮なビックボアは初めて食べたけど、こんなにも美味しいのか! そりゃみんなが食べたいと言うはず。
初めて食べるビックボアの美味しさに舌鼓を打つ。
村人達を見ると、みんな頬が蕩けそうになりながら肉を美味しそうに噛み締めていた。
みんなの幸せそうな姿を見て、嬉しくて自然と頬がほころんでしまう。
まだこの時私は知らなかった、市場ではビックボアは高級肉で、一部の貴族達にしか出回らない貴重な肉という事を。
この美味しい肉祭りで、ソフィアの女神騒動は収束したかと思われたが、実際は収束などしておらず肉祭りが終わった後。
もっと大変な女神騒動になるのだが……ソフィアは幸せそうに肉を頬張りそんな事思ってもいない。
この後大変ですよ!
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